05.お店のバック

お店が開店して二時間が過ぎた。
あの後、サクラのテーブルとリンのテーブルからもシャンパンタワーが注文され、私もそろそろもう一度タワーを上げたいと思っていたんだけれど、それを出せる太客がまだ顔を見せていない。数十分で別のテーブルに移動し、常連客の相手をしているけれど、なかなかそれに見合う太客が来ない。お金もってない人にタワーを上げさせるのはちょっと可哀想だと思ってしまう私は、本当ならこの仕事に向いていないのかもしれない。
でも今の所この仕事に生き甲斐を感じていて、ナンバー1の座を誰かに譲る気はさらさらない。なんとしても、ハルと一緒にシーナへ行かなければ。

「失礼します。レイラさん少しよろしいでしょうか」

膝まづいてナナバが私の前に手を差し出す。太客とか、重要な客が来るとこうしてお迎えのポーズを取る黒服達。私はナナバの手を取ると、隣に座っていた実弥に向かって「ごめんね、少し席を空けます。ヘルプ呼ぶから待ってて」そう言うと「あァ」素直に受け入れてくれた。
すぐに私はナナバに連れて行かれて奥の従業員専用の通路へと行く。
七海店長と五条オーナーがそこにはいて、これはどんな大物が来るのか?と苦笑い。

「おーレイラ。今からリヴァイが来るからお迎え行ってね」

五条オーナーの言葉にドクンと心臓が脈打った。
この界隈を取り仕切っているマフィアのアッカーマン組は、うちの店のバックとして構えてくれている。元々夜の店には揉め事があった時に解決してくれるバックを付ける事が多く、うちの五条オーナーのバックにはあのアッカーマン組が着いていた。そこの頭であるリヴァイが来るとなると、どんな太客を差し置いてでもナンバー1が相手をする決まりだった。
こうして、定期的に見回りに来るのもリヴァイ達の仕事らしい。勿論何度もお相手をした事はある。その度にいつも魅了されていた。

「承知しました。すぐ参ります」

私はパチンと指を鳴らすとすぐにハルがやってくる。

「リヴァイ様のお迎えに行くから藍沢も一緒に来て。それから、実弥と他の常連の所にはたぶん戻れないからヘルプでダメそうなら素直に話して今日は帰ってもらって」
「分かりました、すぐに」
「ペトラ!メイク直して!」

厨房のペトラに声をかけると走ってやってくる。
それと同時、七海店長と一緒に指示に従うハルは、直ぐに実弥のテーブルに行き小さく耳打ちする。
マフィアが来るのに公安がいたらよろしくないと判断したであろうハルは、すぐ様実弥をお会計キャッシャーのマルコの所へとご案内した。相変わらずいい判断してるわね…なんてクスッと笑った。

「レイラさん、メイクどこも崩れてないですよ」
「グロスの色変えて。リヴァイさんは自然な色を好む」
「あ、そーゆう事ですね、了解です」

客と呼んでいいのか分からないけど、リヴァイを怒らせたら店の存続すら危うくなる。今夜はリヴァイに尽くすと心に決めた。

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

マルコの声が微かに聞こえたから、実弥が帰ったんだと分かった。
その5分後、リヴァイを後部座席に乗せたメルセデスが間もなくお店の下に到着すると連絡が入る。私はハルを従えてお店の階段を駆け下りたんだ。

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