トックン×カイシ×トウギジョウ
それから5人は歩きながら、今後のことを話し合った。まずゴンはヒソカに会って4次試験の時の借りを返したいらしい。ヒソカの居場所を知らないと言うゴンにクラピカが「私が知ってるよ、ゴン」とため息をつきつつ応える。最終試験、ヒソカは試合放棄する前にクラピカの耳元で呟いていた。“クモについて、いいことを教えよう ”と。クラピカが講習後にヒソカを問い詰めるとヒソカは『9月1日、ヨークシンシティで待ってる 』と言ったそうだ。
「9月1日……半年以上先だね。何かあるの?」
「世界最大のオークションがある!」
マヤの問いかけにレオリオが答えた。キルアは首元のペンダントを無意識に触りながら、レオリオの言葉に反応する。
「世界最大のオークション...…なるほど。ヒソカがそんな場所を選ぶなんて、何か企んでるに決まってる。……でも半年あるなら、その前にやることがあるよな」
彼はマヤの方をちらりと見て、少し声のトーンを落とす。
「俺たち、このペンダントの謎を解かないと。見ろよ、これ...…反応してる。二つで一つなのかも。マヤ、試しに二人で同時に手で包んでみないか? 何か起きるかもしれない」
キルアは突然思いついたように目を輝かせる。立ち止まり、自分のペンダントとマヤのものを近づけてみる。二つが微かに共鳴するように青く光る。
「え? うん、いいけど……二つで一つ……かあ……」
マヤはキルアの言葉に照れている。レオリオは「今のすげえ口説き文句だよな……」と言ってゴンが「だよね……」と言った。
「でも確かにそうかもね、一緒に入ってたし! じゃーいくよ、キルア!」
マヤは慌てて話題を変えようと声を上げ、キルアと一緒に手で包み込む。キルアとマヤの手が二つのペンダントを包み込むと、青い光が強く脈打ち始める。その光は二人の手の間から溢れ出し、周囲を幻想的に照らし出した。
「おお...…! これ、マジでヤバい反応だな...…つーかレオリオとゴン、余計なこと言うなよ!」
視線はペンダントから離さず、頬は微かに赤みを帯びている。キルアは息を呑み、目を見開いて光る宝石を見つめる。その青い光に照らされた顔には、驚きと期待が入り混じっている。ペンダントの光が二人の間で渦を巻き、何かのイメージが二人の脳裏に同時に浮かぶ。
「マヤ…...お前も見えるか? なんか...…場所みたいなものが...…。星の形をした湖...…それと、その湖の底に何かが沈んでる...…これって、次の手がかりかもしれない」
キルアの瞳孔が開き、まるで別の世界を見ているかのように遠くを見つめる。
「……盛り上がってる所すまないが、私はここで失礼する」
「えっ?」
ゴンとマヤの声がハモる。クラピカが「キルアとも再会できたし、私は区切りがついた。オークションに参加するためには金が必要だしな。これからは本格的にハンターとして、雇い主を探す」と言ってレオリオが「さて…オレも故郷へ戻るぜ。やっぱり医者の夢は捨てきれねェ。これから帰って猛勉強しねーとな」と言った。キルアは仲間たちの決意を聞き、一瞬だけ寂しそうな表情を見せたが、すぐに元の態度に戻る。
「ふーん、さっさと切り上げるんだな。まあ、それぞれやりたいことがあるんだろ。クラピカ、お前は団長を見つけたら知らせろよ。レオリオも、医者になったら俺たちを特別料金で診てくれよな」
彼は肩をすくめながらも、目はどこか寂しげだ。キルアはペンダントを握りしめ、マヤの方へと一歩近づく。
「俺たちは、このペンダントの謎を追う。星の形をした湖か...…地図でそんな場所を探せばいいんだろ」
彼は髪をかき上げ、マヤの目をまっすぐ見つめる。
「お前は...…どうする? 俺と一緒に来るか?」
「オレも行くよ! そのペンダントの事気になるし」
「うん、私も行くよ。このペンダント二つで一つなんでしょ? でもその前に、先に三人で特訓しない? ハンターになったばっかりなんだしさ」
5人は互いの顔を見合わせ、笑顔で相手を激励した。
「また会おうぜ」
「そうだな、次は……」
“9月1日、ヨークシンシティで!!”
キルアは人差し指を立てて口元に当て、しばらく考え込むように目を細める。
「特訓か。それならピッタリの場所がある。天空闘技場だ。金も稼げるし」
「天空闘技場いいね!」
「そうと決まったら早速行こう。それが終わったら星の湖に行くんだからな!
