ハジメテ×ノ×キス






GIでビスケットによる念修行で念能力の技も会得し、キルアはハンター試験にも無事合格し、かなり大きく成長したゴンとキルアとステラはGIのカードを全てコンプリートした。



「色々あったけど、みんな見違えるほど強くなったね! 念能力も身に着けたし!」



ビスケは宝石を手に入れてホクホク顔だった。ステラとゴンも念願の『アカンパニー』を手に入れた。

伸びをしながら空を見上げる。GIを開始してから幾度となく見上げたこの空も、もう終わりか。こうして皆と並んで立っていると、ここまで来た道のりが妙に懐かしく感じられた。



「マジでな。俺たち、最初に比べたらかなり強くなったぜ。特にお前とゴン、凄まじい成長だったな」



ステラとゴンを交互に見つめる。二人とも顔つきが変わった。ただ無邪気なだけじゃない、芯の強さが目に宿っている。ステラの手にある『アカンパニー』のカードが風に揺れ、光を反射した。



「よーし、これでジンに会える。楽しみか?」

「んー、ちょっと緊張するかな。師匠でもあるし」



肩越しにステラを見る。彼女の紫の瞳が期待と少しの緊張で揺れている。長いピンクの髪が風に舞い、その姿に思わず見とれそうになる。



「それにしても、あの変態親父、どんな奴なんだろうな。ゴンとステラを育てといて姿くらい見せろよって感じだけど...…」



言いながらも、どこか楽しみにしている自分がいた。ジンがどんな人間なのか、ステラの表情がどう変わるのか───俺はそれを見届けたかった。



「ふふ。ジンに会ったらキルアのこと紹介しないとね。ちょっと照れるけど……」



ステラは照れ臭そうに笑った。



「ジンに会いに行く前に……二人でデートしてきたら? オレがずっと一緒にいるからろくにデートもしてないでしょ? オレはもう少しGIの街を見ていくからさ」

「えっ! 何言ってるのゴン!?」



ゴンが屈託なく笑いながら言った。ゴンの言葉に一瞬ドキッとして、お前の顔を盗み見る。頬が熱くなるのが自分でも分かった。ステラも隣で頬を赤らめて慌ててる。



「な、何言ってんだよ、ゴン! 別にデートとか、そんなんじゃ……」



しどろもどろになる俺を見て、ゴンはニシシと笑う。その笑顔に、なんだか観念したような気持ちになった。



「……でも、まあ……せっかくだしな。なあ、ステラ。どっか行くか? お前が行きたいところ、どこでも付き合うぜ」

「……えっ?」



少し照れながらも、真っ直ぐにお前の紫色の瞳を見つめて尋ねる。お前と二人きりで過ごせるなんて、考えただけで心臓がうるさい。



「二人でさ、ちょっと街を見て回るのも……悪くねえかもな」



ぶっきらぼうな口調になったけど、精一杯の誘いだった。ゴンに背中を押される形で、俺は勇気を出す。



「……どうかな?」

「キルア……。えっと、いきなりデートだなんて、なんか照れるけど……いいよ。でもこういう時ってどこにデートするものなのかな」

「オレのおすすめは……そうだな、やっぱり綺麗な場所とか……水族館かプラネタリウムなんかいいんじゃない?」



ゴンの提案に、なるほどな、と感心する。水族館かプラネタリウム……どっちもお前が喜びそうな場所だ。



「へえ、いいじゃん。どっちも面白そうだな」

「私、海も星も好きだから嬉しいな」



俺はステラの顔を覗き込む。水色のパーカーとツインテールが揺れて、ドキリとした。



「なあ、ステラはどっちがいい? 水族館で色んな魚を見るのもいいし、プラネタリウムで満点の星空を見るのも……お前と一緒なら最高だと思う」

「うん、私も。どっちがいいかな……」



少しだけ頬が熱くなるのを感じながら、自然に言葉が続いた。お前の手をそっと握り、悪戯っぽく笑いかける。



