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お互い自己紹介をしてみたものの…気まずい。いや、輝二くんは分からないけど、私はとても。だって、あの日泣いてたのを知ってる人だし。


「クラスマッチ、良かったな」


『あ、うん』


「………」


『………』


「あの日、何で泣いていたのか…聞いてもいい?」


『え、…き、聞くの?』


「あーいや、別に言いたくないなら良いけど、さ…」


気づかってくれているんだ…優しい。

いっそのこと、話せば楽になるのかもしれない。いつも話を聞いてくれる先生はいないし、このグルグルしたものを少しだけでも吐き出せたら…―。


『えっと…その、クラスになじめなくて』


「うん」


『あ、でもね!その…クラスマッチで、たまたま、たまたまだけど活躍…できて、クラスに少しだけ認めてもらえたの』


「そっか、良かったな。でも…それで泣くの?」


『あ、…クラスに、いるの』


「?」


『す…きな、ひと』


「え、あ、そー………なんだ」


『うん…。前にクラスになじめてなかったときに色々あって、色々考えて…これ以上好きにならないようにしてたの。その人…好きな人がいたし』


「…そっか」


『でも、その人の…好きな人は付き合ってる人がいたの…でも、その3人は友達で、とても仲良く見えた。ずっと一緒にいるって聞いてたから、余計に―』


余計に、胸が苦しくなった。私の届かない人は、近くて遠い…絶対に届かない人を好きだということに。

ずっと。ずっと、ずっと、ずっと、大事な友達である2人を、仲良く寄り添う2人を、八神君は近くで見てきたんだ。


『本当に、ほんとに…届かないの、っ、ぜったい…とどかないの』


涙が出てきた。分かってる、理解している。何があっても、武之内さんより素敵な人にはなれないし、武之内さんのように…八神君に好きになってはもらえない。
それでも、八神くんを好きだなんて。いつか、八神くんが武之内さんを諦めたら―なんて…絶対にないのに、考えてしまう。


『いつか…好きに、なってくれたらって、ずっと、ずっと―』


「うん…」


泣きながら気持ちを吐き出す私を、輝二くんは、ただ「うん」と頷いて、ずっと聞いていてくれていた。





「…落ち着いた?」


『ん…また、泣いてごめんなさい…』


「だから、謝りすぎだよ…先輩」


少しだけ、ほんの少しだけ…心が軽くなった。鏡を見ると、まだ少し目が赤いけど…大丈夫。また、ここにくれば、輝二くんに会えるかもしれない。次は、…もっとちゃんと、普通のことを、話したい。


『休み時間のうちに、わたし、教室戻るね』


「ん、じゃあ俺も戻る」


そう言って立ち上がって、2人で保健室を出る。


「あ、…◇◇?」


「ここ保健室じゃん」


「え、○○ちゃん、また具合悪いとか?大丈夫?」


『あっ―』


自分のタイミングの悪さを呪う。なんで、もうイヤだ。

八神くんに石田くん、武之内さん。このタイミングで会いたくない人たち。

さっき話したことを思い出して、また…涙が出そうになって、輝二君の方へ後ずさりしてしまう。


「………」


「◇◇…? だいじょ―」


「先輩」


うつむく私の顔を、八神くんがのぞみこもうとした瞬間、輝二君に手を引かれた。



胸を差す痛みは増してく。あ、そっか。好きになるってこういうことなんだね。

分かっていても、どんなにそれが分かっていても。やっぱり―


∞14/11/05

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