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「今日も太一先輩と帰るの?」
『うん、今日は教室まで迎えに来てくれるから待ってるの』
「そ、じゃああたしはお先に失礼するわね」
『また明日ね』
「うん、また明日。あ、もしチューしたら報告してね〜」
『ちゅ、ちゅう?!!』
「あはは、○○顔真っ赤〜!期待してるわ、じゃあバイバイ〜」
ひらひらと手を振って教室を出ていく泉ちゃん。絶対に楽しんでる…。
でも、キス…か。ふにふにと自分の唇を触ってみると、何だか恥ずかしくなってきた。
「○○」
『たたたたた、太一さん?!!』
「どうしたんだ?」
『いいいえ、何でもないです!』
何の前触れもなく太一さんが教室の前にいた。あからさまに動揺しつつも、カバンを持ってそこへ駆け寄る。
「カバン持つよ」
『え、大丈夫ですよ、これくらい』
「いーじゃん」
『だって、太一さんの方が荷物多いし…』
「平気、平気」
でも申し訳ないから自分で持つと言っても、太一さんは一向に引き下がらない。
『もう、大丈夫ですってば』
「いや、何か、彼女のカバンを持ちたい」
『な、何ですかその願望は…』
太一さんが私のカバンを掴もうとした瞬間、一歩下がる。
「………」
『………』
にらみ合い、というか。ニヤニヤもしている。
お互い譲らずに私が一歩下がるごとに、太一さんも一歩前に進んで、じりじりと廊下の端っこまで追いやられる。
「さー、○○、そろそろ観念してそのカバンを俺に持たせろ」
『太一さん、それ完全に悪役の台詞ですよ』
「今回は、逃げ場無いぞ」
そういえば、告白の答えを迫られた時にも、こうやって距離を詰められた。でも、その時は上手く太一さんの横を走って逃げられたけども、今回の太一さんは両手両足を大きく広げて、通せんぼ、している。
『こ、このぉ…』
「さあ、おとなしく…そのカバンを渡すんだ」
また一歩、後ろへと下がると、踵がぶつかった。廊下の突き当りにある教室のドアだった。後ろを見れば、ドアの窓にはカーテンがかかっており、反射するガラスにはにじり寄ってくる太一さんの姿。何の教室だっけ、と考える暇もなく、太一さんにカバンを捕まれた。
「俺の勝ち」
『…じゃあ、よろしく、お願いします』
「おう!」
仕方なく、こうも持ちたいと言われれば、お願いするしかない。カバンを渡すと太一さんは笑顔になって、自分の荷物と合わせて、どう持とうかと色々な持ち方を試していた。
そんな太一さんを見つめていると、廊下のずっと先に、人影が見えた。
『…タケ―』
「○○のカバンって意外と重いんだな」
その人がタケルくんだと気づいて、名前を呟こうとした瞬間、太一さんは顔を上げた。
『あ、はい。そろそろ中間試験なんで、色々と持って帰ろうと―』
私が太一さんの顔を見て、そう答えている時、太一さんの視線が一瞬だけ逸れた。不思議に思いながらも、苦手教科を頑張らなくては―と続けて答えた。
「―そっか。なら、上手くいく…おまじない」
そう言って、太一さんは持っていたカバンを全て床に置いて、私の腕をぐいっと引き寄せた。
勢いあまって、一歩前に踏み込んだ瞬間、唇が触れた。
∞2016/07/05
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