GI×テスト×プレイヤー






GIを手に入れるに辺りゴンの作戦を聞き、3人はオークションに行くことになった。ゴンもキルアもタキシードを着てばっちり決めてきていた。



「わあ……キルア、ゴン、タキシードかっこいいね」



ステラもドレスを着て微笑んでいる。夜明けの空のように薄い水色のドレスは、ステラの儚げな雰囲気を象徴していた。肩が開いたデザインで胸元と袖にはレースが施されている。リボンのチョーカーを首につけ、ピンクの髪を水色のリボンでツインテールにしていた。キルアはステラを見た瞬間、言葉を失った。彼の頬が僅かに赤く染まり、視線を逸らしながらも何度もステラに目を戻す。

頬を赤らめたまま、思わず息を飲んだ。いつものステラとは違う姿に、俺の心臓は妙なリズムを刻みはじめる。ポケットに手を突っ込んで視線を逸らしながらも、どうしても目が彼女に戻ってしまう。



「お、おう...…お前も...…その...…」



言葉につまりながら、なんとか平静を装う。だが、耳まで赤くなっているのがわかる。



「...…似合ってる」

「あ、ありがと……」



小さな声でつぶやくと、ゴンが俺の背中を叩き、からかうような笑顔を浮かべた。ステラは少し照れくさそうに頬を少し赤らめていた。



「とにかく行くぞ。オークション会場は警備が厳重だ」



会場へ向かう道すがら、ステラの横を歩きながら時折チラチラと見てしまう。ドレス姿の彼女が周囲の大人たちの注目を集めているのが気になって仕方ない。

タキシード姿のキルアをチラチラ見ていたステラはふと、キルアと目があってしまい、思わず赤くなって逸らしてしまう。



「なんかいつもと違ってさ、落ち着かないよね」



周囲の男達がステラを見て頬を赤らめていた。そして「今の子すげーかわいいな」「ばか、お前ロリコンかよ。たしかにかわいいけど」などという囁き声がする。

周囲の男たちの囁き声が俺の耳に届いた瞬間、背筋に冷たいものが走る。ステラが気づかないといいが...…と思いながらも、無意識に彼女に近づいていた。



「ああ、なんか変な感じだな」

「うん……でも、こういうのも新鮮でいいね」



小声で返事をしながら、俺は周囲を警戒する。オークション会場に向かう通路は人で溢れていて、どこからでも危険が迫ってくる可能性がある。ステラの周りの視線が増えてきたのを感じて、俺は咄嗟に彼女の手を取った。驚いたような表情を浮かべる彼女に、俺は少し照れながらも真剣な目で告げる。



「……えっ?」

「人混みで離れないように...…な」



囁き声はまだ続いている。ステラを見る男たちの視線に、本能的な危険を感じた。暗殺者として育った感覚が、今、役に立っている。周囲から漂う敵意めいたものに、俺の手は無意識にステラの手を強く握っていた。



「ゴン、急ごう。変な奴らが多いぜ」



オークション会場には幻影旅団のフェイタンとフィンクスがいた。彼らもタキシードにを身を包んでいる。



「えっ!? なんでここに!」



フェイタンとフィンクスはドレス姿のステラを見て、少し頬を赤らめている。



「なんだ、お前らも来てたのか」

「馬子にも衣装ね。似合てるよ」



それからキルアと手を繋いでるのを見て「へえ、そいつとそういう関係なのか?」とフィンクスが言った。



「えっ!? ち、ちがうよ!」



フィンクスの言葉に、カッと頭に血が上る。こいつら、ステラに気安く話しかけてんじゃねえ。握りしめたステラの手が、汗でじっとりと湿るのを感じた。



「……てめえらには関係ねえだろ。なんでここにいやがる。まさか、お前らもグリードアイランド狙いか?」



ドスの効いた声で言い放ち、ステラを自分の背中に隠すように一歩前に出る。フェイタンとフィンクス……こいつら、ただの客じゃねえ。全身から発せられるオーラが、そこらの念能力者とは桁違いだ。ゴンも俺の隣で警戒を強めている。こいつらとやり合うのは避けたい。だが、もしステラに手を出そうもんなら……。俺はいつでも動けるように、全身の神経を研ぎ澄ませた。



