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心と頭が混乱するなか、ようやく家に着いた。
デジタルワールドに行った日、あの日、私に起こった事。何で…忘れちゃったんだろう、大好きなタケルくんのこと。どうして太一さんは、そんな私を…?
考えても分からない。それに、起きてしまったことは…変えられない。
『どうしたらいいの…』
再び涙が込み上げてきた。
そんな時、携帯に大輔くんから電話がかかってきた。
「もしもし、○○ちゃん?!!」
『大輔くん…どうしたの?』
「えーっと…何て言ったらいいんだ―」
電話の向こうで京さんや光子郎さんの声が聞こえる。
「もしもし、○○さん」
『光子郎さん?』
「すみません、いきなり電話をして…。確認したいことがありまして―」
『…もしかして、タケルくんの…ことですか?』
「あ、思い出したんですか?!」
『さっき…いきなり―』
光子郎さんたちはほっとしたような声をあげた。そして、私が記憶をなくした経緯―何でタケルくんだけ忘れてしまったのかをゆっくり教えてくれた。
悲しい話だった。ウィザーモンに私の心が反応するなんて。
「○○ちゃん、京よ、大丈夫…?」
『わたし…ほんと、タケルくんに何て…言ったら―』
「…○○ちゃんは悪くないわ。記憶を取り戻したんだもの、タケルくんも嬉しいはずよ」
『…でも―』
「あ、○○ちゃん!えっと、その…た、太一さん、と―」
大輔くんの何か言いたげな声。すごく、気を使ってくれていることが分かる。
タケルくんのこと、太一さんのこと。
忘れていたからと言って、傷つけてしまったことに変わりはない。
『私、もう…タケルくんとは一緒にいられない』
「えっ…」
『太一さんとも…』
大好きな人、憧れの人。
私はどちらも大好きだけど、私のせいで傷ついてしまうなんて嫌だ。
タケルくんには新しい…好きな子がいて、私といた時より幸せなんだと思う。
太一さんには、きっと素敵な女性が似合う。そんな人と必ず出会える。
そこに私はいない。
∞2020/04/05
ALICE+