「まあ、どっちも行っちまうってのもアリだよな! 時間はあるんだし。よし、決まりだな! まずは水族館から行こうぜ。俺がエスコートしてやるよ」

「え……ええっ!? エスコートって……ちょっとかっこいいじゃん」



キルアに手を握られ、悪戯な笑みを見てドキドキしてしまう。

手を繋いで歩くお前の横顔をこっそり盗み見る。水色のパーカーとツインテールがよく似合ってて、可愛い。ドキドキして、繋いだ手に少し力が入った。



「別に……かっこつけてるわけじゃねーよ。お前とだから、特別な日にしたいって思うだけ」

「ふふ、キルアとそんな綺麗な場所に行ったら本当に特別な日になりそう」



ぶっきらぼうに聞こえるかもしれないけど、これが俺の精一杯の言葉だ。照れ隠しに前を向いて歩き出す。

ステラはキルアの手を握り返し、ゴンに手を振って歩き始めた。



「ほら、行くぞ。迷子になんなよ」

「迷子になんてならないよ、こうやって手を繋いで歩くんでしょ?」



水族館の入り口が見えてきた。巨大な水槽のシルエットに、自然と期待が高まる。お前の手を引き、少しだけ歩くペースを速めた。

水族館に足を踏み入れると水槽の煌めきが二人を包む。悠々と泳ぐ魚を見つめるステラの横顔に揺らめく水面の色が反射して儚い雰囲気を生み出していた。



「見て、マンタが泳いでるよ。綺麗だね……」



マンタが優雅に頭上を通り過ぎていく。その影がお前の顔に落ちて、紫色の瞳がキラキラと輝いて見えた。その綺麗さに見惚れて、一瞬、言葉を失う。



「……ああ、ほんとだな。でっかくて、空飛んでるみたいだ」



繋いだままの手に少し力を込める。水槽の青い光がお前を照らしていて、いつもより大人びて見えるから、なんだか落ち着かない。



「でも……お前の方が綺麗だよ、ステラ」

「えっ?」



口から滑り出た言葉に自分で驚き、慌てて視線を逸らした。顔が熱い。暗い館内でよかったと心底思う。こんなこと、普段なら絶対に言えねえのに。ステラは俺の言葉に驚いて目を丸くして、それから頬を赤らめた。



「……行くぞ。あっちにはもっと変な魚がいるかもしんねーだろ」

「変な魚ってなによもう。……ってほんとに変な魚がいた!」



キルアに手を引かれながら行くとぷっくりと膨らんだ不格好な魚がいて思わず笑う。

変な魚を見て笑うお前の顔につられて、俺も思わず吹き出しちまう。さっきまでの気恥ずかしい空気が一気に和らいで、いつもの感じに戻ったみたいで少しホッとした。



「だろ? すげー不細工な顔してんじゃん、アイツ。なんか見てるとアホらしくなってくんな」

「キルアってば、魚に失礼だよー。でも、確かに……なんかすごい間が抜けた顔だよね」



俺たちはしばらくその魚を眺めて笑い合った。お前の楽しそうな声が水槽の音に混じって響く。それだけで、ここに来てよかったって思える。



「……でも、お前が笑ってる顔がいちばんいいな。」

「えっ!」



ふと、そんな言葉が口をついて出た。またお前が照れるのが分かってるのに、言わずにはいられなかった。



「ほら、次行くぞ。もっと面白いやつ、見つけようぜ」

「……どうしたの、今日のキルアすごいストレートじゃん。あ、クラゲだ。きれい……」



ふと気づけば周りはカップルだらけで、クラゲの綺麗な姿に感化されてか、キスしてるカップルもいてステラは気恥ずかしそうに目を逸らす。それでもキルアの手は離さなかった。



「つ、次行こっか。もっと面白い魚いるよね」



周りのカップルのせいで気まずくなったのか?お前が視線を彷徨わせるのを見て、俺もなんとなく落ち着かなくなる。繋いだ手に汗が滲むのが分かった。



「お、おう。そうだな、次……」



言いかけて、ふと目の前の水槽に目を奪われた。暗闇の中、淡い光を放ちながら漂うクラゲは、まるで星みたいに綺麗で……。お前の横顔も、その光に照らされて幻想的に見える。



