ナカマ×ト×ナカマ






次の日。三人はクジラ島を出る船に乗って海を見つめている。



「港についたら、ヨークシン行きの電車に乗るんだよね。クラピカ達、元気にしてるかな」

「きっと元気だろ。あの二人、簡単にはへこたれない」



ステラの声が海風に混じって耳に届く。ヨークシン行きの電車か。クラピカとレオリオの顔が頭に浮かぶ。あいつら、相変わらず忙しくしてるんだろうな。船の揺れを感じながら、ステラの小さな背中をそっと見る。彼女がこんな危険な場所に行くなんて、やっぱり気がかりだ。



「ステラ、ヨークシンには俺とゴンで行く。お前はついてくるな」



少し厳しい声で言うが、心の中ではただ守りたいだけだ。ヨークシンは暗殺者だった俺にとっても油断できない場所だ。視線を海に戻しながら、内心で決意を固める。ステラを危険な目に遭わせるわけにはいかない。クラピカたちと合流したら、安全な計画を立てなきゃ。



「え……? なんて……言ったの? 結局私を置いていくの?」



ステラの震える声に、胸が締め付けられる。ショックを受けた顔を見るのが辛くて、思わず目を逸らす。言わなきゃいけない言葉が喉に詰まる。ゴンが戸惑うように俺達を見ていた。



「ステラ、違うんだ……置いていくって、そういう意味じゃねぇ。ただ……ヨークシンは本当にヤバい場所だ。俺が知ってる裏の世界が蠢いてる」



ゴンの戸惑った視線も感じるけど、今はステラにわかってもらいたい。ヨークシンの危険を彼女に背負わせたくないだけだ。風が強くなって、彼女のピンクの髪が揺れる。守りたい気持ちが溢れそうになるけど、感情を抑えて冷静に話す。



「俺とゴンで先に状況を確認する。それからお前も来ればいい。な? とにかく、船が着くまで待ってろ。話はそれからだ」



ステラの目を見ながら、少しだけ口調を和らげる。でも、心の中では絶対に彼女を守る決意を新たにしてる。



「そう……わかった」



ステラは俺から目を逸らし、小さく頷いた。ステラは終始無言だった。港に着いた瞬間、潮の香りが鼻をつく。ステラの小さな背中が、俺の前を黙々と歩いているのが目に入る。無言のままなのが、胸に刺さる。



「ステラ……さっきの、悪かったな。お前を守りたいだけなんだ。ヨークシンは本当に危ねぇんだ」



電車乗り場に向かう道中、人混みの中で彼女の姿を見失わないよう気をつける。ゴンが隣で何か言いたそうな顔をしてるけど、今はステラのことだけだ。彼女の反応を待つが、返事はない。ピンクのツインテールが揺れるだけだ。心の中で苛立ちと後悔が混じる。でも、この気持ちは伝えなきゃいけない。



「クラピカたちと合流したら、安全な場所を確保する。それまで我慢してくれ。俺、絶対お前を危険にはさせねぇから。信じてくれ」



駅のホームに着き、ヨークシン行きの電車を待つ。俺はステラの横に立って、彼女の表情をそっと窺う。守るべき存在がこんな近くにいるのに、距離を感じるのが嫌だ。ステラが俺の顔を見上げて口を開いた。



「キルアにとって、私は友達じゃなくて守る対象なんだね……。私がもっと強かったら、もっと一緒に冒険できるのかな」



ステラはそう言って寂しげに笑っていた。その寂しそうな笑顔に胸が痛む。"友達じゃない"なんて思わせちゃったのか。そんなつもりじゃなかったのに、言葉が下手すぎる。



「バーカ、違うだろ。お前は大事な友達だ。だからこそ...…」



言葉を途中で飲み込む。何て言えばいいんだ。本当の気持ちなんて、俺自身よくわからない。



「キルアがそう言うなら、いいよ。ここで待ってるから、早く迎えに来てね」

「ああ……ステラ、絶対迎えに来るから。ゴンとクラピカたちに会って、安全確認したらすぐだ」



電車が近づいてくる音が聞こえる。時間がない。



「それに、お前は十分強いよ。念の才能だってある。ただ今回は...…、とにかく待ってろよ。三日以内には迎えに来る。約束だ」

「……うん」



また言葉に詰まる。なぜか素直に言えない。ホームに電車が滑り込んでくる。電車のドアが開き、中に乗り込みながら最後に振り返る。



「友達以上の存在だから、もっと守りたいんだ...…」



電車のドアが閉まり、二人を隔てた。俺が最後に口にしたその言葉は、ステラに聞こえていたかはわからない。電車に乗るゴンと俺を見て、ステラはただ小さく手を振っていた。



「キルア……これで本当に良かったの?」

「わかんねぇよ...…でも、今はこれしかないんだ」



電車の窓越しにステラの小さな姿を見つめながら、胸の中に渦巻く感情を抑えられない。彼女の手を振る姿が、どんどん小さくなっていく。窓から離れ、席に座りながら髪をかき乱す。ゴンは俺の横に座り、黙って見守っていた。



