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「先輩さ、携帯持ってる?」
『うん、あるけど』
「連絡先…こ、交換、しよ」
『あ…うん、そうだね』
携帯を取り出してお互いに連絡先を入力する。
「何かあったら、いつでも連絡して。電話でも、嫌だったらメールでもいい。ちゃんと返事するから」
『ありがとう。心強いな』
自然と笑みがこぼれる。信頼できる人が、また1人増えた。かけがえのない大切な友達だ。
「そろそろ昼休みか」
『あ、そうだね、お腹空いたね』
「…戻る?」
『? 戻るよ、お腹空いてないの?』
「あ、うん、空いた空いた…じゃあ」
『うん、またね!』
「…また」
まだ上手く心の整理はつかないけど、このままでも良いのかも…なんて―輝二くんと話してたら思える。
きっと、いつかは答えが出るんだ、急がなくても、大丈夫。
学校帰りに久しぶりに輝一の家に泊まりにいった。相変わらず、母さん…が、元気で良かった。
風呂から上がって携帯を見たら、○○先輩からメールがきてた。
<○○:◇◇です、今日はありがとう。輝二くんに時間があれば、また話聞いてね。おやすみなさい。>
「なに?メール?」
「うっわ!!び、ビックリした…」
「こ、こっちがビックリしたよ…輝二がそんなに驚くなんて」
「あー…うん、メール、だけど」
思わず驚いてしまった、後ろ手に携帯隠しちゃったし…不自然すぎる。
「拓也くん?」
「いや」
「え、輝二って拓也くんの他にメールする人なんていた?」
「それどういう意味だよ…。じゅ、純平とか友樹とか、いるし」
「あ、もしかして泉ちゃん?」
「泉もメールはするけど、違う」
「まさか…お友達?!高校でお友達できたの?!わーお兄ちゃん嬉しいな〜」
「なんだよ、それ…」
友達…で、良いんだよな。
「何て名前?」
「○○…先輩」
「○○…って、女の子、の先輩?」
何故か目をキラキラさせる輝一に困りながらも頷く
「へー、珍しいね!輝二が先輩と、しかも、女子!の先輩と仲良くなるなんて」
「そこを強調しないでくれ…別にやましい感情なんて無いから」
「へー…ふふっ」
「笑うな」
何か勘違いされている気がする…別に、良いけど。何か、嫌な気もする。
「実は僕も最近仲良くなった人がいるんだ?」
「こ、輝一兄さんに女?!」
「ち、違うよ男の子!同じ1年生なのにサッカー部のエースで、成績は学年トップ、格好良くて女の子にすっごくモテる男の子!一乗寺賢くんって子!」
高校が違うからお互いどういう友人関係があるのか気になるもんだよ。双子だし。兄さん人が良いから、変な奴に絡まれてないか、とか。
「ふーん。また何でそんな漫画に出てきそうな奴と仲良くなったんだ?」
「学校帰りにさ、公園の前通ったらサッカーの練習する拓哉くんに会ったんだ」
「げっ、何でアイツの名前が出てくんだよ…」
「まあまあ。それでさ、こーいちー!って僕に気づいて、久しぶりだねーって話して、サッカーの練習に付き合ってたんだ。そしたら、そこにその子が来て、僕に同じ高校だよね?って」
「声かけてきたのか」
「うん。でも僕に興味があったっていうか、拓哉くんに興味あったみたいだよ。サッカーする者同士で意気投合してたし。僕も色々話ししてたら仲良くなってさ」
「ふーん」
悪いやつでは、無さそうだな…うん。
「違う高校に双子の弟がいるって話したら、その子の尊敬する先輩も輝二の高校に通ってる人なんだって!」
「サッカー部…か」
「うん、確かねーヤガミ先輩って言ってた」
「や、がみ?」
「そうそう。小学生の頃からお世話になってて、サッカーがすごく上手らしいんだ。拓哉くんが会いたがってたよ。輝一その先輩の名前聞いたことない?」
ヤガミ…って、アイツが片思いしてる―
「でも、何か賢くんは、ヤガミ先輩が心配なんだって」
「?」
「何かね、その賢くんもお友達から聞いた話らしいんだけど、ヤガミ先輩には、ずっと好きな女の子がいるんだって。小中高ずっと一緒らしいんだけど。小学生の頃から2人はすごく仲良くて絶対付き合うだろって雰囲気らしかったんだけど、中学生になってその女の子がヤガミ先輩の親友に告白したんだって!」
そっか、あの3人って…そうか。
「それでね、ヤガミ先輩の好きな人と、ヤガミ先輩の親友は付き合って。その3人はずっと仲良かったらしいから仲良く寄り添う2人をヤガミ先輩は隣でずっと見守っているんだなーって思うと切ないんだって。あ、でもコレ他の人には言わないでって言われてた」
「………って、じゃあ俺に話すのダメじゃん!」
「うーん、まあ、双子だし?2人で1つだし?」
「はあ…」
まさか、輝一の口から、あの八神先輩に話を聞くとは…何か俺まで、心が痛くなってしまった。八神先輩…○○先輩が好きな、人。
2人とも、本当に…不毛な恋だ。
∞2015/01/31
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