「これ、ナマエにあげるよ」

 私の目の前に手を差し伸べて。リーマスはそう言った。多分、笑顔だったと思う。

「なに? これ」
「柘榴」
「ザクロ?」

 名前を聞いたことはあっても、見るのは初めてだ。ざくろ。ざくろ。宝石みたいにきらきらしていた。

「朱くて綺麗でしょ。人にもらったから、おすそわけ」

 ありがとう、と言うと、リーマスは朱いろの塊を私に押しつけて、自分は一粒だけ手に取った。

「これ、どうやって食べるの?」
「知らなかった?」

 リーマスは意外そうに言う。わたしは恐る恐る一粒もぎ取り、明かりに透かしてみた。

「綺麗」
「でしょ。それをそのまま口に入れるの。でも噛んじゃダメだよ。ほとんど種だから」

 笑いながら口に入れた彼に倣い、わたしも口に放った。

「あ、、、、す、」
「ん?」
「っぱい、ね」

 口の中にいれた赤い実は酸っぱくて、私は顔をしかめながらそれだけ言った。あとからじんわりと甘さが広がるが、補って余りある酸っぱさだ。私の口には合わない。甘党のリーマスの口にも合わないだろうと、彼の方を見上げると、彼も同じような顔をしていた。少し嬉しくなって、こっそり微笑む。

「すごく。すっぱい」
「うん。でも、好きなんだよねえ」
「好きなの?」
「うん。味は好きじゃないんだけど。見た目は宝石みたいなのにすっぱいところが、天の邪鬼じゃない。だから好きなんだ」
「へえ。リーマスって変な趣味」
「悪いね」

 白い種を紙に出して、もう一粒、右手でつまむ。

「確かに、癖になる。すっぱいのに」
「うんうん。でしょ」
「それに、一粒につき、食べられる部分が少ない」
「そうなんだよ。一粒がすぐ終わっちゃうんだよ」
「あんまり、食べられない」
「でもさ、ほら。いっぱいあるから」

 窓の方を向いて柘榴を食べるリーマスの顔は、見えなかった。やっぱり、彼も泣いてるんだろうか。

「そうだね。いっぱいあるからいっかぁ」
「うん」

 わたしはもう一粒、ざくろを取る。もう一粒。もう一粒。ざくろを一つ取るたびに、わたしたちの時間は一つずつ減っていく。

あといくつかの果実
(110921)afterwriting