April mist.NOTE
▽2020/11/03(Tue)
針本
運動の秋、今日は絶好の体育祭日和だ。つってもうちの学校のじゃない。
「次は借り物競走だってよ」
「へー、借り物とかだりーべや」
授業をサボって他校のグラウンドを覗きに来てるのはオレらだけじゃない。待宮サンや伊尾谷サンもいたから、少なくともどやされることはないはずだ。
「のう針本、あの子ちょっとよくね?」
「どの子じゃ?」
「ハチマキをカチューシャみたく結んでる子」
おお、可愛い。じゃけど、
「ありゃあ彼氏おるじゃろー」
「そうかのう」
「でもめっちゃ可愛い」
うちは男しかおらんからのう、と隣にいたヤツがため息をつく。
「もう女子なら誰でもええわ」
「同感じゃ」
その時、
「あの、」
「は?」
突然、息を弾ませた女子に話しかけられ呆けた声が出た。
「は、針本くん!一緒に来てもらえないですか」
借り物のお題がカチューシャをしてる人で、そう言われた瞬間「行ったれや」と仲間に尻を蹴られた。
「イテェ!」
「他のヤツらとっくに走りよるぞ」
彼女の腕を掴むとオレは「行くぞ」とうながす。
「あ、はい!」
必死になって走りながらちら、と横目を向けた。
「(足遅ぇ、カワイイ・・・)」
オレに話しかけんの緊張しただろうな。そう思うと、胸の奥がキュンとした。
結局ゴールラインを切ったのは最後から2番目で、観客席からは待宮サンらが飛ばすヤジが聞こえる。
「エッエッ、針本よかったのう!」
「羨ましいぞ針本ォ!」
あの、と彼女が小さな声で言った。
「来てくれてありがとう」
「イヤ、全然!」
あんさ、とオレは話しかける。
「あっちにカチューシャみたく巻いとる子いるけど、なんでオレに声かけたんじゃ?」
「それは、・・・」
目の前の子は顔を真っ赤にして俯いている。
そういえば他校なのにオレを名前で呼んでいたことを思い出し、心臓がバクバク鳴り始めるのが分かった。
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