ハンター×シケン×カイシ






ここが、ハンター試験会場……。マヤは120番のプレートを手に辺りを見回す。そこでトンパと名乗る男に話しかけられ下剤入りのジュースを渡される。



これ、飲んでも大丈夫なのかな。なんか怪しいけど……。



少し離れた場所からマヤの様子を見ていた銀髪の少年は、トンパの姿を認めると素早く近づいてきた。



「おい、それ飲むなよ! そいつ、他の受験者を潰すのが趣味なんだ。そのジュース、絶対下剤入りだから」



少年はマヤの手からジュースを取り上げ、不敵な笑みを浮かべた。



「オレはキルア。この試験、一緒に頑張ろうぜ」

「ありがとう、これ下剤入りだったんだ。捨てようか迷ってた所だったんだ、助かったよ」



マヤはいきなり声をかけられジュースを取り上げられると驚いたもののキルアの好意には素直に感謝し礼を述べる。



「僕はレン。君も同い年くらいかな? よろしく」



マヤは男装している手前、男らしくみえる偽名を伝えて手を差し出す。キルアは「レン」と名乗る゛少年゛の手を軽く握り返し、その細い指に少し違和感を覚えつつも気にしないフリをした。



「ああ、よろしく。そうだな、たぶん同い年だと思う。よろしく、レン」



キルアはジュースを開けて豪快に飲み干したあと、周囲を警戒するように視線を巡らせた。レンはそんな様子を見て驚き、ジュースとキルアを交互に見る。



「それ、下剤入りって言ってなかったか?」

「ん? オレはヘーキだよ。毒は効かないから。ところでレン、なんでハンター試験を受けようと思ったんだ? オレは単に暇つぶしだけど、お前はなんか目的があるの?」



なんてことのない顔で言われ、戸惑うが毒が効かないのなら飲んでも平気なのかと思い直し、レンは答える。



「はは、暇つぶしか。じゃあハンターライセンスにはあまり興味ない? んー……一人で生活するためにはハンターライセンスが必要だったから、かな」



キルアはレンの言葉を聞き、目を少し細めて相手の表情を観察した。



「へえ、そうなのか……一人で生きようってのは、結構カッコいいじゃん」

「へへ、ありがとう。というかキルアって結構背高いんだね。羨ましいや。僕ももっと背を伸ばしたいな……」



レンはなんてことないって顔で明るく笑ってみせる。キルアは何気なく手を後ろに組み、ふとレンの姿をもう一度見直した。レンの身長を見下ろし、少し優越感を覚えながらも、どこか微笑ましく思った。



「へぇ、オレと同い年なのにそんな背が低いんだ。でも気にすんなよ。そのうち伸びるさ。……実はさ、オレも家出してきたんだよね」

「そうなのか、ハンター試験に反対されたとか?」

「……まあ、そんなとこだな」



どことなく視線を逸らすキルアにレンはそれ以上は何も聞かなかった。と、その時ベルの音が大きく鳴り響いた。面接官の「これより、ハンター試験を開始いたします」という言葉を皮切りに受験生達が一斉に走り出す。レンもそれに続こうと動き出しながらキルアに目を向けた。



「もう一次試験が始まったみたいだ。みんな走り出してる。なあ、どっちが先に着くか競争しようよ。ローラーとスケボーどっちが速いかな?」



レンはよく使い込まれたローラーシューズをトントン、と軽く爪先を床に当てた。キルアは眉を上げると、レンのローラーシューズに興味深そうな視線を送った。



「おっ、ローラーシューズか。いいじゃん。オレもスケボー持ってるぜ」

「キルアのスケボーもかっこいいじゃん」



キルアはスケボーを足元に落として軽く乗ってみせたあと、レンの隣に立ち、走る体勢を整えた。レンもその様子を興味深げに見つめた。



「競争か……面白そうだな。やってやるよ。負けたらチョコ全部おごりな! ああ、そうそう。オレはライセンスにはあんまり興味ないけど、試験自体は楽しそうだからな。それに……」



彼はふと真剣な表情になり、小声で続けた。



「家出したからには、自分の力で生きていかなきゃならないしな。お前も一人なんだな……なら、お互い頑張ろうぜ」



そう言うとキルアはにやりと笑い、スケボーを蹴り出した。



「さぁ、行くぞレン! 追いつけるもんなら追いついてみろよ!」



そう言うとキルアは軽やかに走り出し、その速さで並の受験者を一気に追い抜いていく。そんな中で後ろを振り返り、レンに挑戦的な笑みを投げかけた。



「それにしても、この試験の内容……走るだけじゃないよな。きっとこの先には何かトリックがある。用心した方がいいかも」

「そうだよな、最後まで気を抜かず頑張ろう」



レンも負けじと追いかけていくと、キルアは挑発的な笑みを浮かべて「へえ、やるじゃん」と言った。キルアは周囲の受験者たちが息を切らせながら走ってる様子を見て鼻で笑った。そしてポケットからチョコボールを取り出し、レンに半分差し出す。



「みんな必死だね。こういうのって体力だけじゃなくて知恵も使わないと……ほら、エネルギー補給。まだまだ先は長そうだから、こういうときこそ甘いもの食べないとね。賭けの条件に勝つために余計なおごりはゴメンだからさ」

「ありがとう、なら僕もこれあげる。エネルギー補給は大事だよな」



レンはキルアからチョコボールを受け取り、代わりにポケットから取り出したキャンディをキルアに差し出す。キルアはレンからキャンディを受け取ると、嬉しそうにポケットにしまった。



