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「このエリアに踏み込むと、体力・気力ともに消耗が激しくなります。なるべく早く○○さんを見つけて戻ってこないと」
「そのファントモンとかいうデジモンの居場所は分からないのか?」
「エリア自体のデータはようやく受信出来ましたが、ファントモンの居場所までは…」
「風も強かったですし、移動速度も速いと思います」
「○○ちゃん…心配だわ」
「とりあえず踏み込むしかないな」
太一さんに加え、空さんも合流した。6人で探せば○○ちゃんがすぐに見つかるかもしれない。早く…早く行かなきゃ。
「みなさん、なるべく固まって進みましょう。はぐれてしまっては元も子もありません」
「デジタルワールド…?」
「あたし頭がおかしくなっちゃったみたい」
「あなたなんか知らない」
「消えて消えて消えて消えて消えて」
「そばに来ないで…!」
「○○ちゃん!!!」
「○○!返事しろー!!!」
先ほどよりも風の強さが増している。声は風にかき消され、一歩を進むのにも力がいる。
「わわわ、メガネが飛ばされる〜」
「パソコンには何の反応もありません…」
「それでも探すしかないだろ!!!」
焦る太一さんを後目に、ひたすら○○ちゃんの名前を叫ぶ。この風の音のなかで、○○ちゃんの声を聞き逃さないように、耳をこらす。
「ずっとこのエリアにいるのなら、体力を消耗して返事をできる状態じゃないのかも…」
「○○ちゃん大丈夫かしら…やっぱり手分けして探したほうがいいんじゃないかしら?」
「でもはぐれてしまっては…もし何かあった時に動けないと危険です」
「泉先輩のいうとおりですよ…さっきテントモンを探しに来た時も一歩ずつ進むたびに体が重くなって」
唇をかみしめても、どうにもならない。視界がボヤけてきた。頭を振って、気を確かに持つ。○○ちゃんを見つけるんだ。○○ちゃんがいなければ、毎日が退屈になってしまう。僕の一日は○○ちゃんが側にいてくれることで、意味のある一日になるんだ―。
「そうだよ、一緒に冒険したじゃないか」
「君のパートナーのウィザーモンだよ」
「どうして…」
「ねぇ…僕のこと覚えてないの?」
「ずっと一緒って…言ったのは君なのに―」
「…あ、あそこに倒れているの、○○じゃないか?!!」
太一さんが指を指す方向に目をこらすと、地面に倒れこんでいる○○ちゃんがいた。
「○○ちゃん!!!」
重い足を必死に動かして、○○ちゃんの元へ駆け寄る。抱き起すと体が冷たく、意識がないようだった。
「○○ちゃん、もう大丈夫だから、もう大丈夫だからね…!」
「あたしの上着を着せて!」
「今すぐに戻りましょう、こっちです!」
○○ちゃんを抱き上げようとしたら、視界が揺らいだ。足を踏ん張っても、しっかりと立つことが出来ない。
「どけ、タケル!俺が○○をおぶっていく!!!」
「でも―!」
「タケル、早く行くぞ!」
どうして、こんな大事な時に僕は役に立てないのだろう。兄さんに手をひいてもらっても、足元がおぼつかない。視界が揺れる。
揺れる視界の中には、太一さんに背負われた○○ちゃんがぐったりとしていた。
「好きって言ったのに」
「ずっと一緒にいようって言ったのに」
「人間は嫌いだ」
「君は僕のことを忘れた」
「そうだ」
「僕も君のこと…忘れちゃえばいいんだ」
∞2015/09/05
ALICE+