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「おっはよー」
『泉ちゃん、おはよ』
「…○○、元気無いわね?」
『そう?寝不足かも』
「もー、寝不足はお肌の大敵なんだからね!」
太一さんとのこと以外何も知らない泉ちゃんは、いつも通りに接してくれる。太一さんとのことだって、無理に聞こうとせず、私が報告したことについてだけ詳しく聞いてくるだけ。もちろんキスしたことなど話していない。
「タケル先輩、また放課後に会いましょーね!」
「うん」
あの日見かけた女の子とタケルくんが、教室前の廊下で仲良く手を振っていた。
「何あれ。まさかタケルくんの彼女とか?派手な年下捕まえたわねー」
やっぱり、彼女なのかな。教室に入ってきたタケルくんは席に着くまで、数人のクラスメイトにもてはやされ苦笑いをしていた。
知らないふりをしなきゃ。気づかないふりをしなきゃ。そう思うのに、目線は自然とタケルくんの瞳に向かう。
私に気づいて。
そう強く思うけど、ダメだ。きっと、タケルくんも私が記憶を失くしてしまった時、そう思って…くれていたと、思う。
でも私は気づけなかった、思い出せなかった。ウィザーモンたちのせいじゃない。私の思いが弱かったせいだ。
「○○ちゃん、」
お昼の時間、大輔くんがやってきた。泉ちゃんに断りを入れて、廊下で話をする。
「記憶が戻ったこと、タケルには―」
『…言ってない』
「そっか…なら、俺が―」
『ダメ、言わないで!』
「え、どうして…」
『タケルくん…新しい好きな子が、いるみたいなの』
「いや、そんなこと」
『私が忘れちゃったから…傷つけちゃったから、もう私のことより、その子のことを…大事にしてほしいの』
大輔くんが複雑そうな顔をする。せっかく私の、私たちのために動いてくれたのに…そう思うけど、もうタケルくんを傷つけたくない。
私が記憶を取り戻したからといって、前のように…仲睦まじくは出来ないと思うから。
『ごめんね。ありがとう』
タケルくんには私の記憶のことを伝えないでと、他の人にも伝えてくれるように大輔くんに頼んだ。
大好きな人が、同じように私を好きでいてくれるわけないから。大好きな人が、幸せでいれるように、私は―。
∞2020/04/18
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