タメ×シノ×モン






それから3日後、完全とはいえないものの傷を癒やしたスバルは医務室を出てゴン達と向かい合う。もう帽子は被ってない。長い髪を下ろしている。そして水色のパーカーとショートパンツ。どこから見ても普通の女の子。



「行こう、みんな! キルアを迎えに!



電脳ページでククルーマウンテンを調べ、チケットを予約したスバル達は、その日のうちに試験会場を後にした。飛行船に乗ってククルーマウンテンがあるパドキア共和国に向かう。目的地に着いたのは、それから3日後の朝だった。不意にレオリオが声をあげる。



「見えてきたぜ」



目線の先には高山───ククルーマウンテンがそびえ立っている。ゴンは飛行船の窓から見える朝日に照らされたククルーマウンテンを見て、目を輝かせた。



「わぁ、すごい! あれがキルアの家があるところなんだね! スバル、見て見て!」



興奮した様子で窓に顔を近づけてはしゃぐ、その姿はまるで普通の冒険を楽しむ少年のようだった。だが、その瞳の奥には友を救うという揺るぎない決意が宿っていた。



「なんかこんな時になんだけど、皆でこうして向かってると楽しいかも。気持ちは一つなんだって思えるし」

「うん! みんなで来れて嬉しいよ。キルアがいないのは寂しいけど、でもすぐに会えるよね。オレ、絶対にキルアを連れ戻す!」



彼は拳を握りしめ、スバルたちに向けて笑顔を見せる。その表情には不安よりも期待が溢れていた。レオリオはスバルの言葉に小さく笑いながら、肩に掛けた鞄の紐を調整した。



「まったく、試験中に仲間増えるとは思わなかったぜ。でもまぁ、悪くねぇよな」

「確かに不思議なものだな。危険な状況にもかかわらず、仲間と共にいることで心に強さが生まれる」



クラピカは窓際に立ち、山の麓に広がる景色を静かに見つめていた。朝日に照らされた彼の金髪が風になびいている。レオリオは険しい山道を見上げると、決意に満ちた表情で立ち上がった。



「さぁて、これからが本番だ。キルアのヤツ、あんなところに一人で閉じこもってちゃ退屈で死にそうだろうからな。ひっぱたいてでも連れ戻すぞ!」

「ねえスバル、レオリオ、クラピカ。オレたち、ここでも一緒に頑張ろうね。一人じゃ無理でも、みんなならきっとできるよ! キルアだって、絶対にオレたちが来るって信じてるはず!」

「だが油断はできない。ゾルディック家は暗殺者一族。その屋敷に侵入するのは並大抵のことではない」



クラピカは腕を組み、眉間にしわを寄せた。レオリオも同意するように頷く。



「暗殺一家のアジトか……。実際に見るといやーな雰囲気だな」



レオリオの言いたい意味がなんとなくだけどわかる。ククルーマウンテンの高さはおそらく富士山くらい。そしてその山を覆う森。いや、というよりは恐怖を煽る雰囲気が伝わってくる。レオリオさんの言葉に同意したクラピカが口を開く。



「ヒソカから聞いた話では、ククルーマウンテンには数々の試練が待ち受けているという。まずは"試練の門"と呼ばれる入口を通過しなければならない。そこで私たちの覚悟が試される」



