5


『あ、そうだ!テントモンは大丈夫なんですか?!!』


「大丈夫…でした、けど。○○さん、いま何て?」


『え、だから、この人…って、あ、手ごめんなさい!!!』


バッと手を離して引っ込められた。どうしたんだろう。状況が理解できてないのか、少し…違和感を感じる。


「タケルくんよ」


『タケルくん?』


「そう、俺の弟だよ」


『えぇ?!ヤマト先輩弟いたんですか、あー確かに…よく見ると似てる、かも。目つきはヤマト先輩の方が悪いですね〜』


まるで、初対面だ。あははと笑って、初めましてと言われた。


「ちょっとおかしくないか?○○、俺らのことは分かるか?」


『何言ってるんですか?太一さんにヤマト先輩、空さんに京さんに光子郎先輩』


「じゃあこの人は…?」


『え、いま紹介してくれたじゃないですか、タケルくんでしょ?石田タケルくん?』


「いや、僕は高石タケル…で―」


『苗字………あ、何か、ごめんなさい…?』


「いや、別に…っ」


悪い冗談。からかわれている。そう思おうと必死に頭を回転させる。そうじゃなくても、あの空間にいたんだ、少し頭が混乱しているから、僕のことが…分からないだけだ。そうだよ、きっと―


「どうしてタケルのことだけ…」


「○○、小学生のころの冒険は覚えているよな?」


『はい、8月1日の、ですよね?』


「ああ、メンバーは?」


『何でそんなこと聞くんですか?』


「いいから」


『…太一さんと、ヤマト先輩。空さんにミミさん、光子郎先輩。私がいて、最後にヒカリちゃん』


「タケルは?」


『?』


唇を強く噛んだ。痛くて痛くて血の味がして、夢じゃないって分かる。


「大輔たちのことは分かる?」


『もちろんですよ、同じ学年ですし。このメンバーからいくと、伊織くんだって、賢くんだって分かりますよ?』


おかしいよ。だって、数時間前まで、僕たち―


「一時的な、記憶障害とでもいいますか…それ以外考えられませんよ」


「あの空間にいたから多少混乱しててもおかしくないしな」


「でもタケルくんだけ、って」


「俺たちのことも冒険のことも覚えてるのに、なんでそこにタケルだけがいないんだ?」


兄さんたちが話していることが心に刺さる。まだ状況が理解出来ていない○○ちゃんに京さんがテントモンを助けに来て、はぐれてしまったことを話した。


『そうですよね?テントモンが見つかって、早くここから出ようとして、…そして、そこから…記憶なくて。気づいたらここで、みんながいて』


「このエリアとファントモンの影響でしょうね」


「僕のこと…思い出しますか?」


「分かりません…一時的なものなら徐々に。そうでなくても、きっと原因があるはずです。それを解決出来れば―」


涙が出そうになるのを必死に堪えて、僕たちは帰ることにした。


∞2015/09/09
ALICE+