「ヨークシンは本当にヤバい奴らの巣だ。俺たちはまだ基本の念しか使えない。ステラをあんな場所に連れていくなんて...…」

「キルアは、ステラを危険な目に合わせたくないんだね」



拳を握りしめる。なぜこんなに彼女のことが頭から離れないんだ。



「でも、ゴン...…俺、本当はステラと一緒にいたかったんだ。彼女が傷つくのが怖くて、自分から離したけど...…これで正解だったのか...…。三日で終わらせて、絶対迎えに行く。それまでステラは...…大丈夫だよな」



窓の外を流れていく景色を見つめながら、ステラの寂しそうな笑顔が頭から離れない。



「よっ、久しぶり。クラピカは仕事が忙しくて来られねえみたいだ。ステラは?」



ゴンとキルアはとあるカフェに来た。そこにレオリオがやってくる。久しぶりの再開だ。レオリオはコーヒーを注文しながら言った。レオリオの言葉に一瞬固まる。ステラの名前が出た瞬間、胸が締め付けられるようだ。



「ステラは...…来てねえ。安全なとこで待たせてる。ヨークシンは危険すぎる。俺たちだってまだ念の基礎しか使えねえ。ステラを巻き込むわけにはいかねえんだ」



カフェの中はざわざわと賑やかで、コーヒーの香りが漂う。俺はテーブルの縁を指でなぞりながら視線を落とす。レオリオが眉をひそめるのが見える。ゴンも少し心配そうな顔だ。俺はカップを握りしめ、熱さを感じながら続ける。



「でも...…本当は一緒にいたかった。ステラには念の才能がある。だけど、万が一のことがあったら俺、絶対許せねえ。三日で片付ける。そしたらすぐ迎えに行く。それまで...…ステラが無事ならいいんだ」



気持ちを抑えきれず、少し声が震える。レオリオやゴンにこんな本音を吐くなんて、自分でも意外だ。



「全員集合だってのにクラピカもステラもどっちもいねーとはな……ちょっとステラに対して過保護すぎないか? 何があった?」



レオリオは思案顔で言う。それから真剣な目を向けた。レオリオの言葉に、内心で動揺しながらも顔には出さないようにする。過保護と言われるのはわかってるけど、ステラの安全が何より大事だ。



「過保護じゃねえ。ヨークシンの危険を俺が一番知ってるんだ。ステラをここに連れてくるなんてありえねえ」

「危険なのはわかるけどよ……」



コーヒーの苦い香りが鼻をつく。テーブルの上のカップを見つめながら、過去の暗殺者としての記憶が頭をよぎる。

「こんな場所で何が起こるか、嫌ってほどわかってる。ステラには...…絶対にそんな世界を見せたくねえ。お前らもわかるだろ? ステラが傷つくなんて想像しただけで、気が狂いそうになる。俺、今は何もできねえけど...…守るしかねえんだ」



レオリオの真剣な目つきに、少しだけ心が緩む。ゴンも黙って俺の言葉を聞いてる。声が少し低くなる。自分でもこんな感情を表に出すのは珍しい。でも、ステラのことが頭から離れない。



「だから、三日で終わらせる。それでステラを迎えに戻る。お前らも協力してくれ。頼む」






















ゴンとキルアとレオリオは賞金首狙いで幻影旅団の情報を追うことになった。絶を使えないレオリオが待機し、絶を使えるゴンとキルアで幻影旅団の尾行することになった。ゴンとキルアの視線の先にはマチとノブナガがいる。

