ウラ×ハンター×シケン






キルアは目を見開き、思わず立ち上がる。マヤの動きがあまりにも速く、流れるようだった。彼は興奮した様子で拳を握りしめ、喜びを抑えきれない表情でゴンの肩を叩く。



「すげぇ...…! 見たか、ゴン! あのスピードと判断力...…まるで別人みたいだ!」

「うん、すごいね! マヤってスピードタイプなんだね!」



ゴンも興奮した様子で拳を握っていた。キルアは観客席の歓声が響く中、マヤに向かって声を張り上げる。



「おーい! マヤ! 最高だったぞ!」

「マヤー! すっごくかっこよかったよ!」

「キルア! ゴン!」



マヤは嬉しそうに手を振った。しかし客席から降りてきたヒソカを見て怯えたような顔をする。ヒソカはその表情を楽しむように微笑んでトランプを取り出し、指先で器用に操りながらマヤの周りを歩いた。



「怖がらなくていいよ♡ まだ狩りの時期じゃない★ でも、あと少し……あと少しで君は最高の果実になる◇」

「私は、まだまだだよ。ヒソカには勝てない」



キルアとゴンは廊下を駆け抜けながら、胸の内に湧き上がる誇らしさと不安を感じていた。ヒソカの恐ろしい殺気を知っている二人は、マヤの安全を何よりも心配していた。キルアとゴンは素早くマヤの前に立ち、ヒソカと彼女の間に入る。その目は鋭く、全身に緊張が走っている。



「おい、気持ち悪いことを言うなよ」



しかしキルアの声はわずかに震えていた。ヒソカの圧倒的な念の力を感じ、本能的に危険を察知している。それでも友達を守るために体を張っている。



「マヤ、気にしなくていいよ。あんな風に言われるってことは、それだけマヤが強くなったってことだから。さっきの試合、本当にすごかったよ!」



キルアとゴンはマヤに励ましの言葉をかけながらも、常にヒソカの動きを注視している。二人の手はいつでも戦闘態勢に入れるよう、わずかに構えていた。ヒソカはクスリと笑い、立ちはだかるキルアとゴンを見つめた。




「ふぅん、可愛い護衛がついているんだねぇ。でもマヤ、本当の強さは他人の背中に隠れていては見つからないよ。……君たちも素敵な果実に育っているねぇ。この緊張感、とても心地いいよ。さぁ、どんな風に成長するのか見せてごらん?」



トランプカードを指先で弾きながら、ゴンとキルアを見て唇をぺろりと舐める。そこまで言うとそのままヒソカは去っていった。



「はああ、怖かった……。やっぱりヒソカ苦手だな……」

「あいつ、マジで気持ち悪いな。『果実』とか言って……人をオモチャみたいに見てやがる」



キルアはヒソカの背中を睨みつけながら、拳を握りしめる。緊張から解放されたように肩の力が抜け、キルアはマヤの方を向いた。彼は少し照れくさそうに髪をかきあげながら笑った。



「でも、マヤ、あいつが目をつけるってことはそれだけ価値があるってことだぜ。さっきの試合、本当にすごかったよ。一ヶ月前じゃ考えられないくらい強くなってる」

「そうだよ! マヤは強くなってる。自信持っていいよ!」

「ありがとう、キルア、ゴン。でも、まだまだヒソカには勝てないと思う。あのオーラ、圧倒されちゃうな」

「オレたちも特訓しないとな。マヤに置いてかれちまうぜ」



キルアはゴンの肩を叩き、三人で廊下を歩き始める。



「よし! これからもっと強くなるぞ。次はヒソカの前であんな顔しなくていいように。オレたちがついてるから」

「早くウイングのところに行こう! きっと次のステップに進めるよ」



三人はウイングの所に来るとワクワクしながら説明を聞く。今日からは発の修行。ウイングは「これをマスターすれば念の基礎は全て修めたことになります」と言って、念能力の属性の説明をし、ゴンとキルアと水見式を行いそれぞれの系統を調べる事にした。キルアは両手をポケットに突っ込み、少し退屈そうな表情を浮かべながらも、内心では期待に胸を躍らせていた。



「ゴンとキルアは何系かな? 楽しみだね!」

「へっ、念の属性か。面白そうじゃん。オレ、強いのはどの系統なんだろうな」

「こんなことで何がわかるんだろ? まぁ、ウイングさんが言うなら間違いないんだろうけど」



キルアとゴンは水の入ったグラスを見つめ、集中して自分のオーラを注ぎ込む。ゴンのコップは少し水のかさが増えた。



「ゴンは強化系か。単純だからぴったりじゃん」



キルアの目の前のグラスに葉が浮かぶが変化はない。才能無し?!と焦るキルアにウイングが静かに頷いて説明をする。水を舐めてみせて、僅かに甘くなっているから変化系だという。