彼は決意に満ちた眼差しでスバルを見つめ、右手を軽く彼女の肩に置いた。



「キルアは必ず取り戻す。友情の絆は、時に血の絆よりも強いことを証明してみせよう」



やがて飛行船は目的地に降り立ち、全員が降りていく。山の中腹にそびえ立つ“試しの門”。



「大きいね……。本当にキルアって、ここにいるんだよね?」



スバルは圧巻されたように見上げていた。ゴンはスバルの隣に立ち、同じく大きな門を見上げながら力強く頷いた。彼の顔には決意と期待が入り混じっていた。



「うん! キルアはここにいるんだ! この門の向こうに彼の家があるんだよ!」

「押しても引いても左右にも開かねーじゃねーかよ!」



レオリオが扉を開けようと力を込めてもビクともしなかった。クラピカは険しい表情で大きな門を見上げながら、拳を握りしめた。



「ああ、ここにいるはずだ。守衛のゼブロが確かな情報を持っているようだ。まずは彼から話を聞き出そう」



ゴンは両手を腰に当て、扉を真剣な眼差しで見つめる。その後、ゼブロの方を振り返った。



「ねぇ、ゼブロさん! この門、どうやって開けるの? オレたち、キルアに会いに来たんだ。絶対に中に入るよ!」



風が吹き抜け、ゴンのスパイキーな髪が揺れる。彼の目には一切の迷いがなかった。



「スバル、心配しないで。オレたちなら必ず会えるよ。キルアはオレたちの大切な仲間だから!」

「でも、やっぱりこれは押すタイプなんじゃない?」

「まあご覧なさい。この門の正式名称は“試しの門”。この門さえ開けられないような輩ゾルディック家に入る資格無しってことです。1の扉は片方2トンあります」



ゼブロがそう言うと、スバルは扉を見上げながら「友達なのに、試されるの?」と呟いた。ゴンはマヤの言葉を聞いて、真剣な表情から突然明るい笑顔に変わった。



「そうだよ! これは試しじゃなくて、キルアに会うための道なんだ! 2トンか……でも大丈夫、オレたち諦めないよ!」



ゴンは両手を門に当て、全身に力を込める。額に汗が滲み始めるが、彼の表情は決意に満ちていた。



「ゴン! 私もやるよ!」

「うん! キルアはきっと待ってるよ。オレたちのこと……だから……!」



クラピカは静かに頷き、ゴンの横に立った。



「ああ、必ず連れ戻そう。私たちには各々の理由があるが、今はただ一つの目的のために力を合わせる時だ」

「ったく、このガキは……」



レオリオは肩をすくめると、ニヤリと笑った。だが彼の目には確かな闘志が宿っていた。レオリオは袖をまくり上げると、ゴンの隣に立った。全員の手が巨大な門に触れた瞬間、クラピカは力を込めた。彼の顔に浮かぶ決意は揺るぎなかった。



「押せ! 友との約束は、どんな門よりも重い!」

「よーし、やるぞ! キルアのヤツに会いに行くんだ。みんなの力を合わせりゃ、この門くらい何てことないさ!」



私は遠くに見えるククルーマウンテンを見つめた。今の私とキルアの距離を表しているような気がしてしまった。きっとこれくらい遠いんだろうなと。

結局4人がかりでも扉は開かず、侵入者の扉に今にも登ろうとするゴンの肩を押さえつけるレオリオの隣に立ち、スバルはゴンの腕にしがみつく。クラピカが「冷静になれ」と言う。



「ねえゴン。もし入って食べられでもしたら、キルアは悲しむよ。自分が友達を殺したって、一生消えない心の傷になるかもしれない」



ハンター試験でキルアに貫かれたときの事が蘇る。



「キルアは……私が傷ついたのは自分のせいだって、もう二度と……私に合わせる顔がないって、思ってるかな……」

「...…そんなことはない。キルアは君に会いたがっているはずだ。だからこそ、我々は正攻法で行くべきだ。焦りは時に最悪の結果を招く」



クラピカはスバルの不安げな表情を見つめ、静かに腕を組んだ。レオリオはスバルの不安げな表情を見下ろすと、思わず眉間にしわを寄せた。そして鼻を鳴らすと、スバルの頭を軽く小突いた。



「ばっかやろう! キルアのやつがそんな単純な理由で逃げ出すわけねーだろ! バカ言うな! キルアがそんな理由で逃げるタイプに見えるか? あいつはイルミにやられただけだ」



ゴンはスバルの不安げな表情を見つめ、ゆっくりと彼女の肩に手を置いた。



「違うよ、スバル。キルアはそんなこと思ってないよ。あの時のことは……キルアの本当の気持ちじゃなかったんだ。キルアはイルミに操られてたんだよ」

「あいつは強いんだ。おまえが思ってるより、ずっとな。だからこそ、友達として正面から向き合うべきなんだ。今度は俺たちが手を差し伸べる番だぜ!」



レオリオの言葉を聞くとゴンは試しの門を見上げ、目を細める。風が彼の髪を優しく揺らしていた。



「キルアは本当はすごく優しいんだ。だからきっと、スバルに会いたいって思ってるよ。オレたちが来るのを待ってるはずだよ!」

「うん……キルアの意思じゃないってわかってる。イルミにあやつられてただけだってことも。だから私は気にしてないよ。でもキルアは、自分の手で私を傷つけたことを責めてるかもしれない。会ってもらえなかったらどうしよう……」

