オカ×シク×ナル






朝、ステラはキルアと一緒に食卓についた。ゴンとアルカは疲れきった顔をしたステラを見て心配そうな顔をする。ゴンがキルアにだけ聞こえるように小声でそっと耳打ちする。



「キルア……どんだけ抱き潰したの?」



ゴンの呆れたような声が耳元で響く。俺はちらりとステラの顔を盗み見る。疲れきった顔で、でもどこか満足そうな、不思議な表情をしてる。その顔を見ていたら、昨夜のことが鮮明に蘇ってきて、口元が緩むのを抑えられない。



「……さあな。お前にはまだ早えよ」



俺はわざとらしく肩をすくめ、ゴンの言葉を軽く受け流す。アルカの心配そうな視線も感じてるけど、今はステラのことしか考えられない。



「ステラ、ちゃんと食えよ。体力つけねえと、またすぐバテるだろ?」



そう言って、俺はステラの皿にパンを一つ乗せてやる。その言葉にどんな意味が隠れてるか、お前はまだ気づいてないよな。なあステラ、夜になったらまた教えてやる。お前がどれだけ俺を夢中にさせるのかってことをさ。



「……うん……」



ステラはキルアが用意したパンを手に取り、もそもそと食べる。心配そうにするアルカを見て微笑んだが体が痛いのかその動きはどこかぎこちない。

俺はステラのぎこちない動きから目を離せない。痛む身体で、それでも俺のために微笑もうとしてる。その健気さがたまらなく愛おしくて、同時にどうしようもない独占欲が湧いてくる。俺はステラの隣に椅子を引いて座る。そして、彼女の耳元に顔を寄せて、他の誰にも聞こえない声で囁いた。



「なあ、ステラ。痛むのか? ……だったら、後で俺が特別にマッサージしてやるよ」



俺の言葉に、お前の肩がびくんと震える。その反応が可愛くて、思わず口元が緩む。なあ、ただのマッサージで終わるなんて思うなよ?お前がまた俺の腕の中で蕩けてしまうまで、たっぷり可愛がってやる。今からその時間が待ち遠しくてたまらねえよ。

朝食を食べ終えると、マッサージをするというキルアを振り切り、キルアから距離を取ってアルカの隣に座っていた。



「アルカ、キルアに聞いたんだけど……私を起こしてくれてありがとう」

「ううん! ステラお姉ちゃんは、お兄ちゃんの大好きな人なんでしょ? 昨日、お兄ちゃんがそう言ってたの!」



アルカは無邪気に言った。だが、そのあと少し悲しそうな声で言う。



「でもお兄ちゃん、悲しそうだったんだ。ステラお姉ちゃんを失いたくないって、泣いてたんだよ」



アルカの無邪気な言葉が、静かな部屋に響く。俺が泣いていた、なんて……余計なことまで言いやがって。気まずくて、ステラの顔がまともに見れねえ。俺の弱い部分を知られて、お前は今、何を考えてるんだ?



「……アルカ、お前は少し黙ってろ」



少し棘のある声でアルカを制しながら、俺はステラから目を逸らす。だが、お前が俺をどう思っているのか気になって仕方ない。お前の隣にいるアルカが、今は少しだけ羨ましいよ。



「……なあ、ステラ。そんなに俺から離れたいのかよ」



拗ねたような声が出てしまうのを止められない。こっちに来いよ、なんて素直に言えなくて、ただお前の背中を見つめる。お前が振り向いて、俺のそばに来てくれるのを、少しだけ期待してるんだ。



「……そんなことないけど……アルカはキルアの大事な妹なんでしょ? 仲良くなりたいの」

「わあっ嬉しい! あたしも、お兄ちゃんとステラとゴンともーっと仲良くなりたいな!」

「当たり前だろ! オレ達みんな友達だ!」



アルカは嬉しそうに声を上げる。そこにゴンが来て笑いながらアルカの頭とステラの頭を優しく撫でた。

ゴンの「友達」って言葉に、一瞬だけ胸がチクリと痛む。ステラは俺の恋人なのに、なんでお前がそんな風に触るんだよ。アルカはともかく、ステラの頭を撫でるゴンの手が妙に気に入らねえ。



