その心に触れられない



「俺って嫌われてるのかな……」



ぽつりと呟かれた加州の言葉に燭台切がまさかと返す。



「でもさ、最近俺が怪我すると黙って手入れ部屋行くようにだけ言っていなくなるし、俺がお洒落してもただ可愛いしか言ってくんないし」



可愛いって言ってもらえるのは嬉しいけど俺だってそれだけ言われれば喜ぶような馬鹿じゃない。着飾っても、逆にぼろぼろになってへこんでても薄い反応。前に新しい爪紅を買ってくれた時も薬研に言われたからって言ってたし。やっぱああいう女みたいに可愛いほうがいいのかな。
お洒落したいって伝えたら欲しいものあったら言って、とだけで主から何かしてくれる事はなかった。考えれば考えるほど自信がなくなっていく。



「もしかして主、優しいから嫌々俺に付き合ってくれてるだけで本当は嫌がってるのかな」

「それは考えすぎだよ。こうして最初に手入れ部屋に入れられたのも君の事を思ってだろう」

「効率がいいからだって」



爪紅を塗ってほしいと言った時は断られた。服を見繕ってほしいと言われた時も断られた。

可愛く着飾ってねって、言ったのに。



「燭台切、いるー?」

「っ!」

「ああ、いるよ」



すっと障子が開いて顔が覗いた。けれど、視線は俺でなく燭台切に向いたまま。



「今日の献立、お鍋と魚の煮付けどっちにするの?」

「魚の煮付けにするつもりだよ」

「じゃあ先に準備してるね」



燭台切は今日の食事当番だ。主もたまに手伝う事があるから別におかしくはない。けれど疎外感を感じて少し俯いた。

back/TOP