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「ウィザーモン!!!」


大きな岩にもたれかかって虚ろな目をしたウィザーモンにファントモンが駆け寄って、そのまま抱きしめたが、全く反応を示さない。ただ、ゆっくり瞬きをするだけ。


「こいつ…大丈夫なのか?」


「…ウィザーモン」


大輔くんが膝をついて、ウィザーモンに話しかける。


「なあ、話しを聞いてくれ。俺の大事な友だちが…困っているんだ。ツラい思いをしている。このままじゃあいつ…心がひとりぼっちになっちゃうんだ」


その言葉を聞いてなのか、ウィザーモンの目から涙が落ちた。


「ウィザーモン…?」


「っ…思い出してしまったんだ」


ファントモンを抱きしめかえして、泣きながら声を発した。


「あの人を…ひとりぼっちにしたから…、ぼくが側にいてもダメだった」


あの人とは、死んだパートナーの人間のことだろう。泣きながら必死に声を出す姿に、その場にいたみんなの心が痛んだ。


「思い出したって…ファントモンが消した記憶が、あのエリアの暴走で戻った…ってことよね」


「たぶん、そうでしょうね。まだあのエリアが荒れてる状況からして、全てではないにしても…」


「ずっと…一緒にいたかったのにっ、どうして…ごめんね…、ごめん」


「…お前が謝ることじゃない」


泣きじゃくるウィザーモンに大輔くんが手をのばした。


「お前のパートナーだって、ずっと一緒にいたいと思ってたはずだよ。幸せな時間を過ごしたと思う。ここに咲く花をいつも渡していたんだよな?」


手渡された花を震える手で受け取った。


「忘れたいほどツラかったんだよな、俺には…計り知れないほどに。でも、幸せな思い出も一緒に忘れたら…悲しい」


ウィザーモンの目からボロボロと涙がこぼれた。幸せな思い出を、思い出しているようだった。






「いやー良い買い物したぜ、○○に選んでもらえて良かった」


ランチを終えた後、勉強道具や部活で使うものを買いにいった。もちろん、お揃いのものも買おうという話になり、色違いのシャーペンをお互いに買った。


『私たちって意外と好み似ているんですね』


「あーそりゃあ、カップルだからな?」


そう言って私の頭をなでる太一さんに、また心臓が鳴いた。大きな温かな手は何とも言えない安心感を与えてくれる。


「そろそろ帰るか」


『はい』


自然と差し出された手を握り返す。

やっぱり、今日は幸せな一日だった。


「あっ、タケル…?」


太一さんの微かな声に気づき、視線が動いた。

∞2020/03/04
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