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「お手をどーぞ」
デート当日。家まで迎えに来てくれた太一さんは手を差し出してきた。おずおずと手を重ねると指を絡めてきたので、顔から火が出るかと思った。
「○○、いつもと雰囲気違うな?可愛い」
優しく微笑むものだから、心臓が鳴いた。
服は持っているもののなかで、一番女の子らしいものを選んだ。お化粧は最近泉ちゃんと勉強中。それを知ったミミさんがくれたリップグロスを今日はつけてみた。太一さんに少しは見合った彼女になりたいから。
『太一さんも、今日はいつもより…格好いいです』
「んっ…へへ、嬉しい」
今日一日、きっと幸せだ。
「ようやく来たなブイモン、花畑でぜーったいにウィザーモンを見つけるぞ!!!」
「おう大輔!まかせろ!!!」
ファントモンから聞き出した情報を元に、大輔くんのブイモンを呼び寄せてから花畑へと向かった。
「本当にいるのかしらね…いなかったらどうしよう」
「…まだいるよ、きっと。いつもウィザーモンはあの人間のために、あの花畑で花を摘んでいったんだ」
ウィザーモンに会えたからといって、○○さんのタケルくんとの記憶が戻るとは限らない。でも、有ったことは、無かったこにはならない。二人が思いあっていたこと。消えない事実。
「早く、向かいましょう…」
「○○は何が食べたい?」
『なんでもいいです』
「んーなんでもが一番困るんだよなー」
休日のランチタイム。お台場のお店はどこも賑わっていた。お店を探すためにキョロキョロと周りを見渡す太一さん。なんでもいいですよ。二人でご飯を食べられるだけで、私は嬉しいですもの。
「お、あそこのランチプレート美味そうだな」
『わぁ、オシャレなお店で良さそうですね』
「うん、決めた!」
ニッコリ笑って、繋いでいた手をぎゅっと握りしめて、私を引っ張ってくれた。
「うわー…何だこの花畑」
「キレーイ!!!」
ファントモンに案内されてようやくたどり着いた花畑。広く一面に花が咲いている。息を呑むほどの美しさ。
「えらい良い香りがしますな」
「おれここで鬼ごっこしたい!」
「こらブイモン、目的は鬼ごっこじゃないでしょう」
「ちぇっ、ホークモンのケチ〜」
「何か凄いここ落ち着くわね。香りが良いからかしら…ピクニックにもってこいね」
「みなさん目的を忘れていませんか?」
「そうだぞ、ウィザーモンを探すために来たんだ。早く…見つけてやんなきゃ」
大輔くんは一面に咲く花を踏まぬように足場を見つけながら進んでいった。テントモンとホークモンは空から探し、僕たちは花畑を目をこらしながら探していった。
「タケルせんぱ〜い!!!」
遠くから僕を呼ぶ声がする。派手な見た目で周りからの視線をひく彼女。
「待ってましたよ〜」
駆け寄ってきたと思ったら腕を絡めてくる。
「洲崎さん、近い」
「もーう、タケル先輩!付き合っているんだから、アイルって呼んでください!!!」
数日前にいきなり告白されて、いきなり呼び捨ては気が引ける。付き合うことを承諾した僕も僕だが。○○ちゃんと忘れる良いきっかけになると…そう思ったから。
「はぁー…アイル」
「グッド!さあさあ、お買い物たくさんしましょー!!!」
騒がしい子ではあるけど、悪い子ではない。勢いにおされるなかで、○○ちゃんを忘れていけばいい。この子を利用して、忘れればいい。
「光子郎はーん!!!」
花畑のなかを歩き続けて2時間ほど経ったころ、テントモンの僕を呼ぶ声が遠くから聞こえた。
「テントモン!こっちです!!!」
「見つかりましたで!ウィザーモン!!!」
「ほんとですか?!!」
「ビンゴ!!!」
「ホークモンには大輔はんたちを案内するよう言うてますんで、光子郎はんと京はんはわてに着いてきてくださいな」
ようやく、見つかった!早く、どうにかして、二人を――。
∞2020/02/02
ALICE+