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「ねぇ、元気出して」

「………」

「デジタルワールドで花を摘んできたよ、これ好きだったよね」

「………」

「どこに行くの?」

「さようなら」

「っ、待って!そっちは―!!!」




「◇◇!!!」


山木先生の大声に素早く頭を上げた。


「◇◇、体調悪いなら保健室行ってこい」


『あ、いえ…大丈夫です』


授業中、居眠りをしてしまったようだ。
そして、またあの夢。いつもはぼんやりとした景色に声が響くだけなのに、今回ははっきり見えたし、覚えている。

ウィザーモンと綺麗な女性がアパートの屋上のような場所で話していた。とても重要な場面だと感じたのに、山木先生に起こされたせいで消えてしまった。

モヤモヤした感情のまま授業を受けたせいで、全く頭に入らなかった。


「○○が居眠りなんて珍しいわね」


『う、うん…寝不足かな』


「遅くまで太一先輩と電話してたとか〜?」


『め、メールです!』


「あら失礼〜で、何話していたの?」


『今日一緒に帰ろう、って』


「じゃあ今日は一人で帰るしかないか」


『あ、ゴメンね』


「何で○○が謝るの?あたしは親友が幸せなら良いの、それに、今日は用事あったし」


『あ、もしかして他校の…神原くん、だっけ?』


確か、神原拓也くん。
泉ちゃんの小学校の頃からの友達で、よく話を聞く男の子。学校が同じでもないのに、すごく仲が良さそうだから不思議に思っていた。
もしかすると、私たちのような「冒険」でもしたのかな、と思う時がある。


「そ、久しぶりに会おうって連絡来たのよ」


『ふ〜ん、そ〜なんだ〜』


「な、何よ…」


『泉ちゃん、鏡見る?すっごく嬉しそうな顔してる』


「うううう嬉しくなんかないわよ!!!」


分かりやすく可愛い。素直になれば、泉ちゃんも神原くんとお付き合いするのでは?と思う。私も早く会いたいな、太一さんに。


「○○が太一先輩とラブラブしているときに、あたしは拓也にパフェでもおごってもらおーっと」


『も、もう、泉ちゃんってば…!』


∞2016/07/01
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