温かさを少しも感じられない



「居るんだろ?」

「悪いな。盗み聞きするつもりじゃなかったんだが」

「夕食の片付けをしててね。薬研を引き止めたのは僕だよ」

「構わないさ」



お二人さんはどうだいと山姥切にしたのと同じように誘うと、今度はいい返事が返ってきた。



「こうして酒盛りするのは久々だな。あの宴会以来だ」

「俺もだぞ」

「僕も同じく。というか懐かしく感じるけど、割と最近だよね」

「それもそうだな」



この本丸に6人が揃って、これからは基本的にこの面子でやっていくと決まった時の事だ。親睦会だなんて名目で夜中までどんちゃん騒ぎだった。大将は眠いし酒は苦手だと早々に帰ってしまったが中々に楽しくやったのを覚えている。



「しかし、山姥切君には悪いことをしたかなぁ。あんなに気にするとは思ってなくて」

「まさか燭台切まで一枚噛んでたとは、こりゃ驚きだ」

「一枚噛むとは違うんだけどね……まあ似たようなもんか」

「燭台切も山姥切に何かたずねられたのか?」

「逆だよ」

「こりゃ俺っちも驚きだな」



縁側からぶら下げた足を持ち上げ胡座をかく。少し困ったように黙っていた燭台切も俺と鶴丸に観念したように口を開いた。



「今日の手入れ部屋で加州君に主君が素っ気ないって言われてね。なんか気になっちゃって山姥切君に話してみたんだ」

「確かに大将、山姥切のあの性格気にしてる割には何も言わねぇよな」

「そんな素振りあったか?」

「ああ、初めてうちに来た時と手入れ部屋での一件の時な。何も言いやしなかったが、山姥切の言葉を聞いてなんとも言えねえ顔をしてた」

「そうか」



鶴丸の呟きを最後に不意に沈黙が訪れ、各々が盃を煽る。ただの懸念だろうに妙に引っかかる。だからこそ燭台切や山姥切が気にしたのかもしれない。



「ま、気持ちは分からないでもないがな」



まるで陰口をたたいてるみたいで気には食わないが、節はある。中々大将を信用できず距離を置く小夜左文字に大将から手を差し伸べることが余りないこと。なんとなしに誘った散歩は断られたことしかないし世間話も早々に切り上げられてしまう。



「でも、まだ仕事に慣れてない所もあるかもしれないし。そういう性格なのかもしれないから」

「他にあっと驚くような理由があっても面白いがな」

「それはあんたの趣向だろ、鶴丸さんよ。ほら、そろそろ冷えてきた。切り上げようぜ」

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