「ああ、オレ達もグリードアイランドに興味があってな、お前らとやりあう気はねえよ」

「なにステラにベタベタとしてるか? 恋人でもないなら離すがいいね」

「そう突っかかるなよフェイタン。オレたちの目的はグリードアイランドだろ」

「そっかグリードアイランド……。じゃあ中で出会うこともあるのかもね。



ステラの言葉に、俺は一瞬眉をひそめる。グリードアイランドの中でこいつらと出会う……か。考えたくもねえが、可能性はゼロじゃねえ。



「ふん、中で会うかどうかは知らねえが、邪魔だけはすんなよ。お前らが何企んでるか知らねえけど、ステラには指一本触れさせねえ」



俺はフィンクスとフェイタンに鋭い視線を向ける。目的が同じなら、衝突は避けられねえかもしれない。だが、今ここでやり合うのは得策じゃない。ステラの手をまだ離さず、彼女を庇うように立つ。心臓の鼓動が早まるのを抑えきれねえ。こいつらを前にして、緊張と警戒が全身を支配してる。



「ゴン、オークションに集中するぞ。さっさと済ませて次に進む」



会場内の空気が重いまま、俺たちは一時的に旅団との対話を打ち切り、オークションの方へ意識を向ける。この先、何があってもステラを守り抜く。それだけは絶対だ。



「オレたちの目的はオークションじゃないよ。テストプレイヤーに選ばれることだから」



ゴンはそっと耳打ちする。ゴンの計画とはこうだ、バッテラーという大富豪がGIを買い集めてテストプレイヤーを募集しているとのこと。そのテストプレイヤーに選ばれれば資金がなくてもGIに入れる。



「なるほど! ゴン頭いい!」



ステラはキルアの手を握り返しながら感心したように声を上げる。

ゴンの作戦を聞いて、俺の頭の中が一気にクリアになる。なるほど、オークションで競り落とすんじゃなくて、プレイヤー選考会に潜り込むのか。確かにそっちの方が確実だし、金もかからねえ。



「へえ、そういうことかよ。お前、たまには頭使うじゃねえか。テストプレイヤーね。面白そうだぜ。どんな奴らが集まるのか、見ものだな」



俺は感心して、ニヤリと笑う。そして、自分の手を握り返してきたステラの温かさに気づき、さっきまでの幻影旅団との緊張が少しだけ和らぐのを感じた。だが、今はそれよりもGIへの期待が勝っている。ステラの手をそっと握り直し、俺はゴンに向かって頷いた。



「よし、決まりだな。そのバッテラって奴の選考会、とっとと乗り込むぞ」



周りの男が「あのピンクのツインテールの子可愛いな。抱きてぇ〜」「やめとけ、男と手を繋いでるぞ、デキてるだろどう見ても」と囁いていた。ステラは何も知らずにキルアを見て微笑んでいる。



「ねえ、GIでも三人で冒険できるんだよね? そこで念の鍛錬もしたら、もっと強くなれるよね!」



耳に入ってきた周囲の声に、俺は一瞬で顔をしかめた。頭に血が上るのを感じる。ステラの笑顔を見て、やっと気持ちを落ち着かせる。



「ああ、もちろんだ。三人で行ける。それに念の鍛錬にもGIは最適らしいぜ」



手を繋いだままのステラの手を、少し強く握り返す。今の状況が「デキてる」ように見えるのは、別に否定するつもりはねえ。周囲をちらりと見回して、さっきの声がした方向に鋭い視線を投げかける。数人の男達が気まずそうに視線を逸らした。それからステラの顔を見つめて、俺は真剣な表情で続ける。



「おい、ステラ。これからテストプレイヤーの選考に行くぞ。頭と体、両方使う選考になるだろうけど...…お前なら余裕だろ。ゴンと俺と、三人で必ず選ばれてやる」



オークション後、10日に行われるGIテストプレイヤー選抜戦に向けて念の必殺技の特訓を各自それぞれで行う事になり、一旦ゴンと別れる。



「キルアはバッチリそうだね。自信満々って顔してる」



ステラの言葉に、俺は一瞬、オークション会場での緊張感を忘れて、フッと笑みを漏らした。自信満々?まあ、そう見えてんなら上出来だ。



「たりめーだろ。オレを誰だと思ってんだ?」



軽口を叩きながらも、心の中では気を引き締めていた。ゴンと離れて特訓するってことは、その間、ステラを守るのは俺一人になる。念の必殺技……ただ強くなるだけじゃダメだ。こいつを守れる技じゃなきゃ意味がねえ。



