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「○○」


『っ!!』


太一さんに告白されてから数日後。
泉ちゃんが休みで、一人で授業のある教室へ向かおうとしていたところ、教室を出た瞬間目の前に太一さんが現れた。


『………』


「…どうした?」


『あ、いえ…おはよう、ございます』


「うん、おはよう」


『………』


沈黙が、痛い。

あの答えを求められているのだろうか…ずっと太一さんは私の目の前に立って、全く動く気配がない。

ずっと俯いて太一先輩の上履きを見つめていたら、その足先がこちらに動いた。


「○○」


『………』


「何で後ずさるの」


『こっちに、来るからです』


「まあ、そうだよな」


一定の距離を保ちながら、教室から遠ざかっていく。


「なあ、○○」


『……あ、あの、ほんと』


「このまま壁ドンしていい?」


『っ、…!』


壁ギリギリまで追い詰められたところで、しゃがんで太一さんの横を走り抜けた。


「え、…逃げられた」


『わ、私だって、選ばれし子どもたちの一人ですから!逃げ足はあの頃鍛えられました…!!!』


「ふっ…そうだな」


『はなし、あるなら…また今度、お願いします』


そう言って頭を下げて教室へと走った。


心臓がバクバク言っている。全然、太一さんの顔が見られなかった。あの日の告白された場面が脳裏に浮かぶ。


『っ、うわ〜!もう やだ!!!』


この数日間、太一さんの顔があたまから離れなかった。こういう時に限って泉ちゃんが休みなのは最悪。どうすればいいー


『の、っう"!』


俯きながら走っていたら 誰かに突進してしまった…ぶつかったおでこに手をあて、相手の人を見ると、


「いって〜!って、○○ちゃん?!!」


『大輔くん?!!』


尻餅をついた大輔くんに手を貸す。


「うわ〜ビックリした、猪でも突進してきたのかと思ったぜ」


『し、失礼な!でも、ゴメン…なさい』


「全然問題ないぜ!おれ丈夫だし!」


ニヒッと笑う笑顔に心が落ち着いた。

大輔くんは太一さんの後輩だし、色々なことを、よく…知ってるはず。


『あの、さ…』


「ん?」


『今日一緒にご飯食べない?あの、泉ちゃんが休みで、一人だからー』


「おお!もちろんだぜ!久しぶりに○○ちゃんとごっはん〜」


『よかった…じゃあ、お昼休み大輔くんの教室いくね!』


「おう、待ってる!!!」


∞2016/05/01
ALICE+