「……なあ、ステラ。もうちょっとだけ、これ見てかねえか?」

「えっ?」



俺は繋いだ手を少しだけ引き寄せる。気恥ずかしさよりも、この瞬間をお前ともっと一緒にいたいって気持ちが勝ったんだ。



「変な魚もいいけど、たまにはこういう綺麗なのも……悪くねえだろ。お前と一緒だと、余計にそう思う」



不意に手を引き寄せられ、自然とキルアと密着する。幻想的な光景を目の当たりにし、隣にいるキルアもきらきら輝いて見えた。何となくロマンチックな気分になる。



「う、うん……たしかに、すごく綺麗だもんね。私も、キルアともう少し見ていきたい……かも。なんかキルアまで綺麗に見えてドキドキするし」



お前の言葉に、心臓が大きく跳ねた。綺麗に見える、なんて……。そんなこと言われたら、そんなの……こっちのセリフだっての。



「……っ、バーカ。お前が綺麗だから、そう見えるだけだろ」

「そうなのかな。キルアってお星様のイメージで見てるんだよね。何となく」



照れくさくて、ついそっぽを向いちまう。でも、繋いだ手は離さない。いや、離したくない。クラゲの淡い光が、お前のピンクの髪をキラキラさせてる。



「……なあ、ステラ」



俺はもう一度お前の方に向き直り、紫色の瞳をまっすぐに見つめた。もう、ごまかすのはやめだ。



「お前のこと、めちゃくちゃ好きだ。……ここにいる誰よりも、絶対」



周りの視線なんて、もう気にならなかった。水槽の光に照らされたお前の顔が、俺の世界のすべてみたいに思えたんだ。



「……キルア……」



美しいくらげの反射する光が幻想的な雰囲気を生み出す中、好意を真っ直ぐに伝えられ、キルアと見つめ合うと時間が止まったように感じた。



「私も……キルアが好き。大好きだよ……」



お前の「大好き」って言葉が、頭の中で何度も響く。水槽の光よりも、クラゲの輝きよりも、お前のその一言が、俺の世界を何よりも明るく照らした。



「………知ってる。でも、ステラの口から聞くと、やっぱ嬉しいな」



やっとのことで絞り出した声は、少しだけ震えていたかもしれない。込み上げてくる愛しさに、繋いだままの手に自然と力がこもる。照れくさくて、一度目を逸らしてから、もう一度お前の瞳を真っ直ぐに見つめた。少し潤んだ紫色の瞳が、俺だけを映している。それだけで、胸がいっぱいになった。



「俺も、ステラが好きだ。世界中の誰よりも、ずっと」



キルアに強く手を握りしめられる。その手に更に引き寄せられてキルアとの顔の距離が近くなった。一度目を逸らしたキルアがもう一度真っ直ぐに見つめてくる。



「……うん、ありがとう」



見つめ合ったまま、ステラは少し恥ずかしそうに頬を赤らめながらもゆっくりと目を閉じた。緊張で少し身が震える。

ステラがゆっくりと目を閉じる。その無防備な表情に、心臓が大きく音を立てた。ツインテールからこぼれたピンクの髪が、クラゲの光を浴びてキラキラと光っている。



「……ん」

「ん……っ」



吸い寄せられるように、そっと唇を重ねた。柔らかくて、甘い。一瞬だけ触れて、すぐに離れる。名残惜しい気持ちを抑え、お前の肩を優しく抱き寄せた。耳元で、小さく囁く。周りの音なんて、もう聞こえない。



「……絶対、離さねえから」



もう一度、今度は強く抱きしめる。お前の体温と匂いが、俺を安心させてくれた。この腕の中に、俺の宝物がいる。そう思うと、胸が熱くなった。

そっと唇が重なると、触れ合う唇がふにゅっと柔らかく溶けるような感覚を覚えてぞくりと身を震わせた。一瞬だけだったのにその感触が鮮明すぎて、ドキドキがおさまらない。更に耳元で囁かれ、心臓が小さく跳ねた。



