<文字数多め ほぼほぼ文章 表現ぬるめ>






 彼 宮地清志先輩は一つ学年が上で、この春に大学生になる。今まで異性とお付き合いをしたことはお互いにあるけれど、深い関係になったことはない。まあ、高校生以下ならばそれは当たり前(多分)で健全だ。しかし大学生と言えば新歓コンパから未成年にもお酒を飲ませたり、一人暮らしの人が増えてお泊りだとか、そういう深い関係になる人が多いように感じる。未だ名前は高校生であるから本当にそうであるか否かは分からないが、たったの一歳と言えど年の差を感じさせるには十分で、焦っていた。何せ彼は言動こそ危ないが根は真面目でストイック、それに加えてあの容姿だ。
 そんな名前の前に舞い降りたのが地方に住んでいる父のいとこの訃報だった。名前からすると従兄弟違いという関係にあるその人は名字家とは疎遠だった。一応儀礼にのっとってお葬式には両親が参列することになったが、名前は一度も会ったことのない遠い親戚であるし、受験を理由に断った。つまり両親が地方に居る間、名字は家に一人なのである。なんてお誂え向きなのだろうか。
 一方の宮地は名前の泊まりにこないかという連絡を受けて名前と同じような事を考えていた。名前は焦りからくる気持ちが若干強い気もしなくはないが、宮地はある意味健全な欲求が大半だった。高校生であった頃は部活に受験と忙しくて、ついそういったことは二の次になってしまいがちだったが、宮地とて年頃の男なのだから。
 お互いに小っ恥ずかしい思いを抱えながら迎えた初めてのお泊まり。宮地は友だちの家に泊まって来るとありきたりな説明をして家を出た。お互い平静を装っていただけあってとてもスムーズにデートをしたりご飯を作って食べたりは進んだ。夜ご飯を食べてしまえば後はお風呂に入って寝るだけだ。その時間が近付いてくるに連れて二人の緊張は高まった。
 名前はお客様だからと宮地を先に入らせ、その後に続いた。無駄毛はしっかり剃ったし、この日のためにお手入れして来た肌の調子も良好だ。おニューとまでいかなくても比較的新しくてお気に入りの下着をつける。白がベースカラーで、紺色とさりげない金色が清楚ながら少しお姉さんっぽいデザインになっている。上にレースがついたタンクトップ、男受けが良いとネットで評判のパステルカラーのもこもこルームウェア。上はパーカーで下はショートパンツ。脱衣所の鏡の前で少し気合いが入り過ぎではなかろうか、と不安になりつつもネットの声を信用してみようと思う。コレで失敗したら絶対に一生恨むだろう。メディアリテラシー 大事。
 緊張しながら名前は自室の扉を開ける。宮地は名前のベッドに寄りかかるようにしてクッションに腰を下ろしていた。宮地はスマホに落としていた視線をあげて名前を見る。少し目が泳いだ後、こっちこいよ、と名前限定の柔らかな笑みを浮かべて名前を促す。名前は目が泳いだ理由が、グッときたからだとか可愛かったからとか、そういうのであれば良いのにと祈るように思った。
 名前は両手を広げた宮地に抱きついた。髪の毛から薫る匂いは名前の家の甘めの香りのシャンプーの筈だが、やっぱり宮地清志の香りがした。しばらく強めに抱き合ってから距離を取って目を合わせる。どちらかともなく目を閉じて唇を寄せた。ふにゅ、と合わさって、少し離れる。それが名残惜しくてまたすぐに重なる。そうして鳥が啄むようなキスをして、うっすら開いた口に舌が差し込まれる。そのままディープキスを堪能していると肩に添えられていた大きな手のひらが少し滑り落ちる。それは胸にまで到達する前に止まって、お互いキスをやめる。またすぐに唇が触れ合ってしまうような近い距離のまま、宮地はいつになく力なく 切なげで 熱の篭った低い声を発する。

「そういう意味で良いんだよな?」
「はい」
「…触って、良いか?」
「、聞かなくて良いです」

 こんなにしおらしい宮地先輩は初めてだ、と思った。いつもは強引だし言葉が少ないことが多い。それが何だか可愛らしくて名前は照れながらも宮地の首筋に唇を押当てた。宮地の大きな手のひらがようやく胸に到達した。高校に上がったときは日本人の平均で少しもの足りなかったそこは、恋をしたと同時に始めた努力によってワンカップ進歩した。一般にちょうどいい、と評されるので謙虚に見てもがっかりされることはないと思うが…とまた名前の胸中に不安がよぎる。
 宮地は初めて触る女性らしさの象徴に欲望が満ちて、貪欲に沸き上がる欲求の感覚に苛まれていた。先走ってしまいそうになる、逸る気持ちを理性で押さえつけて堪能する。宮地は覚悟を決めたように、唇を一度一文字に結んでから服、可愛い。たったそれだけ言った。本当は名前が部屋に入ってすぐに言おうと思っていたのだが、照れくさくて戸惑っていたらタイミングを逃してしまったのだ。名前は宮地の肩に手をついて寄りかかっていた身体を立てる。見えた表情は花がほころんだような笑顔で、可愛らしい。
 パーカーのチャックを下ろす。タンクトップを脱がす。一枚一枚はぎ取っていくのは宮地に興奮を与えた。現れた貝殻のようなデザインの白い下着は清楚で、名前のイメージによく合っていた。ブラジャーごしに再び胸に触れる。宮地の長い指はカップからはみ出して谷間の素肌にも到達する。肌と肌が触れ合って、胸が高鳴る。次第にお互いの息が荒くなっていった。ハァハァ言って気持悪くないだろうかと宮地は気にしたが、当の名前は宮地に触れられているという事実に一杯一杯になっていたので、そんなこと気にとめていない。宮地は胸から手を離して抱きしめる。腕を背中に回したついでにブラジャーのホックを外そうとするがこれが上手くいかない。

