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休日のパソコン室。

リアルワールドにホークモンを呼び寄せて、あの謎のエリアの解析に勤しむ。
未だにあのエリアだけ天気が荒れていて、誰も近づこうとしない。

どこか安全なデータの綻びを探して、中に入り込めないかと奮闘する日々。


「ホークモン…ウーロン茶」


「京さん、パソコンを扱いながら飲み物を飲むのは、危ないと聞いているんですが…」


「そんなこと言ってられない」


机の端に置かれたウーロン茶のペットボトルをしっかり掴んで、喉に流し込む。

あのエリアの解析とともに、○○ちゃんを一時的に連れ去ったファントモンを血眼になって探す。2つのモニターを行ったり来たり、いつ何時も目が離せない。


「あっつ〜、クーラーの温度下げて」


「…分かりました」


ピッという電子音が鳴り、より冷たい風がパソコン室に流れ込んだ。


「このエリアにもいない、このエリアにも…いない。あー…目が痛い…」


「目薬点してください」


「あ、ありがとう、ホークモン」


眼鏡を外して、ホークモンから受け取った目薬を点す。


「うわ〜沁みる〜!!!」


目の全体が爽やかさに包まれた。ほどなくして、パチパチと瞬きをして、眼鏡をかけようと、手を伸ばすとー。


「っ!」


視界の端に、黒い影が横切った。


「ほ、ホークモン、モニターのカメラアップして!!!」


「は、はい!」


急いで眼鏡をかけ直し、モニターを覗きこんだ。


「………あ、そこ!そこそこ!!!」


「これは、ファントモン!」


「び、ビンゴぉおおおおお!!!」







「み、京くん!!!ファントモン見つかったって本当ですか?!!」


「はい!先にホークモンに呼び止めに行ってもらってます!!!」


「分かりました、テントモンにも手伝ってもらいましょう…」


ようやく、ようやく…手がかりが見つかった。あせる気持ちを抑えてパソコンを起動し、テントモンに連絡を取った。


「わたしたちも行きましょう!!!」


「はい」


パソコン画面にデジヴァイスをかざそうとした瞬間、部屋のドアが開いた。


「あ、の…」


「大輔!ねえ、ファントモン見つかったわよ!!!」


「うん、廊下で…聞こえてた」


「…どうしたんですか?」


「俺も…一緒に行きたい、です」


俯いていた表情は、まっすぐに僕たちを見つめた。


「もう出発しますから、ブイモンを呼ぶ時間はありませんよ」


「は、はい!!!」


気合いの入った笑顔を見せた大輔くんを連れて、京くんと3人、デジタルワールドへ赴いた。






デジタルワールドに着くと、先に着いていたホークモンとテントモンがファントモンを挟むようにして立っていた。


「あなた、あの謎のエリアを飛んでいたファントモンよね?!!」


「お、おーきなこえださないでくださいよぉ…」


「こちとら、お前のせいで大切な人たちの関係が、何ていうか…もう、ゴチャゴチャしてんだよお!!!」


「2人とも落ち着いてください。ファントモン、さっきの質問…君ですよね?」


「…そうです、けど。何の用ですかぁ?」


「わてらの友人がファントモンはんのマントに連れていかれたことがあって―」


「その方の記憶が少し、消えてしまったんです」


「心当たりあるでしょ!!!あるに決まってるでしょ!!!」


「こえがおおきい…」


京くんに言い寄られたファントモンは小さく蹲った。特に害の無さそうなデジモン。どうして、○○さんの記憶を奪ったんだ?


「お願いです、記憶を今すぐにでも戻してあげたいんです…」


ファントモンの前に膝をつき、目線を合わせて話しかける。すると、ゆっくりとこちらを見て、話しだした。


「その人の記憶は、このマントにあります…たぶん」


「ほ、本当か?!!」


「ひぃいいい!!!」


「大輔くん!ファントモンは少々臆病なようですから、抑えて」


「っ、はい…」


「…で、そのマントの中にある記憶はすぐに返してくださいますか?」


そう質問をすると、ファントモンは地面に視線を落とした。


「このマントには…二つの記憶があり、ます」


「二つ?一つは○○ちゃんのだから、もう一つのは?」


「うぃざーもん…」


「ウィザーモン???」

∞2016/07/23
ALICE+