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「スリーポイント!」
「よっしゃ、ハイタッチしよ!」
「いぇーい!」
今日はクラスマッチで男女ともにバスケットボール
運動が苦手な私はまわりの迷惑になりそうだからはじっこの方で突っ立っている状態
「あ、そうそう、◇◇さん、ちゃんとボールとりに行ってよね、突っ立っているの邪魔だから」
『うん…ごめん』
「はぁー」
とりに行こうとしたら割って邪魔してきたのはそっちじゃん、とは言えずに―同じクラスなのに敵同士みたい
「じゃあ次うちらは休戦か、準々決勝出場は決まったことだし、頑張っていこうね!」
クラスのバスケ部の子が先頭切って気合を入れた
「◇◇さん、無理しないで出きる範囲で良いからね、クラスマッチは楽しく戦うのが目的なんだから!」
『分かった、頑張ってみるね』
「うん!」
始めて、このクラスでまともに会話した女の子だと、ちょっと嬉しい気持ちになった
「あっ、○○ちゃーん」
『武ノ内さん…』
「そっちのクラスはどう?」
『次は準々決勝』
「えっ、そうなの?わたしたちと戦うクラスって○○ちゃんのクラスだったんだー」
正直、どうでも良いけど
そんな風に思うのは目の前に武ノ内さんがいるからかな…変な気持ち、自分でも嫌だと思う
「次の試合まで時間あるし、男子の方見に行かない?」
『わ、私は良いよ…遠慮しとく』
八神君、見たくないし
「どうして?」
『…ちょっと疲れちゃった、し』
「なら、男子の試合みながら休憩したら良いわよ、さ、早く早く!」
意外と強引で腕を引っ張られて、振り払う気にもなれなかった
「ヤマト!」
「おう!」
ボールを受け取り、ドリブルしながらたくさんの人をかわして進んでいく石田君には黄色い声援がたくさん
「ヤマト、シュートだ!」
ゴンっと音を立てたゴールには綺麗にボールがネットをすり抜けて落ちていった
「ナイスシュート!」
「ヤマトお前かっこいーな!俺にもイケメンさわけろよ!」
「へへ、サンキューな」
「ヤマトー!頑張ってー」
「おっ、彼女さんが応援にきてるぜ〜」
「お熱いねぇ」
「冷やかすなよっ」
友達にからかわれた石田君は少し顔を赤くして、こちらに駆け寄ってきた
「応援来てくれてありがとな、◇◇も」
『あ、うん』
「わたしが連れてきてあげたんだから感謝してよね、美人2人に応援してもらえるんだから、ちゃんと勝ちなさいよ!」
「おうっ!」
石田君も武ノ内さんも、仲が良いっていうか、恋人同士だからすごく自然体で接しているんだと分かる
何も隠すことなんてなくて、ちゃんと自分の意見をこの2人は言い合える関係なんだろうなって感じた
「このままいけば太一のクラスと決勝戦当たりそうなんだよな」
「え、そうなの?こっちも準々決勝で○○ちゃんのクラスと試合することになったのよね」
「何か敵同士だな」
「負けられないけどね」
ふふっと笑顔を向けられるけど、
どう反応したらいいか分からない
ただ、うん、とだけ言ってみる
自分でも、もっとちゃんと上手く返事できないのかと嫌になる
無愛想な、意味の分からない子だと思われても、もういい
「お、空ーと◇◇、おつかれ!」
何でさ、こういう時に限って話しかけてくるの
「太一おつかれー、何かうちのクラスと試合当たりそうなんだって?」
「んー、勝てば次の、次?かな」
「そうだな、絶対当たる気する」
「だよなー決勝でヤマトが敵とか手強いぜ、はぁー」
「なに言ってんのよ、太一も十分上手いわよ」
「え、そうか?へへ」
「俺には負けるけどな、なぁ、勝ったらアイス奢ってもらうっていう賭けしようぜ」
「お!受けて立つぜ!」
私、ここにいらないじゃない
好きな人が近くにいることは嬉しいことなのに、誰かに目をつけられたらと思うと逃げたくてしょうがない
好きの気持ちを消すって決めたんだ
できる、大丈夫、頑張ろう
『ごめん、ちょっと気分悪いから、保健室行くね』
「え、○○ちゃん大丈夫?ついて行こうか?」
『大丈夫、一人で行ける』
「そう…無理しないでね、○○ちゃんの担任の先生には私が伝えとくわ、ゆっくり休んでね」
『………ありがとう』
本当に優しい人
私も武ノ内さんみたいになりたい
いや、みたいじゃなくて、本当に―
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