「あー、クソ」
「宮地先輩、気にしないで下さい」

 名前は宮地の手を取って、後ろ手にブラジャーのホックに導いて一緒に外す。その後に名前はついに恥ずかしくてたまらなくなって、肩からストラップを抜かないまま宮地に抱きついて肩口に顔を埋めた。

「恥ずかしい…」
「やめるか?」
「やです」

 宮地が逃げ道を用意する。宮地だってお互い求め合って結ばれたいと思っているのだ。しかしそれをすぐに名前は却下すると、女は度胸と言わんばかりにブラジャーを取って、ついでに立ち上がってパーカーとお揃いのショートパンツも脱ぎ捨てた。立った名前につられて立ち上がった宮地も、案外大胆な名前に触発されてTシャツを脱いだ。
 名前が照明を暗くしてからベッドに仰向けに寝そべる。名前のベッドは昔名前があまり寝相がよろしくなかったので大きめで、多少足は曲げて貰うことになるだろうがなんとか二人で眠れるサイズだ。名前はいわゆる手ブラで宮地が来るのを待っている。宮地はそんな名前の上にまたがって露出した肩や鎖骨にキスを落とす。手を柔らかく剥いでふくらみに手を乗せる。宮地の想像以上にそこは柔らかく、たやすく宮地の指が沈む。もみながら、もう片方に顔を寄せて乳輪を舐めとる。名前が甘いうなり声を短くあげて、そしてそこはすぐにたちあがった。赤子が母親にするように吸ったり、指先で弾いたり。宮地は存分に胸を堪能する。

「ん、宮地先輩、ゃっ」
「好きだ、名前、好きだ」
「ったしも、好きです」

 色っぽい声を上げる名前に宮地は興奮してどんどん煽られる。名前はそれを恥ずかしく思いながらも満たされていった。何度も触れられていくうちに、下着がおりものや経血で濡れたときのような不快感が広がる。それが濡れる、ということなのだと分かっていた名前は今更ながらイケナイことをしている感覚に苛まれる。
 名前に覆い被さるようにしていた宮地が上体を起こして名前を見下ろす。ショーツしか身につけていない姿は宮地の加虐心をくすぐる。手のひらを胸から腰に滑らせて、そのまま身体の淵を沿って太腿に触れる。外側から指をさらに滑らかな肌に滑らせて内股に触れる。名前はいやいやと首を横に振るが、宮地はショーツに指を引っかけて下ろす。

「ほら、腰あげろ」
「はうぅ……」

 足からショーツを抜き取ると、宮地は名前の横にズレる。頭を撫でて耳元で安心させるように話しかけて、名前に足を開いて膝を立てるように促す。ゆっくりだが名前は自分で足を開いていった。自分でさせる。その支配している感覚が宮地をさらに煽る。

「ん、濡れてるな」

 思わずホッとして声に出すと、名前から抗議の意を込めた手のひらが飛んで来て肩の辺りにベチンと当たる。大して痛くなかったが、イテっと声を上げて宮地は不機嫌な顔を作る。それでもそれは作ったものであって、すぐにほころぶ。

「とりあえず、力抜けよ?」
「は、はい…」

 安心したとはプライドが邪魔して言えず、結局次に進んでしまうことにした。そこに触れると愛液で濡れていて、ぬるぬるしていた。宮地はそのまま上下に指を滑らせる。上にある突起のような所を通ると、むず痒そうにしていた名前から嬌声が上がって思わず口が弧を描く。それが面白くて何度かそれを繰り返していると名前が恨みがましそうな目で見つめるし、腰を厭らしくくねらせるので、たまらなくなって宮地は指を一本だけ挿れた。

「なんか変な感じです。なんか入ってるみたい」
「まあ、指入ってるしな」
「何本ですか?」
「イチ」

 名前は気が遠くなった。何となく一本だけでいっぱいな気がするのだ。二本くらいは挿れるだろうし、宮地のものはきっともっと太い。入るだろうか、と思ったが、宮地が指の動きを始めて慣れて来るともっと欲しいと思うようになって来た。それを口にすることは憚られて名前は宮地の首に腕を回してしがみつき、動きに合わせて腰をくゆらせた。宮地は抱き寄せられたままキスをして、指を増やす。名前の潤いは増して、くちゅ、と音を立てた。

