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『あの、すみません…八神先輩いますか?』
「んー、あいつもう部活行ったんじゃねーかな」
『そう…ですか、ありがとうございます』
「どーいたしまして」
せっかく返事をしようと、高等部まで来たのに太一さんはいなかった。中等部から来るの恥ずかしいんだよな…チラチラみられるし。
『グラウンド…?』
部活に行ったのならグラウンドしかない。廊下をとぼとぼ歩いていると、向かいからタケルくんが歩いてきた。
『あれ、タケルくん?』
「○○ちゃん…」
『どうしたの、高等部に用事?』
「うん、ちょっとね…○○ちゃんは?」
『あー、いや!別に、その…あはははは〜』
タケルくんはパチパチと瞬きをして、何故か困ったように笑った。
『?』
「…○○ちゃん」
『は、い』
「○○ちゃん」
『???』
何度も名前を呼ばれて、不思議な気持ちになった。
「○○ちゃん…またね」
『うん…また、明日』
「うん、また…明日ね」
いつもとは違うタケルくんに違和感を覚えつつも、隣を通りすぎた。
『とりあえず教室戻って、鞄を持って、グラウンドに行こう』
中等部の校舎に戻り、教室まで歩いていく。
でも、返事はどうやって言おうか。私も好きです?とだけ言おうか、昔から太一さんのことが〜と今までの思いを全部言おうか。悩ましい。
『太一さんの好きなとこ、ありすぎ…』
思い返せば、あの日ー8月1日は長いようで短かった。あの、たった1日で…私は恋に落ちたんだっけ。小2のくせにマセてるなー、と自虐ぎみに笑ってしまう。
『惚れないわけには、いかないよね』
仲間思いで、熱い勇気をもった人。時には間違った方向に進んでしまったけど、ちゃんと間違いに気づいて、真っ直ぐに進んだ。その背中から目が離せなかった。小さな、私たちの憧れー。
『私たちの、憧れ…?』
私たち、って…?
『私と、ヒカリちゃん…のこと、だよね』
ぼんやり。ぼんやりと。何かが頭の中に浮かんでいる。
『何だろう…』
たぶん、ちゃんと考えればスッキリするはず。
だけど…今は太一さんに会いたい。
「○○」
教室に入ると、窓際に太一さんが立っていた。オレンジ色の夕日に照らされた、大好きな人に駆け寄る。
『あの、お返事を』
「うん」
『ふぅー…えっと、太一さん』
「おう」
『私、も…好きです。太一さんのこと、好きです』
「…ありがとう、○○」
ふわっと、太一さんの香りに包まれ、嬉しくて目を閉じた。
∞2016/06/05
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