13
『布団、気持ちいい』
カーテンを閉めてベッドに潜る。先生は職員室に行くからと言って部屋を出ていった。
何でこんなに心がグルグルするんだろう。
ここ最近のことは自分の中で綺麗にまとめられない。
『わけ、わかんない…っ』
やっぱり、いつも通り、ここで私は泣いてしまう。
「おい」
『!』
声を圧し殺していたのに、隣のベッドから声をかけられた。ビックリしたと同時に、授業をサボるような1年生、ってことに怖さも感じた。
『ごめん、なさい』
「ん」
涙を拭いて声がしたほうに謝ると、頷くような声がしただけで、特に何か言われることはなかった。
『うるさかった…ですか?』
「いや…泣いてたのか?」
ぎこちなく、年下だけど敬語で聞いてみると、やっぱり私の泣き声は聞こえていたらしい。
『あの、ごめん…なさい』
「また謝ってる」
クスッと面白そうに笑い声が聞こえて、泣いていたことが恥ずかしく感じる。
「何か嫌なことでもあったとか?」
『―…ない、です』
「何もないのに泣くか?」
改めて言われて、何で泣いているのか考えて、また涙が出てきた。
『っ―』
「え、ちょ…」
私がまた泣き声をもらすものだから、カーテンの向こうで男の子はあたふたしているようだ。知らない人にも迷惑かけている。
『ほんと、ごめんない…静かにします、から』
「………話、俺で良かったら聞くけど。どうせ顔見えないんだし」
思いがけない言葉に再び驚く。この子は優しい人なんだ、って思うけれども、初対面の人に自分のグルグルした感情を話しても困らせるだけだ。
『ありがとう、ございます。…でも、大丈夫ですから。もう煩くしませんから―』
「ん、そっか。無理すんなよ…。俺よくこの時間サボってここにいるから。気が向けば話聞いてやるよ」
顔を知らないから、少し警戒心はあるものの、優しい言葉に心が軽くなるのを感じた。年下だけど上から目線な言い方。でも私が2年生なの知らないんだっけ。どういう人か分からないけど、優しい人で、対等な会話ができてることを嬉しく思う。
『ありがとう。気が向けば、私の話を聞いてくださいね。』
「あぁ」
「◇◇さん、起きて。お昼休みよ」
ふと、先生の声がして目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたようだ。起き上がってカーテンを開けると、笑顔の先生。向こう側には誰もいないベッドが見えた。
「ちょっとは落ち着いた?」
『はい。隣のサボり君が声をかけてくれたんです。』
「あら、本当?あの子ってクールな感じで私にもあまり口聞いてくれないのよねー。そんなところも◇◇さんみたい」
『え、そうですか?』
そうよー、と笑って先生が言うもんだから、私たちは似た者同士な気がした。
また会えると良いけどー。
『あ、じゃあ体育館戻ります』
ALICE+