そう言いながら彼の目は期待に輝いていた。三人は早速飛行船に乗船するチケットを購入して天空闘技場行きの船に乗り込んだ。三人で桟橋に立って海を見ながらマヤは言った。
「そういえば、二人にまだ言ってないことがあるんだ。私、フルネーム、マヤ=フリークスっていうの」
「えっ!? オレと同じ苗字!?」
それを聞くなりゴンが驚いた顔をして身を乗り出す。キルアの目が丸くなり、マヤとゴンを交互に見つめる。
「マジかよ!? フリークスって...…お前たち親戚とかなのか? 確かに、よく見ると似てる部分あるかも...…でも、なんで今まで言わなかったんだよ」
彼は腕を組み、二人の顔の特徴を比較するように観察する。風が強く吹き、キルアの銀髪が揺れる。彼は少し口をとがらせながらマヤの方へ向き直る。*
「えー、全然似てないよ。だって血は繋がってないからね。私……捨て子だって話した事あったよね?」
「えっ!? マヤ捨て子なの!?」
ゴンはそれにも驚いていた。あれ、話してなかったっけ。キルアは海面に反射する陽光を見つめながら、声のトーンを落とす。
「秘密にしてたってことは、何か理由があるんだろ? まあ、俺だって家族のことはあんまり話したくないから...…無理に聞くつもりはないけどさ」
「うん、ジンさんが私を拾ってくれたんだ。それで、養子縁にしてもらって……弟子みたいな感じかな……。ジンさんに試験中には言うなよって言われてて……ごめんね」
「お父さんを知ってるの!? 今どこにいるの!?」
ゴンはびっくりしてマヤに詰め寄る。キルアは驚きを隠せない様子で、口をポカンと開けたままマヤを見つめている。
「お前、ゴンの親父を知ってるのか...…しかも弟子って。なんかすげぇな...…オレが知らない世界がまだまだあるみたいだ」
彼は髪をかきあげながら、複雑な表情を浮かべる。海風が三人の間を吹き抜ける。キルアはゴンの興奮した表情を見て、少し微笑んでいた。キルアは手すりに肘をついて、遠くの水平線を見つめる。
「でもさ、ジンっていう人はどんな奴なんだ? ゴンが探してるくらいだから、相当のハンターなんだろ?」
「相当にすごいハンターらしいよ! 私も居場所は知らないんだ。……ジンさんを探す。それが師匠から弟子への課題なんだって」
「そうなんだ!! じゃあ、マヤも目的はオレと一緒なんだね!」
「フーン……なら天空闘技場で特訓して、強くなったら...…その親父さんに会いに行くのもいいかもな。オレも付き合うぜ」
「ありがとうキルア。三人で冒険できるの、すごく嬉しい! 絶対見つけようね!」
キルアは海を見つめながら口元に小さな笑みを浮かべる。ゴンはキラキラと目を輝かせていた。
「ははっ、師匠からの課題か。変わった親子関係だな。でも面白そうだ。ジンって奴、一体どんなやつなんだろうな」
「ふふっ、そうだね。ジンさんは面白い人だよ。得体のしれない私を簡単に拾うくらいだもん」
「血は繋がってないけど、マヤはオレのお姉さんってことだよね!? なんかすごいや! ねえジンの話もっと聞かせてよ!」
「へぇ、そうなのか。お前の師匠で、ゴンの親父か...…。あそこで強くなって、それからジン探しだ。楽しみが増えたな。今はとにかく特訓あるのみだな」
ゴンは興奮気味に拳を握っていた。キルアは両手をポケットに突っ込み、マヤとゴンを見比べる。その時船が大きく揺れ、キルアはバランスを崩すマヤの肩をとっさに支える。
「おっと。気をつけろよ」
「あっ、ありがとう……あっもう着くみたいだよ! 行こう!」
キルアに肩を支えられ、微かに頬を染めて目を逸らした。そして取り繕うように天空闘技場を指差す。マヤの頬が赤くなったことに気づき、キルアも少し照れた表情になる。
「な、なんだよ...…別に大したことじゃないだろ」
キルアは話題を変えるように、早足で船の出口へ向かう。彼は天空闘技場の巨大な塔を見上げ、目を細める。
「あんな巨大な塔でどんな強者と戦えるか考えるだけでゾクゾクするぜ。オレたちがどこまで登れるか勝負だな! よし! まずは200階以上を目指そうぜ! そこからが本当の勝負らしいからな。ゴン、マヤ、行くぞ!」
しかしゴンが頬を染める二人を見てくすっと笑った。
「二人とも顔赤いよ! 怪しいなー!」
「ち、違うよ! 今のはびっくりしただけ! わ、私、まだ200階から先って行ったことないんだ〜!」