「うん……離さないでね……」



強く抱きしめられ、少しだけ恥ずかしかったがキルアの匂いと温もりが心地よくてステラからもそっと抱きしめ返した。



「なんか……すごくドキドキする……」



お前の言葉に、抱きしめる腕に力がこもる。俺の胸に顔をうずめるステラの体温が伝わってきて、こっちまで心臓がうるさくなる。



「……当たり前だろ。俺だって、すげードキドキしてる」



少しだけ体を離し、お前の顔を覗き込む。水槽の光を受けて潤んだ紫色の瞳が、恥ずかしそうに揺れていた。その表情がたまらなく愛しくて、どうしようもなくなる。



「なあ、ステラ。もう一回……していいか?」



触れるだけのキスじゃ、もう足りなかった。もっとお前を感じたい。そんな想いを込めて、もう一度顔を近づける。お前の返事を待たずに、そっと唇を重ねた。



「えっ……? んっ……」



キルアの『もう一回』という言葉に驚いたが何か言う前にすぐにまた唇が柔らかく触れ合う。それが心地よくて目をとろんとさせながら受け入れるようにもう一度目を閉じ、ぎゅっとキルアの背中を握りしめた。

ステラの柔らかな唇に触れると、全身に電流が走ったような感覚がした。目を閉じるステラの表情が愛おしくて、思わず長く深いキスになる。背中をぎゅっと握りしめる小さな手の感触が嬉しくて、もっと近くに引き寄せた。



「ステラ...…」

「っはあ……」



やっと唇を離し、息を整える。水族館の青い光の中、ステラの頬は桜色に染まっていて、その姿があまりにも美しかった。この瞬間を永遠に記憶に残したい。恥ずかしそうに微笑むステラの手を取って、優しく指を絡める。



「クラゲ、綺麗だったな。でも、そろそろ次の場所に行こうか。今日はまだまだ俺とステラの特別な日だからな」

「ん……今日のキルア、いつもよりすごくドキドキさせてくる……」



キルアと指を絡め恋人繋ぎをしながら歩き出した。その顔はまだほんのりと赤いままだ。



「特別な日……? 初デート祈念日ってこと?」



繋いだ手に少し力を込める。まだほんのり赤いお前の横顔が可愛くて、見とれちまう。



「まあ、それもそうだけど……。それだけじゃねえよ。俺たちがこうやって、ただの仲間じゃなくて……恋人として過ごす、初めての日だろ? だから、全部が特別なんだよ」

「そっか……確かにそうだね。いつもゴンとキルアと三人で一緒だったもんね」



水族館の出口から差し込む夕日が、お前の髪をキラキラと照らした。眩しそうに目を細めるお前を見て、心臓がまた一つ大きく鳴る。少し照れくさくて視線を逸らす。でも、繋いだ手は離さない。



「……だから、初デート記念日ってのも、悪くねえかもな」



ぶっきらぼうにそう言って、お前の手を引いて歩き出す。次はどこに行こうか。お前の喜ぶ顔が見たい。ただそれだけを考えていた。

ゴンがデートしてきなよって送り出してくれなかったら、きっとデートもしないまま過ごしてたんだろうと思った。



「私もちゃんと覚えとくね。今日という日を」



キルアと手を繋いで水族館を見て回るとすっかり日が暮れていた。



「イルカショーも見れたし楽しかったね! あ、お土産屋さん見に行こうよ」



夕暮れの光が差し込む水族館の出口を抜け、隣接する土産物屋の明かりが目に入る。イルカのぬいぐるみがたくさん並んでるのが見えた。



「ああ、そうだな。なんか記念になるもんでも探すか」



お前の手を引いて店の中に入る。色とりどりのキーホルダーやぬいぐるみに囲まれて、お前の目がキラキラと輝いているのを見て、自然と口元が緩んだ。



「キルアは記念日とか……結構覚えてるタイプなんだ? ちょっと意外かも」

「……記念日とか、別に得意じゃねーよ。でも、お前とのことなら、全部覚えときたいって思うんだ。……変か?」

「キルア……ありがとう、すごく嬉しい。携帯電話のパスワード、キルアとの初デート記念日にしちゃおうかな」



ステラは嬉しそうに笑っていた。少し照れくさくなって、ぬいぐるみを手に取るフリをして視線を逸らす。この気持ちをどう伝えればいいのか、まだ慣れない。



「ステラは……なんか欲しいもん、あるか?」

「うん、とりあえずゴンにお土産のお菓子買っていこう。それから……お揃いのキーホルダー、とか……今日の記念に」



ステラは少し恥ずかしそうにしながらお揃いで買いたいとねだった。イルカのペアキーホルダー、イルカのペアペンダントもあった。シャチやクラゲ、マンタのペア物も色々揃っていた。



