01.女の花園
煌びやかなネオン街。閑散とした昼間とは裏腹に、夜になると輝きだす街。嘘に塗れた街。
そこには、たくさんの蝶がいた。
まるで闇夜を照らすように自らを輝かせている女。そしてその綺麗さに群がる男。
滑稽だと思いながらも、そこから繰り出される物語を見るのは悪くない。
「銀座の一等地に3号店を作るよ。その名もシーナ。選ばれた人物だけがその高みに行ける。さぁて、誰がそのプラチナチケットを手にするかな」
始まりは、オーナーである五条悟のこの言葉だった。
高揚した顔を見せる者、行くのは自分だと言わんばかりの者、怯える者、諦める者。その様々な表情を見ながら、CLUBローゼのナンバー1でもあるレイラの顔を見つめた。
どんな時も動じないその顔に心が震える。これから始まる女達の戦いを想像するだけで恐怖心さえ覚えてしまうというのに、彼女はいつだって凛としていた。
「勝負は正々堂々と。恨みっこなし。君たちの頑張り、僕に見せてよ」
サングラスを上げ、ニヒルに笑う五条オーナーに女達の闘争心が掻き立てられる。恐らくそれも計算済みだろう。
CLUBの聖地・銀座で働くとなれば、給料が倍になると五条オーナーが話を続けた。それに目を輝かせる者も当然いるが、蝶達にとってはそれがすべてではない。
新店で働くことになれば、この世界で名を馳せることになる。それに五条オーナーや七海店長達も贔屓するだろう。それを狙っている人がいるのも確かだった。
「CLUBローゼ、マリアの中から、この3ヶ月の売上を競ってもらう。あ、この近隣のクラブからもそれに見合うキャストがいれば引き抜いて連れてっちゃおうかな!だから決して気を抜かないこと。そういうの全部分かっちゃうからね」
まさかの他店からの引き抜きもあると聞いて、さすがにキャストが騒がしくなる。この人は女心を騒ぎ立てるのが本当に上手い。だからオーナーとしての適性があるのだろうけど。
系列店だけであればギリギリ食い込めるとしても、他店も含めるとなればぬるま湯に浸かってはいられないだろう。
「さ、開店準備して!今日一斉に客にも宣伝するからそのつもりで」
五条オーナーが両手を叩く。それが解散の合図だ。
それぞれが控え室へと散っていく。みんな手にスマホを持ち、今日の営業を始めた。こんなに必死になっているキャスト達は久しぶりに見た。
私はレイラの元へ行き、今日来る予定の客と、近々イベントが控えている客の名前を耳打ちする。口許を緩ませて、「りょーかい」と微笑むレイラからはいつもの甘い香りがした。
「少しいいですか」
背後から聞こえた柔らかな声。
胸の奥が大きく揺れたのを隠し、レイラの元を離れてキャストの控え室から離れた事務室へと向かった。