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八神君にはファンがたくさんいて、その中の数人に目をつけられたからって、どうってなかったと思う
私が八神君を好きじゃなかったらの話だけどね
今までどうりに周りに流される《都合の良い人》として、八神君と距離を置けば高校生活の残り2年もすぐ終わるはず
でも好きになってしまったら、そうはいかない話で、
まだ高校生活2年目は4ヶ月しか経っていないのだ
残り1年半以上長いはず
好きの気持ちを消さなきゃ
『ココア?』
「そうそう、前おごってやったじゃんか、忘れた?」
『あー…いや、大丈夫』
「何が大丈夫なんだよ、今日お返しとして俺におごれっていう話、分かったか」
『…うん』
もう夏らしい暑さが増す
八神君とうまく距離を置けてから1ヶ月くらい経った
石田君とは久しぶりに会う気がするな、と思った矢先にココアを要求された
また何で今になってなんだ
仕方なく財布から100円
『はい、ココア』
「サンキュー」
『…石田君ってさ、武之内さんのどこが好き?』
「ぶはっ………また、どうして急にそんなことを聞くんだよ」
何でかって聞かれても、聞きたかったから聞いただけ
石田君は気づいているの?
だぶん、八神君は武之内さんのことが好きだよ
ねぇ、知ってる?
「………そういわれると、どこが好きかって的確に言うことできないよなー」
『ごめんね、変なこと聞いちゃって』
「◇◇って好きなやついんの?」
『いないよ』
「ふーん、そっか」
スカートのプリーツがよれてる
髪の毛、といたっけ
リップ塗っとこう
爪伸びてきたな
夜ごはん何だろう
明日は好きな番組だ
あ、先生に宿題見せよう
うん、今日も変わらない1日
「太一がな」
『!』
「最近◇◇が変って言ってた」
『………』
「まあ、俺はいつもどおりっていうか、あんま話したりしたことないけど、そう思う」
『いつもどおりだよ、うん、変わらないけどな、あはは』
「…何かあったら俺に言えよ、◇◇顔引きつってる」
言えるわけないじゃん
「俺のアドレスと携帯番号、手のひら貸せ」
左手を差し出すと、胸ポケットからボールペンを取り出してスラスラと書かれる
「◇◇も教えて」
右手を差し出す石田君
『…うん』
「ふー、美味かった!じゃあ、今日メールすから、無視すんなよ!」
『分かった、待ってるね』
もうすぐ夏休みだ
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