06.呼び方一つ

ザーっと人の群れが一列に並ぶ。お店の前に黒いメルセデスが音もなく止まると、後部座席のドアが開けられてそこから白いスーツ姿のリヴァイが白ハットを被って出て来た。
すぐに頭を下げて出迎える。

「リヴァイ様お待ちしておりました。ローゼのレイラでございます」

隣でハルも頭を下げてリヴァイを迎える。

「あぁ」
「こちらへどうぞ」
「待てゆき乃、同伴してやる」

本名を呼ばれてドキンとする。そうだこの人は…この人だけはお店でも私をゆき乃と呼ぶ。だからいつも調子が狂うんだ。一度たりとも私を源氏名のレイラと呼んだことはなかった。それをみんな分かっていて黙認していた。
リヴァイの腕を掴んで一緒に店の中に入ると、七海店長と五条オーナーが揃って出迎えた。

「同伴だ」

一言そう告げるリヴァイに、お店の中の視線が一瞬で飛んでくる様だった。キャスト達が皆、軽く会釈をする。

「ご案内します。こちらへ」

オーナー自ら上のVIPルームへと案内する。大フロアの袖にある螺旋階段を上がったそこがVIPルームになっていて、リヴァイをこの場所以外に通すことは許されない。

「ほう、今夜は賑わってるな」

シャンパンタワーを見てそんな一言。実弥が帰った事で私のタワーは片付けられていたけれど、サクラとリンのタワーはまだ健在で、ピンクとイエローのボトルが煌びやかにえている。

「リヴァイさんはご存知ですか?3号店のこと」

黒のソファーに腰を下ろしたリヴァイに、いつものお酒を作りながらそう聞く。
脚を組み替えてハットをソファーに置いたリヴァイは、スーツの内ポケから出したPeaceを口に咥えたからスッとジッポで火をつけた。

「銀座のシーナか。知っている。行くんだろ」
「行きます!必ず」

フッて笑うとリヴァイはまた脚を組み替えた。
彼の吸うキツい煙草の香りが髪にまとわりつく。ソファーの背もたれに腕をかけて座っていたリヴァイは私の髪にそっと触れた。潔癖症のこの人が人に触れるのは極めて珍しい。

「いい意気込みじゃねぇか」
「オーナーの差し金でしょうけど。ですのでキャストも気合いが入ってるのは確かです」
「それでシャンパンタワーか?」
「はい。私も最初に入れていただいたら、どんどん上がっていった感じです」
「なら俺も入れよう。ソウメイのロゼでどこより高いタワーを造ってこい」

ボーイにはそれぞれ自分の担当キャストがいて、私の担当であるジャンにそう告げるとまるで敬礼のように「はいっ!」と答えて階段を下りて行った。それと同時にリヴァイが軽く手を挙げると、近くにいたリヴァイの下っ端達がその場から去った。
残ったのは私と五条オーナーのみ。ここからが本題だとゴクリと喉を鳴らす。

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