8
瞬きを1つ
青い空と白い雲
瞬きを2つ
広いグラウンド
瞬きを3つ
恋しく思う
いつだって目線の先で
憧れる彼が笑っている
「◇◇!」
『っ、はい!』
「ボケっとすんな、授業聞いてんのか?」
『っ…すいません』
女の子達のくすくす笑う声が聞こえて、何だかちょっと泣きそうになる
「◇◇具合でも悪い?」
『だ、大丈夫だよ…うん』
心配そうに声をかけてくれる八神君の言葉を嬉しいと思いつつも、女の子たちの痛い視線に複雑な気持ちになる
何で好きなのに、あの子たちに邪魔をされなくちゃいけないんだろう
でも…あの子たちがいなくても、私の恋は叶わないんだよね
だって八神君、
好きな人がいるんだから―
「ん、◇◇だっけ?」
『あ、石田君…』
「何か元気無いな?」
『大丈夫だよ、ちょっと眠くて…ダルいだけだから』
「ふーん…、ほら」
手渡されたのは
冷たいココアだった
『くれるの?』
「糖分摂取は大事だぞっ」
『うん、…ありがと、ココア大好き』
「へへっ、今度は◇◇がおごれよなっ!」
『えっ?』
「じゃあな」
意味深に、爽やかに
笑って去っていった
『んー高いもの要求されたらどうしよう』
と思いながら、
冷たいココアに口を寄せた
「明日なー」
「おう、バイバイ」
ようやく放課後
下校ラッシュの靴箱を避けるためにトイレで時間潰し
髪ボサボサだな、直しとこ
学年の教室が並ぶ廊下はもう人がおらず、静けさだけ
鼻歌混じりに教室へ戻る
『ふんふーふんふん♪』
今日1日辛かったけど、ちゃんと時間はすぎていくから明日も頑張ろう
教室に入った瞬間、見慣れた人影に足が止まった
「鼻歌、◇◇だったんだー」
今にも心臓が出てきそうだ
「今日部活無いからさ、一緒に帰らねぇ?」
近づきたい
「そういえば、このココアって昼にヤマトが買ってたぜ、お揃いみたいだな」
でも、近付けない
「今度の期末テストで聞きたいことあるからさ、………◇◇?」
『っ、あ…ゴメン。急いで帰らなくちゃいけないから、また…明日』
カバンを掴んで勢いよく教室を飛び出して、階段まで走る
『はぁ…はぁ…、っ』
ダメって思うほど
好きが増して嫌になる
あんなに嬉しかった、
八神君の私に向けられる
声と視線は苦しくて嫌だ
放っておいてよ、お願い
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