「お前こそ、大丈夫なのかよ? 泣きついても知らねーぞ」



わざと意地悪く言ってステラの反応を伺う。繋いだままの手の温もりが、俺に覚悟を決めさせていた。GIの冒険、そしてその先も、こいつの隣にいるのは俺でありたい。そのためには、もっと強くならねえと。



「わあ、すごい! もう必殺技できたんだ!  私の技が風だから、キルアの電撃に拡散バフが付けられるよ。GIで試してみない?」



キルアの指先から電気が走るのを見て、ステラはしゃいだ声を上げた。キルアは目を見開き、ステラのアイデアに興味を示した。指先からパチパチと小さな火花が散る。



「私達、念能力も相性バッチリそうじゃない? よーし、私も10日に向けて、念の修行し直さなくちゃね。三人なら絶対合格するよ、大丈夫!」



ステラの言葉に、俺は少し驚いて目を見開く。風で俺の電撃にバフ……か。そんなこと考えもしなかった。こいつ、時々、すげえ発想するよな。指先の電気を弄びながら、その光景を想像する。確かに、うまくいけば強力なコンボになるかもしれねえ。



「へえ、面白いこと考えるじゃん。試す価値はありそうだな」



俺は口の端を上げてニヤリと笑った。念能力の相性まで良いなんて、なんか運命みてえで悪くねえ。ステラがやる気に満ちた顔で「三人なら絶対合格!」なんて言うもんだから、俺も自然と力が湧いてくる。



「当たり前だろ。誰が落ちるかよ。……でも、油断はすんな。お前の修行、俺も付き合ってやる。半端な技じゃ承知しねえからな」



繋いだままの手に力を込め、ステラの紫色の瞳を真っ直ぐに見つめる。こいつが強くなるためなら、いくらでも力を貸してやる。GIで、そしてその先も、二人で……いや、三人で生き残るために。























そして10日のテストプレイヤーに三人とも合格し、晴れてGIに入る権利を得た。バッテラの豪邸で三人部屋を借りる。目の前にはゲーム機がある。ステラは嬉しそうにキルアとゴンの手を取り、バンザイをする。



「みんな揃って合格だね! 嬉しい! ちょっとドキドキするね。まさかゲームの中に入るなんて。ゲーム大好きだからちょっとワクワクしちゃうな……」



ステラの嬉しそうな顔を見て、俺もつられて口元が緩む。三人で合格。当たり前の結果だが、やっぱりこいつの笑顔を見ると安心する。ゲーム機を前にして目を輝かせる姿は、幻影旅団にいたなんて信じられねえくらい、普通の女の子だ。



「バーカ、ただのゲームじゃねえんだぞ。念で作られた世界だ。何が起こるかわかんねえ」

「はぁーい、わかってまーす」



そう言いながらも、俺自身も胸が高鳴るのを感じていた。未知の世界への冒険。ゴンと、そしてステラと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。そんな根拠のない自信が湧いてくる。



「ま、お前が足を引っ張らねえように、俺がしっかり見ててやるよ」



わざと憎まれ口を叩いて、ステラの頭をくしゃりと撫でる。その髪からふわりと甘い匂いがして、心臓が小さく跳ねた。この手を、この関係を、ゲームの中でも絶対に守り抜く。そう、改めて誓った。



「足引っ張るってなによ……鈍くさくて悪かったね。そんなこと言って、私のそばから離れたくないだけなんでしょ」



頭をくしゃりと撫でられながら言われるとムッとして言い返す。そのまま三人はGIの世界に入った。まずはチュートリアル場面を各々一人で行い、ステラは草原に降り立つ。静かにその場で佇み、他プレイヤーの視線を感じ取っていた。

ステラの言葉が脳内で反響する。……私のそばから離れたくないだけなんでしょ。当たり前だろ、なんて口に出せるはずもなく、俺たちはゲームの世界に飛び込んだ。チュートリアルは別々かよ、面倒くせえな。











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