21
私は八神くんが好き。こんなに好きだよ。
何で気づいてくれないの。
どうしたい?言ってごらん。心の声がする。
八神くんの隣にいたい。
友達でもいい、もういっそのこと友達でいいから―私じゃダメ?どんな形でも私じゃダメなんだよね。分かってる。分かってるよ。
『もっ…、なんで………好き、っぅ、なのに』
「うん」
『好き…で、も、会う…のヤダ…って』
「うん」
『3人が…い、しょにいるの…が―2人が…』
「うん」
輝二くんに手を引かれ、泣きながら小走りで通る廊下。どうしても、あの3人の顔が頭から離れない。
どうして、八神くんはあの2人と一緒にいられるの?ツラくないの?そんなに、…あの2人が大事なの?
「先輩…座ろ」
開放されていない屋上へと続く階段には誰も近寄らない。促されるまま座り込んで、精一杯落ち着こうと深呼吸をしてみる。
好きという感情は苦しくて、とても痛い。
私の片思いも、八神くんの片思いも、届かないのに、全然消えない。どうしてだろう。
「…先輩、さっきの人たちが―」
無言で頷くと、やっぱり、また涙が出てきた。
そろそろ夏休み、あの8月1日が来る。
今年の約束をするために太一と空と廊下を歩きながら話していたら、保健室から出てきた◇◇と1年らしい男と、バッタリ会った。
声をかけて見ても、何も言わずにうつむく◇◇。太一が近づこうとした瞬間、王子に手を引かれる姫のように、◇◇は隣にいた男と一緒に走って消えていった。
あーやっぱりな、と改めて思った。
たぶん、◇◇は好きなんだろうな―コイツを。
「◇◇…大丈夫かな」
「大丈夫じゃねーの? 男いたし」
「もう、ヤマト! ○○ちゃん…何か辛そうだったわね」
「…太一、何か心当たりは?」
「え、何で俺に聞くんだよ」
こういう疎い奴って本当にめんどくさい。まあ、太一だからしょうがないけど。
「さあ?」
「もう、同じクラスなんだから知ってなさいよ!」
「え、ええ…?!」
「女心の分からんサッカーバカは嫌われるぞ」
「そうよそうよ!!!」
「な、何だよ2人して…ちゃんと教室戻ったら、聞くよ」
「何を?」
「な、な、なんか…を???」
「はあー…太一、女心はガラスのハートなのよ。気にかけるのも大切だけど、そっとしておく時も大切なのよ」
「お、おお…???」
ぜっっっんぜん!分かってないな、コイツ。バカだ。ブツブツと、何を?何て?ん??と呟きながら廊下を歩いていく太一を見ながら、空と2人で顔を見合わせて大きくため息をついた。
∞14/11/15
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