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「相変わらずのくだらない話だったね〜」


『わざわざ集会開くほどじゃなかったね』


及川校長の講演を聞き終えて、みんなが教室へと戻っていく。


「お、○○じゃん」


『ヤマト先輩』


「キャー!ヤマト先輩こんにちは!!!」


「あ…うん、こんにちは泉ちゃん」


元気と愛嬌いっぱいに挨拶をした泉ちゃんに、ヤマト先輩は苦笑い。

人が多くて詰まる廊下を一緒にゆっくりと進んでいく。


『お一人ですか?』


「あー、太一どっか行っててさ」


『もしかしてサボりですか?』


「俺もサボりたかったぜ」


「あたしもですよ〜」


「はは、だよな〜。じゃあ、俺あっちだから。じゃあな」


『はい』


「…あ、○○はさ。もしも自分のパートナーデジモンがデジタマに還ったら、どうする?」


『え…?』


「何々、何の話ですかー?」


『あ、…いや』


「ふっ、じゃあな〜」


そう言って、さっさと高等部の校舎へと消えていった。


「あ〜今日もヤマト先輩イケメンだった〜」


『パートナーが…デジタマに?』


どうしてそんな話を聞いてきたのか…あまりそういうことは考えたくない。

でも、もしも、そうなったら。私はデジタマが孵るまで、独りぼっちになるんだろうな。

そう思った。


『きっとすぐ会えるから、たくさんナデナデしとこ!』


「うん…そうだよね、ナデナデ…ナデナデ」


『ナデナデ、ナデナデ』


『ぷっ』


「? ○○どうしたの?いきなり笑って」


『あ、いや…楽しかったなーって』


「何が?」


『えーっと…何だろう』


「やだ〜覚えていない思い出し笑いとか怖いわ〜、○○おばさん」


『もう、泉ちゃん!』







「はー笑った笑った」


『いじりだすと止まらないんだから…』


「まだ時間あるよね、おトイレ行ってきまーす」


『はいはい』


自分の席について、椅子にかけておいた上着を着る。

いつものクセでポケットに両手を入れると、何か紙のようなものに触れた。


『櫛と鏡は、こっちのポケットにある。…何だ?』


それを取り出してみると、折りたたまれた小さな紙。


『入れた覚えないのに…』


不思議に思いつつ、その紙を開いてみると、「好き」と一言。


『………これ、って…もしか、しなくても』


「ひいっ!!!」


『うわ!ビックリした!!!泉ちゃんもう戻ってきたの?!!』


「怪しい直観を感じたの…」


泉ちゃんはわなわな震えながら、その小さな紙を睨みつける。


「○○にこんな粗末なラブレター渡すとか、どこの馬の骨よ、ふつう論文レベル書いて渡すってのが筋でしょ、こんな一言だけでお前の愛が伝わるのか?!!」


『おおお落ち着いてよ…』


「でも、これさ、名前書いてないわよね。本当にどこの誰かしら」


『うーん…分からないけど、誰かと間違えて入れたのかもしれないし…』


「…あ、待って。それ、もしかすると―」


『?』


「おいー帰りのHR始めるぞー席つけー」


「は、はい!また放課後話そう!」


『うん…』


∞2016/01/22
ALICE+