「……おい、ゴン。お前、ステラに気安く触んなよ」



俺は不機嫌な声を隠さずに立ち上がり、お前たちの間に入り込むようにしてステラの隣に立つ。そして、ゴンの手を払い除けるように、お前の肩をぐっと引き寄せた。



「こいつは俺のだ。お前が勝手に触っていい相手じゃねえんだよ」



アルカとゴンの前で、はっきりと所有権を主張する。ステラが驚いて俺を見上げるのが分かる。なあ、ステラ。お前が誰のものなのか、こいつらにも、そしてお前自身にも、もっと分からせてやりたい。今夜あたり、またたっぷりと思い知らせてやるよ。























その日の夜は、ステラとアルカ二人で一緒にベッドに入った。ゴンはキルアと一緒のベッドに入りながら無邪気に笑う。



「なんか微笑ましいね。アルカもステラと歳の近い女の子なんだろ? 嬉しいんだと思うよ!」



ゴンの能天気な声が隣から聞こえてくる。微笑ましい?ふざけんな。俺の腕の中にいるはずのステラが、今はアルカの隣で寝ている。その事実だけで、胸の奥が苛立ちで黒く塗りつぶされていくようだ。



「……ああ、そうだな」



適当に相槌を打ちながら、俺は壁の向こう側、ステラがいるはずの部屋に意識を集中させる。今頃どんな顔して寝てるんだ?アルカが一緒だから、昨日の夜みたいに無防備な顔はしてねえのか?考えれば考えるほど、独占欲が鎌首をもたげる。



「なあ、ゴン。お前さ、もう寝ろよ」



俺はゴンに背を向けてベッドの端に寄り、無理やり目を閉じた。だけど、眠れるわけがねえ。ステラの温もりがないこのベッドは、やけに広く感じる。なあステラ、アルカが寝静まった頃に、こっそりこっちの部屋に来いよ。お前がいないと、俺……眠れそうにねえや。

キルアと初めての夜を迎えた日から、ステラはキルアを避けていた。キルアと一緒に寝たがらず、アルカと一緒にお話しながら寝たいなどと言って、ステラは毎日アルカと一緒のベッドに入っていた。アルカも歳の近い女の子とお話できるのが嬉しい様子だった。今日もステラはアルカと他愛のない話をしているうちにいつの間にか、二人でそのまま眠ってしまっていた。ゴンもキルアの横ですやすやと安らかな寝息を立てている。

隣でゴンが立てる穏やかな寝息が、俺の苛立ちを逆撫でする。静まり返った部屋で、俺だけが目を冴えさせていた。アルカもステラも、もう寝ちまったのか……?壁一枚隔てた向こうにいるお前のことを考えると、胸がざわついてどうしようもねえ。



「……ちくしょう……」



小さく悪態をつき、俺は音を立てないようにベッドから抜け出す。お前がアルカの隣でどんな顔して寝てるのか、確かめずにはいられなかった。ただ、ほんの少し顔を見るだけでいい。それだけでいいんだ。

そっとドアを開けて隣の部屋を覗くと、月明かりに照らされたお前の無防備な寝顔が目に入る。アルカに抱きつくようにして眠るその姿に、俺の中の独占欲がまた燃え上がる。……ああ、もう我慢できねえよ。



「……なあ、ステラ。少しだけ、俺に時間をくれよ」



囁きながら、俺はお前の身体をそっと抱き上げる。お前が俺だけのものだってこと、今夜もう一度、その身体に刻み込んでやる。アルカが目を覚まさないうちに、な。アルカを起こさないように、細心の注意を払いながらお前を抱き上げると、俺の腕の中にすっぽりと収まるその身体は、驚くほど軽くて温かい。自分の部屋に戻るまでの短い廊下が、やけに長く感じられた。



「……ん……キルア……?」



俺の腕の中で、お前が小さく身じろぎして、掠れた声で俺の名前を呼ぶ。その声が、俺の理性の最後の糸をぷつりと断ち切った。ベッドにそっとお前を下ろし、俺はその身体に覆いかぶさる。