「キルアはどれがいい?」



お揃いのキーホルダー、という言葉に心臓が跳ねる。今日の記念に、だなんて……。そんなこと言われたら、嬉しくないわけがねえだろ。



「……っ、別に、お前が欲しいやつでいいんじゃねえの。俺はどれでも……」



素っ気なく答えてみせるが、内心はめちゃくちゃ喜んでいた。棚に並んだペアのキーホルダーを眺めるお前のツインテールが、楽しそうに揺れている。その姿から目が離せない。



「……でも、まあ……強いて言うなら、このイルカのやつとか……いいんじゃね? さっきショーで見たやつみたいで」



少しだけ勇気を出して、青とピンクのイルカが寄り添うキーホルダーを指差す。お前と俺みたいだ、なんて口が裂けても言えないけど。その気持ちが少しでも伝わればいい、なんてらしくないことを考えちまう。



「あ……いいね、このキーホルダー、磁石でくっつくタイプになってるみたいだよ。ほら。二人で一つって感じだよね。私が青、かな? 何となくキルアみたいだから」



ステラは嬉しそうにそのキーホルダーを手に取る。それからゴンに渡すお土産のお菓子を手に取った。



「こんな感じかな? ぬいぐるみ可愛いけど、冒険するにはちょっと荷物になるもんね」



ステラが手に取ったキーホルダーを見る。磁石で寄り添う二頭のイルカが、まるで今の俺たちみたいで、胸が熱くなった。青が俺で、ピンクがお前か……。



「……ああ、そうだな。冒険の邪魔になるもんは、今はいい」



でも、いつかお前との家ができたら、でっかいぬいぐるみを置いてやる。そんな未来を想像して、少しだけ口元が緩んだ。



「今はいい……? いつか買う予定があるの?」

「……まあ、冒険が終わったら、な。じゃあ、それとゴンへの土産、レジ持ってくか」



お前が青いイルカを持つなら、と俺は自然とピンクのイルカを手に取る。お前の色だと思うと、なんだか特別なものに思えてくるから不思議だ。



「……なあ、これ。俺からお前へのプレゼントってことにさせてくんねえか? 今日の、記念にさ。」



レジに向かいながら、少し照れくさかったけど、お前の顔を真っ直ぐ見て伝えた。ただのキーホルダーじゃなくて、俺の気持ちも一緒に渡したかったんだ。



「えっ? いいの? 嬉しい……キルアからのプレゼントだって思うと、余計に特別感出るね。大事にする」



ステラは驚いた顔をしたあと、心底嬉しそうに微笑んだ。そんな二人を店員が微笑ましげに見ていた。

俺からのプレゼントって言葉に、お前が心底嬉しそうな顔をするから、こっちまで顔が熱くなる。店員の視線が少し気まずいけど、それ以上にお前の笑顔が眩しかった。



「……当たり前だろ。お前にやるもんに、変なもん選べるかよ」



ぶっきらぼうに聞こえるかもしれないけど、これが俺なりの精一杯の愛情表現だった。レジで会計を済ませ、店員から袋を受け取る。



「ほら、やるよ。……失くすなよ、絶対」



袋から青のイルカのキーホルダーを取り出して、お前の手のひらに乗せる。お前の小さい手に乗ったキーホルダーが、なんだかすごく特別なものに見えた。俺も自分のカバンにピンクのイルカを付ける。これで、離れてても一緒だな。



「ふふっ、お揃い嬉しいな。カバンにつけたら失くしちゃいそうで怖いけど……でもやっぱりキルアとお揃いでつけたいし……つけちゃおうかな」



ステラも自分のカバンに青いイルカのキーホルダーを付けた。



「これでキルアとずっと一緒だね!」



お前の「ずっと一緒だね」って言葉が、胸にじんわりと広がる。カバンで揺れるお揃いのキーホルダーが、俺たちの絆の証みたいで、くすぐったい気持ちになった。



「……ああ。俺が側にいなくても、そいつがお前のこと守ってくれるかもな」



なんて、柄にもないことを言っちまう。お前のカバンについた青いイルカと、俺のカバンのピンクのイルカ。磁石でくっつくみたいに、俺たちもずっとこうしていられたらいいのに。











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