07.任務に同行します。
雪解けにはまだ早い季節。陽の反射で村の家々に積もった雪が一層眩しく輝いていた。
鎹鴉に導かれて向かった任務。ハルが指定の場所へ着くと、まるで誰かを待ち構えるかのように実弥が立っていた。
ハルが実弥と会うのは熱を出して蝶屋敷に世話になっていた日以来であり、薄れかけていた煩悩がハルの脳裏に浮かんで微かに顔が熱くなる。それに、任務で会う事など実弥に継子を申し出てから一度もなく、驚きと嬉しさで実弥に駆け寄る足が自然と速くなった。
「実弥さんっ、どうして…まさか同行ですか?!」
「……まぁそんなとこだァ。着いて来い」
周りを見渡しても、ハル以外の同行者は見当たらず、柱との同行は珍しくないとは言え、複数名の隊士がいるのが当たり前だった。
奇妙な状況に小首を傾けながらも、足早に歩く実弥の後ろを追い掛けるように小走りで着いて行く。
鬼の情報を全く教えられていなかったハルは、歩きながら実弥にそれを聞くも、曖昧な返事が返ってくるだけだった。そして気づけば、村から少し離れた森に入って辺りに
そこに静かに佇む家屋の前で足を止めた実弥。訳が分からずその家屋と実弥を交互に見つめるハルに、漸く実弥の視線が降りてきた。
「この界隈で人が消えてるとの情報が入った。鬼の仕業が濃厚らしい。ここはその調査の拠点だァ」
「調査とは……具体的には何をすれば?」
今までハルが行った任務は、向かえば鬼がいてそれを始末するというものだった。多少調べることもあったが、拠点を構えてまでその地に留まることはした事がなかった。
それ故に調査という言葉に何をすべきなのか分からず実弥からの言葉を待つも、実弥は何を言わずに家屋へと入っていく。後に続いたハルの目に飛び込んできたのは、入口すぐの上がり
「今からこれに着替えろォ」
「あのぉ……よく分かりません! これは一体どういう、」
「調査だァ」
「それは聞きました! どうして着物を着るのかを聞いてます。隊服の方が動きやすいし、この姿で日輪刀を持ち歩いていたら目をつけられます」
「日輪刀は問題ねェ。この辺りに
「そこまで分かっているのなら、」
「行方不明になるのは結婚したばかりの女だ。奴はなかなか姿を見せねェらしい。だから俺とお前で、」
「ふふふ、夫婦になるのですか!? わたしと実弥さんが夫婦に…なれるの?」
「夫婦のフリをするだけだ馬鹿がァ! それにこれは任務だァ!」
「分かってます、分かってますよ! 嘘でも任務でも何でも嬉しいんです。実弥さんのそばにいられるんだから」
柱か関わるほど重要な任務なのだろう。失敗は許されない。それは重々承知してはいるもののハルは緩まる頬を引き締めることが出来なかった。
「嫁……っつーより、ガキだなァ」
「もうっ、酷いです! 実弥さんは、まぁ、素敵ですけど…釣り合いませんか?」
「いや、いいんじゃねェか」
お互い用意された着物に着替えた。喉を鳴らしながら笑う実弥は、ハルの頭に手を置く。
しっかりやれよォ、なんて普段とは違う格好で、普段よりも柔らかな表情で言うから、ハルの顔が赤く染っていく。
偽りだとしても、この家で実弥と夫婦になって生活をするのだと思うと、ハルの心臓は高鳴りを止められなかった。