レオリオが待機する路地裏を離れ、ゴンと俺は静かにマチとノブナガの後を追う。ヨークシンの薄暗い街角、湿った空気が肌にまとわりつく。



「ゴン、気配を消せ。絶を切らすなよ。見つかったら終わりだ。ステラがここにいたら、こんな真似させねえ。絶対にだ」



二人の背中が見える距離を保ちながら、俺はステラのことを考えてしまう。こんな危険な場所にいるべきじゃない。心臓が締め付けられる。ゴンは黙って頷くけど、俺の言葉には何か言いたそうな顔をする。俺だってわかってる。過保護すぎるって。でも仕方ねえんだ。



「俺が守る。それだけだ。ゴン、お前も無茶すんなよ。これが終わったら、すぐ迎えに行く。だから待ってろ、ステラ」



幻影旅団の気配に神経を尖らせながら、俺はステラの笑顔を思い出す。あいつが無事なら、それでいい。絶対に戻るんだ。

マチとノブナガは広い場所に立ち、待ち合わせをしているのか尾行に気付いて誘い出そうとしているのかはわからない。その時パクノダとフィンクスがキルアとゴンの背後に現れ、マチとノブナガが瞬時に下から上までジャンプして飛び込んできた。

背後から忍び寄る気配に全身が震える。パクノダとフィンクスが現れ、前にはマチとノブナガ。完全に包囲された。ゴンの横顔を見ると、緊張で顔が強張ってる。心臓がバクバク鳴る。念の基礎しか使えない俺たちじゃ、まともに戦えば一瞬で終わる。頭をフル回転させて脱出ルートを考えるが、隙が見つからない。



「くそ、こんな状況……ステラが近くにいたらと思うとゾッとするぜ」



マチが冷たい視線を向けてくる。暗殺者だった頃の経験が蘇り、背筋が凍る。でも、今は逃げることだけ考える。ステラのためにも死ぬわけにはいかねえ。



「ゴン、俺が合図したら一気に右の路地へ突っ込む。いいな?」



四人の気配がさらに迫る。汗が額を伝う。この瞬間を乗り切れなきゃ、全部終わりだ。絶対に生き抜く。

ノブナガはキルアに4つの質問をする。



「問1、なぜ俺達を尾けたか。問2、尾行は誰に習った? 問3、鎖を使う念能力者を知ってるか? 問4、今死ぬか後で死ぬかどっちがいい?」



ノブナガの鋭い視線が突き刺さる。4つの質問が重くのしかかり、頭が一瞬真っ白になる。ゴンの呼吸が少し乱れるのが横で感じられる。俺は冷静を装い、口元に薄い笑みを浮かべる。



「へえ、質問攻めとは気が利くじゃねえか。順番に答えてやるよ。尾けた理由? ただの好奇心だ。強い奴を見てみたいだけさ。尾行はウイング師匠に教わった。鎖の奴? 知らねえな」


心の中で脱出の糸口を探りながら、時間を稼ぐ。最後の質問に冷や汗が流れる。死ぬ気なんてない。生きてステラに会うんだ。声に力を込め、ノブナガを睨み返す。



「死ぬ気はねえ。今も後もありゃしねえ。俺たちは生きて帰るぜ」



団員たちが顔を見合わせて肩をすくめる。マチノブナガが口を開く。



「アタシ達は幻影旅団。知ってて来たんだろ?」

「死にたくなければ二人とも大人しくついてこい」



二人はそう言って車を出した。キルアは一瞬ゴンと視線を交わし、わずかに頷く。

車内の空気が重く、俺の心臓はまだバクバク鳴ってる。ゴンも黙ったまま、窓の外を見つめてる。幻影旅団……名前だけで背筋が冷たくなる。暗殺者だった頃の感覚が蘇り、指先が微かに震える。



「なあ、ゴン。隙を見つけるぞ」



ノブナガが運転しながら時折後ろを睨んでくる。マチの視線も鋭い。この状況で念を使えば一瞬でやられる。頭をフル回転させるが、脱出の糸口は見えない。



……ステラ、絶対お前を巻き込ませねえ。



心の中で呟く。ステラの笑顔が脳裏に浮かぶ。ヨークシンなんて危険な場所に行かせたくない。あいつを守るためなら、どんな手でも使う。ゴンに小さく目配せする。車のスピードが少し落ちた気がする。路地の角が見えた瞬間、胸が高鳴る。生きて帰るんだ、ステラに会うために。ここで終わるわけにはいかねえ。

車がアジトに到着すると団長たちはゴンとキルアと共にアジト内に入る。そこにはシズク、フェイタン、シャルナーク、コルトピ、フランクリン、ボノレノフ、そして知らんぷりをしてるヒソカの隣に、ステラがいた。











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