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「あ、○○ちゃーん!」


「移動教室?」


『うん、次は視聴覚室』


「ねぇねぇ、八神君と一緒のクラスになってどう?」


『えーっと…この前ね、席替えがあって…隣の席―』


「なったの?!なっちゃったの?!キャー!凄い!」


『えへへ』


「ミミうるさい。で?話したりした?」


『うん、八神君から話し掛けてくれたの』


「キャー!好きだって?」


『さ、サッカーがね』


「あんた黙ってよ」


「いやー、あたしたちが知らない間に○○ちゃんは大人の階段を―」


「ほーら泉ー教室行くよ、○○移動教室なんだから」


『そうだった、またね!』


「また報告してねー!」


『うん!』





「○○、1人だったね」


「んー馴染めないのかな」


「…ま、○○には八神君いるから大丈夫でしょ」


「ミミもいるもん!」


「はいはい」







「◇◇さん」


『ん?』


授業中、小言で八神君が話し掛けてきた―ちょっとドキドキするな


「このxってどこいくの、あとyって―」


嫌いで苦手な教科でも、八神君が頼ってくれるのが嬉しくて、家で予習をした。授業が終わって、八神君のサッカーボールを触らせてもらった


『凄い使いこんでるね』


「あぁ、毎日蹴ってるからな!」


サッカーの話をする八神君は凄いキラキラした笑顔で、とっても楽しそうに話してくれる


「太一ー!」


「ん、空だ」


廊下から八神君の名前を呼んだのは、武之内さん―何だろう、さっきと同じくらいの笑顔で話している


友人の情報によると、八神君と武之内さんと石田君は小学校からずっと一緒で、とても仲が良いらしい


だからあんなに楽しそうに話すんだ―改めて思うと、私なんて今年始めてクラスが一緒になって、たまたま席が隣になっただけのクラスメイトにしかすぎない


とてつもない距離を感じた


「◇◇さん、このプリント先生のとこ持って行ってくれない?」


『…うん、良いよ』


「やりぃ!ありがとねぇ」


「もー自分で出しなよ」


「だって面倒なんだもん、◇◇さん優しいしさ」


クラスメイトとの距離も遠ければ、八神君との距離はもっと遠い


私は八神君との距離が遠いのを嫌だって思っている


『好き…なのかな』


廊下で楽しそうに話す八神君を横目に職員室へ向かう




  
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