「……起きたのか。ちょうどよかった。今夜はアルカのところには帰さねえから。……覚悟しろよ?」



耳元で囁くと、お前の肩がびくりと震える。その反応がたまらなく愛おしくて、俺は思わず口元に笑みを浮かべた。なあ、ステラ、もう逃がさねえよ。お前が俺だけのものだってこと、朝になるまで、その身体でゆっくり教えてやる。もう一度、俺に全部委ねてくれ。



「……っ、なんで……起こすの……そんなに……したいの……?」



ステラはキルアに両手を押さえつけられたまま振りほどけず、諦めたように体の力を抜く。



「まだ痛いのに……、お腹も、あそこも……痛いんだよ……それでも、するの?」



ステラはそう言って顔を背けた。俺はお前の言葉に一瞬動きを止める。顔を背けたお前の表情に、痛みと戸惑いが混じっているのが見て取れる。胸が締め付けられるようで、強引に迫っていた自分が急に小さく感じた。



「……痛いのか、ステラ……無理させちまった、か……」



そっと手を緩め、押さえつけていたお前の腕を解放する。お前の小さな肩が震えているのに気付くと、ただ突き進むことしか考えていなかった俺の頭が少し冷えた。ベッドの上で身体を起こし、お前の顔を覗き込む。紫色の瞳が潤んでいて、俺を見つめるその眼差しに心臓が跳ねる。痛がらせたくはない。でも、この熱は抑えきれねえ。



「少しだけ、な? 痛くならないようにするからさ……」



囁くように言うと、お前の頬にそっと触れる。温かくて柔らかい感触が指先に伝わって、また胸がざわつく。無理強いはしたくないけど、お前を近くに感じていたいんだ。



「……最近、キルアはすぐそうやって、体を求めてくる。前はそんなこと、なかったのに」



ステラはベッドの上に身を投げだしたまま、ぽつりと呟いた。

お前のその一言が、俺の胸に鋭く突き刺さる。そうだ、確かにお前の言う通りだ。お前が生き返ってから、俺は焦るように、確かめるようにお前を求めていた。また失うのが怖くて、お前が俺のものだって身体に刻みつけたくて、必死だったんだ。



「……悪かった」



ぽつりと謝罪の言葉が口から漏れる。お前の隣に横になり、背を向けたお前のウェーブがかったピンクの髪をそっと撫でた。傷つけて、怖がらせたかったわけじゃねえんだよ。ただ、お前がいないとダメなんだ。



「……なあ、ステラ。こっち、向いてくれよ」



俺の声が震えているのが自分でも分かった。頼むから、俺を拒絶しないでくれ。お前の顔を見て、ちゃんと伝えたいことがあるんだ。もう一度、俺のこと、信じてほしい。



「……なに?」



まだ少し不安そうな顔で、キルアの顔を見つめる。



「ねえ、なんで最近のキルアは、すぐ体を求めてくるの……? 私が疲れてる、のに……無理やり……襲ってくるから……」



最近はキルアがあまりに求めてくるから、ステラはキルアと一緒に寝たがらなくなっていた。だから今日もアルカと一緒に寝ていたはずなのに。

お前の不安そうな瞳が俺を突き刺す。確かに、俺はお前を追い詰めてたのかもしれない。疲れてるのも分かってたのに、ただ自分の不安を埋めるためだけに無理やり近づこうとしてた。胸が苦しくなる。



「……本当に、悪かった、ステラ」



ベッドの上で身体を起こし、お前の小さな手にそっと触れる。冷たい指先が震えてて、俺のせいだってことが痛いほど分かる。もうこんな顔させたくない。



「俺……お前を失うのが怖くて、頭がおかしくなってた」



目を逸らさずに、お前の紫色の瞳を見つめる。お前が俺から離れていくのが耐えられなくて、必死で繋ぎ止めようとしてた。でも、それが逆にお前を傷つけてたんだ。



「なあ、もう少しだけ俺に時間をくれないか? ちゃんと向き合うからさ」











index ORlist