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「泉ちゃん、ちょっと時間ある?」


「あたし?○○じゃなくて?」


『ん?』


「い、泉ちゃんだけで!!!」


不思議そうに俺を見つめる○○ちゃんを置いて、泉ちゃんを廊下まで呼び出した。


「あたしに何か用?」


「えっと、さ…○○ちゃんと…太一さんのこと、知ってる?」


「さっき聞いたわよ太一さんとのこと!!!」


「しーっ!!!」


太一さんという名前が出た瞬間、泉ちゃんの口を手で押さえた。すぐに手を払われたけど。


「ったく、何よ…そんな周りキョロキョロ見て」


「いや、その…さ、○○ちゃんと太一さんのこと知ってるの他にいたりする?」


「たぶん、あんたとあたしだけだと思うわよ。あたしが風邪で休んでいたとき、○○の相談にのっていた大輔くんと、さっき聞いたあたし。他に言うのならヒカリちゃんとか、高等部のミミ先輩とかじゃない?」


確かにそう、か。でもヒカリちゃんやミミ先輩がこのことを知っていたら、大騒ぎになっているはずだ。たぶん今の時点では知らない。良かった…。


「出来ればさ、2人のこと他の人には言わないでほしいんだ…」


「はぁ?どうして」


「えーっと…、あ!太一さんってさ、結構モテるんだ!だから、○○ちゃんとお付き合いしてるなんて知られたら、高等部の先輩方に目つけられるかもだろ?」


「そんな先輩あたしが抹殺するけど」


「そーじゃなくて!」


「つまり、○○のためを思って、太一さんとのことは、あたしたちだけが知っていればいいってこと?」


「そ、そうそう!!!」


「まあ…そうね。○○を好きな奴もいることだし」


「えっ?」


「あー、いやいや、こっちの話」


「じゃあ、よろしく…」


「おっけー」


たぶん、泉ちゃんは○○ちゃんについての約束なら守ってくれる。とりあえず、任務は完了。教室の前を去る際にチラリと教室の中をのぞき込むと、タケルの席に駆け寄る女の子の姿が見えた。
でも、それは○○ちゃんじゃない、誰か、だった。


∞2016/06/26
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