ルーピンが今、とても困っているのを私はわかっているつもりだ。外は雨。ここには私たち、二人きり。ふくろう小屋は、雨を凌ぐので精一杯という出で立ちで、強い風が吹くと柱が揺れてぎいぎい鳴った。ルーピンは、偶々居合わせただけの私のことを知らないだろう。私はルーピンのことを知っている。いつも見ているのだ。身に纏う蛇の紋章を、何度引き剥がしたいと思ったことか。

「……えっと。」

 心臓を、手で掴まれたかと思った。

「ミョウジさん、だよね」

 気を使っているのだろうか。ルーピンは柔和に笑って私に問いかけた。

「雨が止むまで、二人でここでこうしていようね」

 ルーピンにとっては、これはただの現状の確認だ。でも私はこれだけで、こうして二人で過ごすことを、許されたかのような気持ちになるのだ。

遣らずの雨が見ていた二人
(200614)
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「あれ、ナマエ?」
「あ……リーマス」

 ダイアゴン横丁にそう多くの菓子店があるわけじゃない。そのうち、今いるこの店だけが、先週まで休業していて、久方ぶりに昨日再開されたのだ。リーマスはきっと、来るだろうと思った。

「ナマエとは何だかお菓子屋さんで良く会う気がするよ。甘いもの好きなの?」
「うん……リーマスも?」
「まあ、そうだね。あ、見て、これ新作だよ!」

 私は、甘いものは嫌いじゃないけど。本当はこうして菓子店を巡るほどの執着心はない。なのにこうして菓子店に足繁く通うのは、もちろんリーマスに会うためだ。

「じゃあ……また、ホグワーツで」
「……うん、じゃあね、リーマス」

 こうして何度も“偶然”会ったって、何かが変わるわけじゃない。リーマスが私のことを級友としか見ていないことも変わらない。でも私は彼の背中を目線で追っている。その仕草、顔、姿勢、声、すべてを、追いかけてしまうのだ。

甘い純情
(210421)
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