14


『あの…本当に、私のこと…好き、なんですか?』


「ああ、好きだ」


「っ、キャ〜!!!」


「返事はいつでもいい…部活あるから、じゃあな」


『………はい』


唇を噛みしめて、教室を出ていく太一さんの背中を追った。


「た、太一さん!!!」


「…タケル」


「あの…○○ちゃんに渡した紙って、いうのは―」


「さっきの話聞いていたのか」


あの時こちらをハッキリと見たくせに、今気づいたような物言いだ。


「っ、あの紙は…僕が入れたんです」


「あれは俺が入れた」


「あの紙の字は、○○ちゃんが書いたものです!隣には僕の…希望の紋章の絵が―」


「そんなの、○○が持っていた紙には書いてなかっただろ」


「っ!それは太一さんが―!」


「―遊びだよ」


「?!!」


「○○が、タケルを思い出すまでの…遊びだよ」


「何を言って―!」


「いいじゃねーか。いつかはタケルのこと思い出すんだしさ」


この状況で…何の手がかりもなく、ただ日々が過ぎていくのに―。


「○○ちゃんに…近づかないでください」


「…それは、○○次第…だな」


へらっと笑って、太一さんは去っていった。

太一さんの○○ちゃんへの感情は、「そのような好き」ではなかったはずだ。


―いや、薄々は分かっていた。

○○ちゃんは太一さんが好きだったけれど、太一さんは空さんが好きだった。それを知って、○○ちゃんはその感情を終わらせた。そして僕を選んでくれた。それは代わりじゃない。絶対に代わりじゃないのに…−


あの日の冒険の頃とは違う。
○○ちゃんの記憶から僕が抜け落ちてからの、太一さんの○○ちゃんを見る瞳は―



∞2016/02/11
ALICE+