ニジ×シケン×カイシ
12時になったため、次の二次試験が始まった。ブハラとメンチという2人の美食ハンターが指定する料理を作り、彼らを満足させなければならないらしい。美食ハンターねえ……。見た目はブハラって方がヤバそうだけど、あのメンチって女、相当なキレ者だ。審査はこっちの方が厳しいだろうな。試験官の説明を聞きながら、俺は眉をひそめた。
「料理かよ……俺、料理なんて作ったことないんだよな。家じゃいつも執事が全部やってたし」
クラピカは冷静に状況を分析していた。試験官の言葉を聞き終えると、周囲を一度見回し、必要な調理器具と材料を手早く確認する。
「料理か..….私はあまり得意ではないが、臨機応変に対応するのもハンターの資質だろう。この試験、単に料理の腕前だけを見るものではない。素材の選び方、手順の効率性..….全てが評価対象になるはずだ。慌てず丁寧に進めよう」
クラピカは袖をまくりながら、真剣な眼差しで準備を始めたがそれを見て俺は頭をかいた。周りを見渡すと、レオリオが意気揚々としているのが目に入った。
「おい、レオリオ、なんか得意げだな。料理でもできるのか?」
「おう、自慢じゃないが料理なんてしたことないぜ!」
「駄目じゃん……それ……」
思わずスバルがツッコミを入れるとキルアは興味失せたとばかりにさっさと試験管の方に顔を向ける。
「で、お題は何なんだ? 早く作って食わせろよ。腹の虫が鳴ってうるせえ」
俺がそう言うと、ブハラがニヤリと笑って課題を発表した。二次試験の課題は「豚」。ただし、ただの豚じゃねえ。世界で最も凶暴な品種と恐れられている「グレイトスタンプ」の丸焼きだ。面倒くせえな。
「……ったく、人使いの荒い試験官だな。行くぞ、スバル!」
ゴンも釣り竿を構え直し気合十分といった感じだ。スバルもすぐに靴を操作してローラーを出し、ローラーシューズで滑り出す。
「へえ! スバルのその靴いいね、かっこいい! あとでみせてよ!」
「いいよ、ゴンのその釣り竿も見せてくれたらね」
ゴンとスバルが和気藹々と話しているのを横目に、俺は舌打ちした。こいつら、これから豚と殺し合いだってのに、呑気なもんだぜ。
「おい、いつまで喋ってんだ。さっさと行くぞ」
俺はスケボーに飛び乗り、二人を追い越して森の中へ突っ込んでいく。グレイトスタンプがどこにいるかは知らねえが、まずは見つけねえことには始まらねえ。
「一番デカくて美味そうなやつを仕留めるのは、この俺だからな!」
背後でゴンが「負けないぞ!」と叫んでいるのが聞こえる。スバルもついてきてるみてえだな。まあ、あいつのローラーシューズも、こういう場所じゃ結構役に立つか。せいぜい、豚に踏み潰されねえように頑張れよ。
こうしてスバル達は苦労することもなくそいつを倒し、課題をクリアした。ブハラは豚の丸焼70頭をすべて完食した。
「無事クリアできたのはいいけど……あんなに大きな豚なのに、よく70頭も食べられるよね。あの試験官」
スバルは呆れたように呟く。ブハラの食いっぷりを見て、俺も呆れてため息をついた。底なしかよ、あの腹は。まあ、おかげでこっちの審査はあっさり合格だったみてえだけどな。
「ああいうのを『化け物』って言うんだろ。美食ハンターってのは、みんなああなのかね」
「クラピカも、明らかに奴の体積より食べた量の方が多い! って驚いてたね!」
スバル、キルア、ゴンの順に感想を述べる。そのあと周囲を見回し、メンチという女性試験官が優雅に立っている。
問題はもう一人の方だ。メンチは腕を組んで、並べられた豚の丸焼きに一切手を付けようとしない。不機嫌そうな顔で、受験者たちを睨みつけている。ヤな予感がするぜ。
「……ったく、どいつもこいつも同じじゃねえか。創意工夫ってもんがねえんだよ! 全員、不合格だ!」
メンチの鋭い声が響き渡り、会場の空気が一瞬で凍りついた。ほらな、やっぱりこうなった。しかし、審査委員会のネテロ会長がやって来て、新しい課題が設けられることになった。引き続き試験を任されたメンチは、審査員実演という条件を課せられた。
メニューは“ゆで卵”。使用するのは、谷の間に糸を張って卵をつるす習性をもつクモワシという鳥の卵である。それを手に入れるには、崖を飛び降り、上手く糸につかまって卵を取った後、岩壁を登って戻って来なければならない。この試験をクリアできたのは、スバル達を含む42人だった。
「ゆで卵美味しかったな」
「ああ、腹の足しにはなったな。つーか、あんな崖っぷちまで行かせるなんて、めちゃくちゃだぜ」
「つまんない感想だな」
俺は最後の卵を一口で頬張り、殻を足元に放り投げた。まあ、普通に美味い。けど、命懸けで取りに行った割には、感動は薄いな。メンチのやつ、自分で手本を見せるとか言って、すげえ身軽さで卵を取ってきやがった。あの女、ただの料理人じゃねえな。
「これで二次試験は合格か。次はどんな面倒が待ってんだか」
俺は軽く伸びをしながら、隣にいるスバルを見る。こいつも、あの高さから飛び降りるなんて、なかなか度胸あんだな。見直したぜ、少しだけ。
「ま、お前もよくやったんじゃねえの。足手まといにならなくてよかったな」
「足手まといってなんだよ……」
スバルはむっと眉を寄せた。二次試験の合格者たちは、飛行船に乗って三次試験会場を目指していく。空はすでに暗くなり、星が輝く夜になっていた。
「次の目的地へは明日の朝8時到着予定です。こちらから連絡するまで各自自由に時間をお使いください」
飛行船の窓から見える夜景に、俺は少し見とれていた。ゾルディック家の飛行船から見る景色とは、なんだか違う。もっと自由で、どこまでも行けるような気がした。
キルアは元気よく駆け出しながら「ゴン! スバル! 飛行船の中探検しようぜ」と言った。その言葉にゴンは跳ねるように立ち上がり、窓から見える星空に見とれた。
「わぁ、すごい! こんなに高いところから星を見るのは初めてだよ!」
ゴンはそう言ってキルアとスバルに向かって笑顔を振りまけば、廊下へと駆け出す。
「よーし! 探検だ!この飛行船の一番上まで行ってみようよ! てっぺんからの景色、絶対きれいだよね!」
「いいね! 僕も見てみたい!」
「俺も!」
そうして元気な子供三人が駆け出していくのを、レオリオとクラピカは疲れた顔で見送ったのだった。
「元気な奴ら……。オレはとにかくぐっすり寝てーぜ」
「私もだ。おそろしく長い1日だった」
レオリオとクラピカはぐったりと壁側に腰を下ろす。そこにトンパがやって来て、気を抜くなとかそんなことを話してて去っていったが程無くして二人はぐっすりと眠りに落ちた。
「でも気をつけろよ。他の受験者たちもうろついてるはずだ。特にヒソカみたいな危険な奴らにはなるべく関わらないほうがいい」
キルアは周囲を警戒しながら廊下を進み、時折壁や天井の構造を興味深そうに観察した。
「この飛行船、相当デカいな。エンジンルームとか操縦室が見れたら面白そうだ」
「いいね! 見てみたい! どこにあるのかな?」