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「サッカー部の八神太一。隣の席、ヨロシクな!」
同じクラスなんだから、名前くらい知ってるよ、笑ってしまいそうだった
『うん、ヨロシクね。◇◇○○です』
「◇◇さんとは、始めて話すよな?」
名字に《さん》付けって、ちょっと距離を感じてしまう。けど、八神君のは、そうは感じなかった―なんか自然
『始めて、だね』
中々話し掛けられなかったせいか、話し方がぎこちなく、不自然になってしまう
「だよな、隣の席だし、授業中とか解らなかったら話し掛けるかも―」
先に謝っとく、そう断りをいれて、また笑った
八神君って、今まで話し掛けてきたクラスメイトとはちょっと違うのかも
嬉しくなって、私も笑う
八神君は、今回クラスが一緒になる前から知っていた。たまに廊下とかですれ違って、いつもサッカーボールを持っていたから、ちょっと目立っていた
すれ違う時はいつも笑顔で、友達とじゃれあっていたり、凄く楽しそうだった
「…○○、最近さ、八神君ばっか見てない?」
『えっ、そう…かな?』
「それ!あたしも思ったのよ!○○ちゃん恋?もしかして八神君にLOVE?」
『え、ちょっと、留姫もミミちゃんも!あの、そんなんじゃなくて!何か、よく笑う人だなー、って…思って―』
「「ほほー!」」
私の微妙な反応に、恋話大好きなミミちゃんと泉ちゃんは身を乗り出す。
「2人ともうっさい。まあ○○が誰を好きになろうと良いじゃない」
「えー、でも八神君って、武之内さんと付き合ってるんじゃないの?」
「武之内さんは、バンドやってるーあれ、何だっけ、顔は分かるのに名前が!」
「石田ヤマト君でしょ」
「そうそれ!石田君と付き合ってるらしいよ、だから八神君はフリー!○○ちゃん、頑張って!」
『いや、だから好きとかじゃなくて―』
「じゃあ、《気になる人》で良いんじゃない?」
「あー、そっか!」
「よし、これから協力しなきゃな」
別に付き合いたいとか思ってなかったけど、協力してくれることが素直に嬉しかった
そんな会話をしていた、春休み前―何だか懐かしいな
今は協力してくれる友達とクラスは違うけれど、隣の席になれたおかげで、ちょっとは八神君との距離が縮まった…かな
君の事を追いかける
私がいた
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