03.馴染みの常連客

「ようこそローゼへ」

そんな声と共に、蝶の蜜を吸いに来たであろう男共がこの煌びやかな世界へと脚を踏み込んで来る。
どんどん飛び交う指名に、キャスト達が次から次へとテーブルへと移される。ちょうどいいタイミングでテーブル移動をさせる付け回しのプロ、黒服のナナバとハルが総出でインカムの指示を飛ばす。指示を貰ったボーイ達がせかせかとキャストを誘導していく。

「レイラさん。下に不死川様がお待ちの様です」
「分かったわ」

ハルの言葉に私はスカイブルーのロングドレスを纏って立ち上がると、白のスパンコールのストールを巻いてフロアを突っ切った先にある出入口から外に出ると、お馴染みの顔の不死川実弥を見て深く頭を下げた。

「不死川様、お待ちしておりました」
「よせよォ、いつも通りでいい」

クシャっとペトラにセットして貰ったアップした髪を撫でる実弥の腕にふわり掴まる。

「一応の挨拶です。あんまり親しくしていると枕やってると思われるのでね」

警視庁公安課に所属する不死川実弥。時間の空いた時や、大事な打ち合わせの時は必ずうちを利用する。
今日はたまたま時間が空いたからって来てくれた。
刑事だというのに相変わらずスーツも着崩していて。彼がネクタイを締めていた所をただの一度も見た事がなかった。第三ボタンまで開かれている為、豊満な胸板が見ろ!と言わんばかりに目に入る。そこをツーっと指でなぞると実弥が「おい」って脚を止めた。

「あのね、銀座の一等地にうちの系列の3号店が出店される事になったの。だから貴方も近いうちにそこで迎え入れる事になると思うわ」
「またすげぇ場所を手に入れたもんだなァ五条は。どーせそっちに行く条件とかあんだろ?」

ピクリと片眉あげて分かった風な顔をする実弥。流石は刑事、飲み込みが早い。でも常連なら五条オーナーが考える事ぐらいお見通しなのかも。
クルリと垂れた毛先を指に巻き付けて歩く私は、そのまま実弥の肩にコロンと頭を乗せた。

「売上上位20名がCLUBシーナ行きのプラチナチケットを貰えるの」
「はっ、なるほどなァ。五条の考えそうなこった。で、レイラは勿論一位通過すんだよなァ?」
「勿論そのつもりです」
「その自信に俺も掛けてやらァ。おい、エンジェルブルーのタワー入れろォ」

カランと実弥と一緒にお店の入口に入ると、すぐ側にいたハルに声をかけて高級シャンパンで作るシャンパンタワーを注文してくれた。

さて、ナンバー1の実力を見せてやろう!と意気込んで私は実弥をテーブル席に座らせた。


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