マヤは焦って誤魔化そうとし、キルアは顔を赤らめたまま、ゴンの方を睨みつける。
「うるせーな! お前こそ変なこと言うなよ!」
彼は咳払いをして平静を装い、マヤの方をチラリと見る。
「200階から先か...…まぁ、当たり前だけど強いやつほど上にいるよな。楽しみだ」
「マヤ! キルア! オレ達三人で行こうね!」
「うん! よーし特訓開始だ! がんばろー!」
天空闘技場を見上げて、マヤは楽しげに笑った。そして三人で天空闘技場のエントランスに向かって歩き始める。キルアは興味津々な表情で、両手をポケットに入れながらマヤに尋ねる。
「特訓のプランとかあるのか? 念能力とやらを身につけるんだろ? オレ、こういうのは初めてだからよ。でも自信はあるぜ。ゾルディック家の修行は世界一厳しいからな! どんな特訓でも耐えてみせるよ」
「んー、とりあえずまずは200階を目指さないとだよね」
ゴンとキルアとマヤの試合は一瞬でおわり、一気に50階まで進む。三人でエレベーターを降りると、先ほどモニターで見たばかりの道着姿の少年と出会った。少年は「押忍」と言って頭を下げて通り過ぎていった。
「この調子なら200階まであっという間かもね!」
「こんなの楽勝だな。50階なんてウォーミングアップにもならねーよ」
キルアは軽やかに肩を揺らし、余裕の表情を浮かべる。そして先ほど通り過ぎた少年の背中を見て、首を傾げる。
「あいつ、なんか強そうだったな。まぁ、今の俺たちなら問題ないだろうけど。このペースなら200階まで一日で行けるんじゃないか? そこからが本番だろうけどさ」
キルアはマヤとゴンの肩を軽く叩き、自信満々に笑う。そのあと急に彼の表情が真剣になり、前方を見つめる。
「でも油断は禁物だぜ。上に行くほど相手は本気で来るだろうしな。特に200階からは……」
「うん、今のままだと200階から先に行くには……。私も、もっと鍛えたい。二人と冒険したいから」
マヤはキルアとゴンの手を取って決意を口にした。モニターに『キルアVSズシ』と表示される。
「あっ、さっきの少年だ! キルアなら大丈夫だと思うけど、一応気を付けてね!」
「うん! オレたちあっちで応援してるから!」
キルアは自信たっぷりに肩をすくめ、ズシの名前を見て鼻で笑う。
「心配すんな。さっきの押忍くんなんて、目にも止まらないスピードで倒してやるよ」
しかしリングに向かう途中、マヤが自分の手を握ったことを思い出し、頬が熱くなるのを感じる。彼は慌てて手を振り、冷静さを取り戻そうとする。
「ま、まぁ...…二人と冒険するためにも、ここで変な負け方はできないしな」
キルアはリングに上がり、道着姿のズシと向き合う。相手は無表情で「押忍」と一礼してくる。キルアは軽く頷き返すと、戦闘態勢に入る。
「いくぜ、押忍くん。本気で来いよ? 手加減なんていらないからな!」
「キルア! 頑張って!」
「キルアー! 絶対勝てよー!」
観戦席に座るマヤとゴンはキルアの応援しながら見守る。マヤはまっすぐにキルアの顔を見て手を振る。試合が開始してすぐにズシのいた場所の背後にキルアが立っており、ズシが地面に伏せられた。審判のクリーンヒットの合図が出される。ズシは思わず「練」を使ってしまう。キルアの体が突然硬直し、目に見えない恐怖に囚われる。周囲に漂う得体の知れない圧力が彼を取り囲み、呼吸さえ困難にさせていた。
「な...…何だこれ...…?」
声が震え、冷や汗が額から流れ落ちる。ズシが地面から立ち上がり、キルアに向かって歩み寄る。その周囲に渦巻く見えない力に、キルアの本能が危険を叫んでいた。
「体が...…動かない...…」
全身の筋肉が凍りついたように感じる。観客席のマヤとゴンの声が遠くに聞こえる。キルアは必死に身体の制御を取り戻そうとしながら、ズシの迫り来る姿を見つめる。
「くそっ...…これが...…天空闘技場の本当の強さか...…」
キルアは歯を食いしばり、少しずつ指先を動かし始める。確か200Fまでは練の使用は禁止されていたはずでは、とマヤが思った時だった。ウイングが立ち上がり、大声でズシの名前を叫んだ。マヤはとっさに耳をふさいだので大丈夫だったが、驚いた周囲の人が転がりながら逃げた。あれから、試合は何事もなかったかのように進んでいった。何度もキルアの攻撃を受けたズシはTKO負けした。