「変化系か。これってどんな能力が使えるんだ? なあ、マヤは何系なんだよ?」



もう念を覚えてるマヤは水見式は行わない。キルアもゴンも興味津々といった感じでマヤを見ている。



「私は操作系だよ。風を操るの」



キルアは少し驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの余裕の笑みに戻る。



「操作系か。風を操るなんて、お前らしいな。自由でさ」

「自由に憧れてたから、かもね」

「風ってマヤらしいと思うぜ! オレ、変化系ってのも悪くないと思うんだ。何にでも変われるってことだろ?」

「うん! 変化系も強化系もすごく強いと思うよ。二人はどんな技にしていくんだろう」

「マヤ、お前すごいよな。オレたちより先に念を身につけて...…」



キルアは誰にも見えないよう、マヤの方をそっと見つめる。



「これからは発の修行をしてもらいますよ。水見式の結果がより顕著になるよう鍛錬を続けましょう」

「二人ならきっとすぐこなせちゃうよ。私ももう一度、二人と一緒に鍛錬するから」

「よし、特訓するか! ヒソカに会ったとき、今度は俺たちが驚かせてやるぜ!」
















「裏ハンター試験合格です」



それから三人はそれぞれで念の鍛錬に励み、再びウイングの前で水見式を行う。キルアとゴンは以前よりも強い変化を生み出すことに成功し、ウイングから合格を言い渡された。裏ハンター試験がわからず、キルアとゴンは不思議そうにしている。



「おめでとう! キルア! ゴン!」



けれどマヤから祝われてキルアとゴンは嬉しそうに笑った。キルアは少し照れた表情を見せながら、髪をかき上げる。



「へっ、どうってことないさ。でも『裏ハンター試験合格』って言われると、なんか達成感あるな……お前のおかげだよ。一緒に特訓してくれたから」



キルアはマヤの方を見て、少し恥ずかしそうに笑う。キルアは手のひらに集中し、前よりも大きな電気を走らせる。青白い光が周囲を照らす。



「すげぇ……前より全然コントロールしやすい。これならもっと強くなれる。なあ、次は何したらいいんだ?」

「卒業ですよ。二人とも。もう念を使いこなせてるはずです。更に磨きをかけてください」



目を輝かせるキルアに、ウイングは静かに告げた。ぽかんとするキルアとゴン。



「キルア、ゴン。これで念の基礎はマスターしたってことだよ! それにもうすぐ9月1日……クラピカ達と再会する日も近いよ」

「そっか。……オレ、一度くじら島に帰ろうと思ってる。オレの町を二人に紹介したい!」

「くじら島か! そういえばずっと気になってたんだよな、ゴンの家」



キルアは驚いたように目を丸くし、すぐに笑顔になった。彼はマヤの方をちらりと見て、少し照れくさそうに髪をかき上げる。キルアは両手を後頭部に組んで、いつものリラックスした姿勢に戻るとマヤの方を見た。




「行ってみたいな。ゴンがずっと話してた場所だし。くじら島に行って、それからヨークシンで再会……か。なんだか楽しみになってきたぜ。マヤ、お前も一緒に来るよな?」

「うん! もちろんだよ。だって、二人ともっと一緒にいたいんだもん」



マヤの言葉にゴンは嬉しそうに笑い、キルアは頬が少し赤くなるのを感じながら、さりげなく顔を背けた。



「ば、バカ言うなよ……」

「よし、じゃあ早速行こうよ! くじら島に! オレ案内するよ!」



それでも心の中では嬉しさがじわりと広がり、思わず口元が緩む。マヤはキルアに顔を背けられ、慌ててしまう。



「えっ、私変なこと言った……?」

「くじら島かか……どんなところか楽しみだな。ゴンがあんなに元気に育ったところだし、きっといいところなんだろうな」



キルアは咄嗟に話題を変えて誤魔化し、海を見つめながら風を感じ、髪が揺れる。それからマヤの方を見て、真剣な表情になる。




「ヒソカとの約束もあるしな。お前を守れるくらい強くなりたいんだ……あ、いや、その……別にそういう意味じゃなくて!」



慌てて言い訳するキルアだが、本心が漏れ出ていることに自分でも気づいていた。マヤはキルアの言葉に照れてしまい自分の髪の毛をいじっている。



「ありがとう、キルア。えっと、嬉しいよ……すごく。大事な友達だって思ってくれてるのが伝わってくるよ」

「へー、キルアって……結構ストレートなんだね」



ゴンの言葉にキルアは耳まで真っ赤になり、ゴンを肘でつついた。



「うっせーな! 余計なこと言うなよ!」

「と、とにかく、私に教えられる事があったら教えるよ! 師匠ってほどじゃないけど……っ」



しかし、マヤが照れている様子を見て、キルアも少し落ち着きを取り戻す。



「あ、ああ...…マヤが教えてくれるなら、ちゃんと聞くよ。お前すごいもんな、もう念を取得してたんだから」

「うん、頑張ってね! 私達も頑張るから!」



肘でつつかれたゴンが「キルア、頑張ってね」と意味ありげにウィンクした。マヤも何も知らずに応援した。キルアは荷物を肩にかけながら、ゴンの冗談めいた応援に目を細める。



「お前なぁ...…」



思わず吐き出した言葉も、心の中では温かさが広がっていた。キルアは空を見上げながら、浮かんでいる雲を指さした。



「くじら島に着いたら、オレの家で特訓してもいいよ! ミトさんにも会いたいし!」



ゴンの言葉に頷きを返しながら、キルアはポケットから船のチケットを取り出した



「もう準備はできてる。行くぞ、二人とも。これからもっと強くなって...…」



そこで言葉を切り、マヤの方をちらりと見る。



「オレたちの旅はこれからだ」











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