「お前な、そんな弱気じゃキルアに会う資格ないぞ。あいつが自分を責めてるなら、なおさら会いに行かなきゃだろ!」



クラピカは静かに瞳を閉じ、思考を巡らせた。彼の指輪に赤い光が一瞬だけ宿る。



「恐怖は理解できる。だが、私たちは今ここにいる。キルアもまた、君を思い苦しんでいるならなおさら会うべきだ。あの少年は強い」



ゴンはスバルの恐れに満ちた表情を見て、真剣な眼差しで彼女の両肩をしっかりと掴んだ。



「スバル、聞いて。キルアはね、自分のしたことから逃げたりしない。だからこそ、オレたちの大切な仲間なんだよ。それに、キルアがどんな気持ちでも、オレたちが会いに行くことが大事なんだ。会って、ちゃんと話せばいいんだよ。それがキルアの選択を尊重することだと思うんだ」



レオリオは扉に向き直り、拳を強く握りしめた。



「くそっ! この扉、絶対にぶち破ってやる。スバル、お前もその不安を力に変えろ! 俺たちで新しい道を作るんだ!」

「ありがとう……。そうだよね。私、私は……キルアに会いたい。その為にここまで来たんだもん。引っぱたいてでも会ってやる……!」

「その意志、大事にしろ。キルアも君の声を待っているはずだ」



レオリオは意外そうな顔をしたあと、にやりと笑った。



「なんだよ、急に礼なんか言って。気持ち悪いぞ! さぁ行くぞ、スバル! キルアのバカ面見に行こうぜ! あいつが逃げようとしたらぶん殴ってやる!」



そんなスバル達を見ていたゼブロがにこにこしながら歩み寄ってくる。



「もしよければ、この家で特訓してみませんか? もちろんこのまま山に向かってもらってもいいんですが、多分それも納得いかないでしょう? ……君たちの若さがあれば、あるいは1ヶ月で1の門を開けられるようになるかもしれない……3人がかりでも開ければOKだから決して不可能じゃない」



ゼブロがそう言うとレオリオは拳を握りしめて興奮した表情で前のめりになり、クラピカは腕を組み、ゼブロの提案を吟味するように目を細めた。



「おい! それ最高じゃねぇか! 特訓なんて言葉に弱いんだよ!」

「1ヶ月か..….長いようで短い時間だな。だが、私たちには確かな目標がある」



ゴンの目が光った。ミケから視線を外さないまま、彼は決意に満ちた声でゼブロに答えた。



「特訓!? 本当ですか!? それならやる! 絶対に門を開けてみせるよ!」

「力を合わせれば可能性は広がる。ここで基礎を固め、試しの門を突破する。それがキルアに会う最短の道だ」



ゴンは興奮を抑えきれず、拳を握りしめた。ミケはまだ唸り声を上げているが、少年の情熱は恐怖を凌駕していた。彼は仲間たちの顔を見回した。その瞳には迷いは一切なく、ただキルアに会いたいという純粋な思いだけが宿っていた。



「1ヶ月か……オレはキルアのためなら1年でも待てる。でも、早く会いたいから、毎日必死に練習するよ!」

「うん、早くキルアに会いたい。頑張れば1ヶ月より早く開けられるようになるよね」

「うん! スバルの言う通りだよ! みんなで力を合わせれば、きっと1ヶ月より早く開けられるはず!」



ゴンは胸を張り、自信に満ちた笑顔を見せた。



「オレ、山育ちだから重いものを運ぶのには慣れてるんだ。この特訓、絶対に乗り越えてみせるよ!」

「うん、私も。それに、この門をキルアは開けられるんだもんね。負けてられないよ」



ゴンは肩でスバルに軽く触れ、励ますように微笑んだ。



「だね! よーし今日から特訓開始だ! 最初はきついかもしれないけど、諦めないで一緒に頑張ろう! キルアを待たせるわけにはいかないからね!」











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