12
「相変わらずのくだらない話だったね〜」
『わざわざ集会開くほどじゃなかったね』
及川校長の講演を聞き終えて、みんなが教室へと戻っていく。
「お、○○じゃん」
『ヤマト先輩』
「キャー!ヤマト先輩こんにちは!!!」
「あ…うん、こんにちは泉ちゃん」
元気と愛嬌いっぱいに挨拶をした泉ちゃんに、ヤマト先輩は苦笑い。
人が多くて詰まる廊下を一緒にゆっくりと進んでいく。
『お一人ですか?』
「あー、太一どっか行っててさ」
『もしかしてサボりですか?』
「俺もサボりたかったぜ」
「あたしもですよ〜」
「はは、だよな〜。じゃあ、俺あっちだから。じゃあな」
『はい』
「…あ、○○はさ。もしも自分のパートナーデジモンがデジタマに還ったら、どうする?」
『え…?』
「何々、何の話ですかー?」
『あ、…いや』
「ふっ、じゃあな〜」
そう言って、さっさと高等部の校舎へと消えていった。
「あ〜今日もヤマト先輩イケメンだった〜」
『パートナーが…デジタマに?』
どうしてそんな話を聞いてきたのか…あまりそういうことは考えたくない。
でも、もしも、そうなったら。私はデジタマが孵るまで、独りぼっちになるんだろうな。
そう思った。
『きっとすぐ会えるから、たくさんナデナデしとこ!』
「うん…そうだよね、ナデナデ…ナデナデ」
『ナデナデ、ナデナデ』
『ぷっ』
「? ○○どうしたの?いきなり笑って」
『あ、いや…楽しかったなーって』
「何が?」
『えーっと…何だろう』
「やだ〜覚えていない思い出し笑いとか怖いわ〜、○○おばさん」
『もう、泉ちゃん!』
「はー笑った笑った」
『いじりだすと止まらないんだから…』
「まだ時間あるよね、おトイレ行ってきまーす」
『はいはい』
自分の席について、椅子にかけておいた上着を着る。
いつものクセでポケットに両手を入れると、何か紙のようなものに触れた。
『櫛と鏡は、こっちのポケットにある。…何だ?』
それを取り出してみると、折りたたまれた小さな紙。
『入れた覚えないのに…』
不思議に思いつつ、その紙を開いてみると、「好き」と一言。
『………これ、って…もしか、しなくても』
「ひいっ!!!」
『うわ!ビックリした!!!泉ちゃんもう戻ってきたの?!!』
「怪しい直観を感じたの…」
泉ちゃんはわなわな震えながら、その小さな紙を睨みつける。
「○○にこんな粗末なラブレター渡すとか、どこの馬の骨よ、ふつう論文レベル書いて渡すってのが筋でしょ、こんな一言だけでお前の愛が伝わるのか?!!」
『おおお落ち着いてよ…』
「でも、これさ、名前書いてないわよね。本当にどこの誰かしら」
『うーん…分からないけど、誰かと間違えて入れたのかもしれないし…』
「…あ、待って。それ、もしかすると―」
『?』
「おいー帰りのHR始めるぞー席つけー」
「は、はい!また放課後話そう!」
『うん…』
∞2016/01/22
ALICE+