夕焼け色の君


「あっ」


あと少しで家につくところで、忘れ物をしたことを思い出した。何でこのタイミングで気付くのか。でも必要なものだしな…。

急いで放課後の学校へ引き返した。






校庭では遊び声が聞こえるだけで、校内に生徒らしき人はいない。もうみんな帰ったよな、そう思いながら、自分の教室へと向かう。

誰もいないであろう教室へ入ってみると、窓際で夕焼け空を見ている女の子が1人。


「…○○ちゃん?」


『タケル君…どうしたの?』


「ちょっと忘れ物しちゃって」


『あ、私も同じ』


クスクスと笑う彼女は、沈む太陽に照らされて、肌も髪の毛もオレンジ色。綺麗だ。


「空見てたの?」


『うん、綺麗だなーって』


そう言うと○○ちゃんは急に駆け寄ってきて、僕の腕を引っ張る。


『あっち見て』


指差した先をたどって空を見上げると、水色・ピンク・オレンジ。綺麗な空が広がっていた。


「確かに綺麗だね」


『でしょ!夕方の空って、いろんな色になって大好きなの』


○○ちゃんはよく笑う。つられて僕も笑う。


不思議だな、このかんじ。


「…僕も好きになりそうだな」


うん、と頷いて、また空を見上げる。

○○ちゃんが見ているこの空が羨ましい。もっと僕も見てくれないかな?


「○○ちゃん」


『ん?』


その瞬間、唇が触れて、世界が止まった気がした。

時計の秒針の音が聞こえる。

ゆっくりと離れると、○○ちゃんは口をぱくぱくとさせ、次第にうつむいていく。あ、やってしまった、と少し反省するけど、後悔はしない。


「嫌…だった?」


『あ、えっと、驚いた…の。嫌じゃない、うん、嬉しかった…です』


オレンジ色に染まる顔が、少し赤く見えて。つられて、やっぱり僕も赤くなる。



夕 焼 け の 君


+09.11.24+



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