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「タカトのバカ!」


「だから、ゴメンってば〜」


「ケンカは良いから早く席につけ、説明始めるぞ」


説明会に遅れてきた留姫とタカトくんとジェンくん。


「ったく…タカトがモタモタするから」


『留姫落ち着いて…』


わざわざタカトくんのこと待ってあげてたんだ…やっぱり留姫 優しい。


「ねえねえ、あの人ってさ…八神くんよね?」


ふと、少し遠くに座る八神くんに気がついた泉ちゃん。もちろん一緒に座っているのは石田くんに武之内さん。


『あ…うん。合宿行くんだって』


「キャー!それって、それって、チャンスじゃない?」


「そうそう、告白するチャンスだと思う」


『んー、どうかな』


ただ何とも言えずに、苦笑いするしかなかった。





「勉強道具だけは!忘れるなよー特に八神!」


「うっ、大丈夫っすよ…たぶん」


「たぶんじゃねーだろ!ったく、まあ先生も引率頑張るから、お前らも気を引き閉めて来いよ!じゃ、また合宿でなー、解散!気を付けて帰れー」


勉強道具に着替えや必需品、結構…荷物多くなりそうだな。


「近くに川もあるなら結構涼しそうね」


「ねえねえ、合宿に納豆でるかな?」


「出る…んじゃない?食事出るらしいし」


「そっかあ〜よかった〜!あ、お菓子は持って行っていいのよね?」


「変なもの以外ね」


「もう留姫、何よ〜変なものって!」


泉ちゃんもミミちゃんも楽しそうだな…うん、私も楽しもう。


「◇◇さん」


『あ、ジェンくん』


ジェンくんに連れられて、留姫たちとは少し離れたところで資料を見るフリをしながら話す。


「この前の話、覚えてる?」


『タカトくんに…告白させよう、って話?』


「そうそう。タカトに言ってみたんだよ、合宿はルキに告白するチャンスだって」


『うんうん』


「そしたらさ、頑張ってみるって」


『え、ほんと?!あの…タカトくんが?』


「すごいよね。まあ、ずーっとルキのこと好きだったから、タカトもこれが良いキッカケになるって分かったんだろうね」


『そうだね…何がなんでも私たちで2人をくっつけなきゃだね』


「恋のキューピッド作戦!」


『わぁ…ジェンくんヤル気満々だね』


「そりゃあ。大好きな親友2人が幸せにいてくれるなら、ね」




一瞬で顔が浮かんだ。




『留姫のこと好きなの?』




「え?」


『あ、いや…ごめんね。忘れてー』


ジェンくんを八神くんと重ねてしまった


「ルキのことが好きだって?そりゃあ大好きだよ。でも、友達としてね」


『そ、だよね…』


「ルキは初めて会ったときから強気でボーイッシュで、あんまり女の子として意識したことないな。あ、いまのルキに怒られちゃうかな」


ジェンくんが留姫を好きっていうことが、恋愛の意味ではないことを知っている。
分かっているけど、もしも…ジェンくんが八神くんと同じように…思ってしまったら。


どうするんだろう


「ほら僕たち男2人に女1人の幼馴染だし。今までも周りから、そういう恋愛?みたいな聞かれ方したけどさ、僕は2人を大切な親友だと思ってるし、2人が幸せなら僕も幸せなんだ」


八神くんもこういう思いなのだろうか


「タカトがルキのことを好きなのは、当の本人のタカトよりも先に気づいてたと思うんだ。もしも、僕がルキをタカトより先に好きになっていても、うーん…親友のために身を引いたと思うな」


『どんなに、好きでも?』


「うん、どんなに好きでも。そのまま3人で仲良くすごせるなら、僕はあきらめるな」


私には幼馴染がいないし、好きという感情も今までよく分からなかった。

八神くんに出会って、いろいろあって、本当に…本当に好きなんだと自覚して、ようやく好きという感情が分かった。

もし私が八神くんのような立場になったら、どう思うんだろう…そう考えたことはある。確かに、3人で仲良くすごせるなら身をひくことを選ぶと思う。


でも、実際に今、私がいる場所は、その3人の外側。どうしたって部外者で…。

泉ちゃんたちに「告白」と言われても、叶わないのは目に見えている。それでもこの気持ちを伝えたいかは、まだ分からない。もしも気まずい関係になってしまったら…このまま友達でいて、片思いが消えるのを待つのが、自分を守る方法だと、思う。


∞15/03/05
ALICE+