「へっ、サンキュ。甘いものの交換って感じだな」



そのままレンはキルアと競争しながら走っていたがしばらくして、前を走っていた自分と同じくらいの年代の男の子とすれ違う。



「へえ、他にも僕とキルアみたいな子供が参加してたんだ」

「フーン……」



レンとキルアがじーっとゴンを見ていると、ゴンもそれに気付いて走りながら振り返り、驚いた顔をしたあとに笑顔を見せた。それから元気よく手を振った。ゴンは二人に近づくと、同じペースで走り始める。話しかけようとした刹那、スーツ姿のおじさんが先に口を開く。



「おいガキども、汚ねーぞ。そりゃ反則じゃねーか、オイ!!」

「「何で?」」



スーツ姿のおじさんに言われたキルアとレンは綺麗に声をハモらせて問いかける。



「こりゃ持久力のテストなんだぞ」

「違うよ。試験官はついて来いって言っただけだもんね」

「ゴン!! てめ、どっちの味方だ!?」

「怒鳴るな、体力を消耗するぞ。何よりまずうるさい。テストは原則として持ち込み自由なのだよ!」



クラピカの言葉にレオリオはぐっと押し黙る。キルアとレンはじーっとゴンを見ていた。



「オレは12歳、君は?」

「もうすぐ12歳!」

「……ふーん」

「え、そうなの? 僕は14歳だよ」

「え、マジ? へー、見えねー! 絶対オレより年下って顔だろ!」



レンの言葉に反応したキルアがまじまじとレンの顔を見つめる。それに対してレンは「そんなに幼く見える?」と聞いたがキッパリと「見える!」と断言されてしまった。ガックリと肩を落とすレンだった。



「そっか、なら2つ違いだね! 大人たちが子供には無理だって言うけど、そんなの関係ないよね。オレはジンに会うためなら何だってするんだ!」



ゴンは元気よく笑いながら返事をする。汗ひとつかかず、まるで散歩でもしているかのように余裕の表情だ。ゴンは前方を見つめ、目を輝かせていた。それを見たキルアはやっぱ俺も走ろっと、と言ってスケボーを降りた。それを見たレンも、仕方ないな、と言ってローラーをしまった。このローラーは自在に出したり引っ込めたりできる。装着型ローラーなので靴自体は改良すれば何にでも付けられるようになっている。



「オレ、キルア」

「オレはゴン!」

「僕はレンだよ」



キルアが、今度は金髪の青年とスーツ姿のおじさんの方を見る。



「おにーさんとオッサンの名前は?」

「オッサ……これでもお前らと同じ10代なんだぞオレはよ!!」

「「「ウソォ!?」」」



ゴンとキルアとレンの声が、綺麗にハモった。金髪の青年は既に他人のふりをして走り始めていた。



「あー!! ゴンとレンまで……!! ひっでーもォ絶交な!!」

「ねえ、この先もっと難しくなるかな? 楽しみだな!」



レオリオの嘆きも構わずゴンは笑顔で言った。それからもレンたちは走り続け、もう始まってから4、5時間は経っていた。一体どこまで走るつもりなんだろう。

レオリオさん、辛そうだなぁ……。



「レオリオさん、大丈夫?」

「余計な心配は無用だぜ……! フリチンになってでも走り続けてやらぁ! あと、俺のことは呼び捨てで構わないぜ」

「じゃあ、レオリオ」

「私のこともクラピカで構わない」

「クラピカ、レオリオ。改めてよろしくな」



凄い汗だ……。クラピカさんもちょっと疲れてきたみたい。ゴンとキルアはまだ余裕そうな顔してる。皆、こんなに一生懸命走ってまでハンターになりたいんだ。皆それぞれのハンター志望理由も聞けたし、この子達と一緒に受かったらいいなとレンは思った。



そして次第に三人と二人の距離が開いていく。キルアははレンとゴンと並んで走りながら時折周囲の受験者たちを観察していた。



「それにしても、あんな怪しい飲み物渡してきたトンパって奴、どこ行ったんだろ。まだ試験に残ってるのかな」

「そうだなあ、まだしぶとくは残ってそうな気がするけど」

「え? トンパさんの何が怪しいの?」



お前気付いてないのかよ、と言いながらキルアはポケットからさっきもらったキャンディを取り出し、口に放り込んだ。



「甘い! うまいな、これ。レン、センスいいじゃん。家族とかにもらったの?」

「え、僕は家族いないよ。生まれてすぐ捨てられた」



レンはさらっとそう言いながらキルアのチョコボールを食べて「うまい!僕もこれ好きなんだよね」と笑った。キルアとゴンはレンの言葉に一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情になった。



「そうか.…..オレも家族とは複雑な関係だからな。まあ、今はそれより目の前の湿原だ」

「うん、オレも親代わりの人ならいるって感じかな」

「みんな色々あるんだね。まあ、でなきゃこんなとこに来てないか。……霧も出てるね、厄介そうだな」



長かった薄暗い地下道を抜けると、目の前には湿原が広がっている。ここまで長かった。レンはふぅ、と一息をつく。目の前には大きく広がる森。何となくさっきの地下道以上に嫌な感じがする。ヒゲを生やした試験官のオジサンが説明を始めた。



「ヌメーレ湿原、通称“詐欺師の塒”です。二次試験会場へはここを通らないと辿り着けません。この湿原にしか生息していない珍奇な動物たち…。その多くが人間をも欺き食糧にしようとする、狡猾で貪欲な生き物です」











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