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「見てたぜ、◇◇のシュート!」


「太一テンションたけーよ」


「だってさ、決勝点だぜ!すげーよ!」


素直に喜んで、いいのか

こっそり周りを見ても、いつものように嫌な視線は感じない。悪口のような声も聞こえない。

いざ、身を引こうと思ったら、あっさり後ろの道が消えてしまったみたいだ。でも、前に進む道も無い


「◇◇?」


『ん、あ…石田君?』


「大丈夫か?疲れた?」


『大丈夫、うん』


どうしよう、どうしようと考えるけど。


「ヤマトー絶対に負けねーから!◇◇応援してくれよな!」


忘れようとするほど近づく。


ただ、笑ってみた。本当に笑えていたのかは分からないけど。





「おい!こっち空いてるぞ!」


「っしゃ、まかせたヤマト!」


黄色い歓声に応えるように、華麗にドリブル、そしてシュート。


「あぁああああ!くそ!ヤマト!次こそ俺がやる!」


「落ち着けよ、たーいちー」


「うわあああムカつく!」


石田君と八神君のやりとりに、まわりの人たちは声を上げて笑う。


「ヤマトー頑張ってー優勝よー!」


武之内さんの声が際立って聞こえて、それに気づいた石田君は満面の笑みで親指を立てる。それを見て、次はひやかしの声が上がる。





「羨ましいカップルだぜ、…ほんと」





『素敵なカップルだな、…本当に』





〈試合しゅーりょー!ヤマト選手の活躍によって優勝を勝ち取りました!皆様盛大な拍手をぉおおお!〉


2年生クラスマッチ終了。女子は私のクラスが、男子は石田君のクラスが優勝した。


『はぁー。やっと終わった』


「○○ちゃーん!放課後ご飯食べ行こうって、留姫がぜぇーったいおいでって!」


『うん、行きたい。あ、じゃ、また放課後にね』


「うん!」


急いで整列する。体育委員から順位発表が行われ、次々と拍手喝采が体育館に響く。


<次にMVPです!男子は、石田ヤマト君、女子は◇◇○○さんです!どうぞ前に!>


『えっ、』


「お、やっぱり◇◇さんだ」


「ほらほら、◇◇さん!前出て!」


まさかの、あの、たまたまの決勝点でMVP賞に選ばれてしまった。驚きと恥ずかしさで、回りに促されながらオドオドと前に出る。


<おめでとーございます!>


「おう」


『っ、はい…』


<ちょい、写真部!写真撮れ!学校だよりに載せるんだから、きっれーいに!撮れよな!>


「うわ、体育委員盛り上がってんなー、はは、写真部慌ててる」


こういうのは苦手っていうか、嫌いっていうか…うわあああ目立ちたくない!


「◇◇ー?お前活躍したんだからもっと堂々としろよ」


『だ、だって、こういうの…苦手なんだもん』


「苦手でも、たまになら良いだろ?」


そう言って、肩を寄せられるものだからビックリ。ヒューヒューっと、またひやかしの声が上がる。武之内さんという彼女がいながら、こういのはよくないんじゃない、かな?


「あ、じゃ、そのまま、写真撮りますね」


『え、え、』


「おう、よろしくなー」


オドオドしているうちにシャッター音が鳴ってしまった。せめて心の準備をさせてほしかった…


∞14/10/04

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