「あッ、音やだ」
「鳴るんだよ、勝手に。名前が濡らすから」
「ちがッ、先輩が触るからぁっ…」

 しばらくそれを繰り返して、どこまでしたらいいのか分からなかった宮地は少し長めにして指を抜く。名前にとってはかなり長かったようで、慣れない快楽に疲れて少しぐったりとしていた。ふにゃっふにゃ、と宮地が意地悪く笑う。名前がまた宮地の肩を叩いてむくれると、宮地はロマンティックに至る所にキスを落とす。それから一度ベッドをおりてハーフパンツと下着を一緒に脱いで、ここに来る前に念のため買っておいたゴムを取り出した。
 ゴムを見てから名前は避妊の必要に気付いてあ、と声を上げる。それと同時に宮地の勃ち上がった男性器を初めて見た。本当に上むくんだなぁとか、初めて見たなりに少し興味が出た。宮地は丁度いくつか繋がったゴムをぴりぴり切り取っていた。そっと起き上がって名前は宮地のそれに手を伸ばす。指先が触れると、宮地の身体が震えた。名前は悪いことをしてしまったと、叱られる前の子供のように縮こまった。

「痛かったですか?」
「いや、たんに驚いただけだ。えらい積極的だと思ってな」
「触られてばっかりじゃなくて、私も宮地先輩のこと気持ち良くしたくて…。でも慣れないことはするもんじゃないですね。これから教えてくださいね」

 またもやプライドが邪魔して俺も慣れないことしてるけどな、とは言えなかった。おう、なんて目は合わせられなかったが力強く頷いてしまって、ほんの少し自己嫌悪。その間にも手は動いていて、自分の余裕のなさを証明していた。
 宮地はゴムをつけた性器を素股のように滑らせた。オカズの時に観て以来、ちょっとした憧れのようになっていたのだ。ん、と甘い声を上げて名前は再び恨みがましく宮地を睨みつける。これ以上じらしてくれるなと。

「力抜けよ?」
「はい」

 名前は大きく深呼吸をした。息を吐いた時に宮地は押し込んだ。名前は途端に息を詰まらせて、眉間にしわを寄せる。痛いか?と宮地が聞く。名前は目をそらして、少し迷ったように視線をさまよわせる。

「痛くない、とは言えないです…けど、いつかは絶対通る道ですし、それが宮地先輩なら…」

 私はそれで良いです。顔はそっぽを向きながらでも、視線だけは名前は宮地に向けた。それにぐっと来てしまった宮地は思わず腹筋に力を入れてしまい自身をほんの少し揺らす。ぐっと押し込んで中を堪能する。柔らかいが時折収縮して締め付けられる。その感覚はたまらなかった。
 宮地は抽送を繰り返す中、予想を遥かに上回って登りつめていくのを感じていた。緊張すると到達しにくいものだが、自分の下で健気に受け止め少しずつよがる素振りを見せる名前が愛おしくていじらしくて。

「クッソ、お前可愛すぎんだよ 轢くぞ」
「あ、やっ、あっあっ」

 つい癖の暴言が飛び出すが、名前はそれを宮地らしいとふにゃりと微笑み受け止め、くったりした様子で腕を持ち上げ首に回す。名前と宮地の身体が余すところなく重なり合う。汗ばんでしっとりした肌が密着度をより高める。

「あああっ、だめ、やっ!」
「どこがヤなんだよ あ"あ?」

 肌がぶつかり合う音の速度が上がる。きゅう、と狭まった名前の中に宮地はぐっと眉間にしわを寄せ、堪えつつもラストスパートをかける。
 押し寄せる快楽に何もかもが分からなくなっている名前は、押し込まれるたびに嬌声を零す。それは言葉にすらなっておらず、それすらも宮地を高みに導く。

「イっく…の?」
「はあ、黙ってよがってろ」

 嬌声の合間に絞り出された言葉にはまた暴言が返答として飛び出した。名前は宮地がまた更に打ち付ける速さを上げたので、彼の言葉どおり"黙って" "よがる" 互いにその矛盾に気づくことはない。
 やがて宮地は歯を食いしばり、喉の奥で呻き声を漏らしながら果てた。名前は突かれなくなって生まれた余裕からか、案外冷静な頭で自分の中で脈打つ感覚に神経を研ぎ澄ませていた。

「ビクビクしてる…気持ちよかったですか?」
「はぁ…っせ」

 宮地は力なく笑う名前の前髪を払い現れた額にデコピンを食らわせる。その表情は非常に穏やかで普段の笑みとは雲泥の差がある。二人でふっと笑い合って宮地は眠たそうにする名前の額に、今度はキスを落とす。

「おやすみ」
「ふぁい……」


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