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○○ちゃんはもう気づいただろうか。「好き」と書いた紙がポケットに入っていることに。


「そろそろ期末考査だから、ちゃんと勉強しろよ」


ようやくホームルームが終わった。帰り支度を始めるまわりには目もくれず、じーっと○○ちゃんを見つめる。

あ、ポケットに手を入れて、紙を見つめた。もう気づいていたんだ。でも、あの紙は僕が入れたものとは少し違うような…。


「○○、さっきのことなんだけど」


『あ、うん』


「―○○」


『太一先輩?』


○○ちゃんに声をかけた織本さんに続いて、太一さんがやってきた。


「あ、その紙…気づいたんだ」


『えっ?』


「実はそれ、」


ーーー。


「俺から、なんだ」


『えっ…』


「えぇえええ?!!こ、これ!太一先輩だったんですか!!!」


耳を、疑った。


『ど、して…?』


「いや、面と向かって告白するの恥ずかしくて…さ。でもただのゴミとして捨てられたらなーと思って来たんだ」


「わぁー太一先輩だったんだ…なら、この好きとだけ書かれた紙なの分っかるわ〜」


「はは、どういう意味だよ」


好きとだけ書かれた紙…?

僕が入れた紙には、希望の紋章の絵もあったのにー



「あ、太一さん!」

「おう、大輔、タケル」

「…こんにちは」

「どうしたんすか?体育館行かないんすか?」

「あー…ちょっと用事」

「ふーん、サボっちゃダメっすよ!」

「はは、サボらねーよ。じゃあな」



もしかして―、そう思って勢いよく席を立ち上がったが、その瞬間、太一さんがこちらを見た。
それは「睨む」とも表現出来るものだった。


「っ、」


ただ、息を飲むしか出来なかった。


何を考えているんですか…太一さん。


∞2016/02/04
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