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「……空が青い」
目が覚めると、そこには青空が広がっていた。
上半身を起こし、周囲を見渡す。今居る場所は横転したらしい馬車の中。ドアは頭上に有り、開いている。周囲に転がる複数の死体。死屍累々だ。私の身体にも擦り傷があり、幾つか血の痕がある。身体もあちこちが痛い。
何はともあれ、私はかつて地球と呼ばれる世界で生きていて、事故で死亡し、この世界に生まれ変わり、前世の記憶を取り戻した転生者と言う事になるのだろう。
今の私の名前はシャノン。先述したとおり家名はない孤児である。
何とか横転状態の馬車から這い出てみたものの、足を捻っているらしくさっきからじくじくと痛むし、身体はあちこち打撲状態でどうにもこうにも落ち着いてられない状態。
さて、これからどうしよう?
***
あれから二日ほど歩き続けた。水も食料も底を尽きかけている。
「お腹空いた……」
ぐうううううううう。お腹がなる。
問題は水だ。喉が渇いていては折角の食料も飲み込むのが一苦労だった。
それでもゾンビみたいにゆっくりと歩き続けていたけれど、とうとうその場に倒れこんだ。
「水……」
水。水が欲しい。水。
「……水」
水! 喉が! 水!
このままだとやがて脱水を起こして死ぬ。そう思った時だった。
ばしゃっ!
「……え?」
目の前に水が降ってきた。見上げてみても何も無いし、誰も居ない。
「“水”!」
もう一度“言葉にすると”、掌に少しの水が溜まり、慌てて口に運ぶ。良く分からないが、水を求めると水が降ってくる。
何故そんな事が起きるのか分らないまま、慌てて腰の皮袋を手繰り寄せ、そこに水を溜めては飲んだ。
「……生き返った」
時間をかけて何度も水を飲み、何とか喉の渇きは癒えた。でも。
「お腹空いた…“おにぎり”食べたい」
水って言ったら水が降ってきたんだから、これも出て来ないかなー、なんて現実逃避染みた馬鹿馬鹿しい事を考えながらつぶやいたら。
「……は?」
本当に出てきた。おにぎりが。
え? 幻覚? どういうこと?
「……“おにぎり”」
もう一度念じながら呟くと、空いていたもう一つの手の中にもおにぎりが現れた。
……両手にそれぞれおにぎりがある。手をわきわきと動かしてみるが、間違いなくそこにある。
「食べ物……」
もう、なんで今それがそこにあるのかとか、どうでもいい。
一心不乱に食べる。うん、おにぎりだ。塩むすび。海苔も何も無い、具も入ってない。でも、美味しい。訳が分からないまま、涙が出てきた。
いきなり現れたおにぎりを食べ終えて、仰向けになったままでぼんやりと空を見上げる。
お腹が膨れて多少冷静になった。満腹感はしっかりとある……幻覚じゃない。
じゃあなぜおにぎりは現れた? 仮に近くに米があったとして、誰が私におにぎりを与えた? 周囲を見回しても誰も居ないし、居る気配も無い。おにぎりは魔法のように現れたのだ。
……魔法?
そうだ、この世界には魔法があった。となれば魔法でおにぎりは現れた。そう考えるのが妥当だ……いや、妥当か? おにぎりを出す魔法? 聞いた事も無い。でも実際、おにぎりは現れた。
なんでだろう。