新しい仲間が増えて



「起きて」



幼さの残る声がする。小夜だ。もう朝か、起きないと。
この本丸は多少私の希望通りに洋式化されている所もある、けれど日本家屋であることに変わりはない。少し寒さのあるこの部屋で布団から出るのが辛くて眉間に皺が寄る。



「はぁ……」



眠いけど、みんな私より早起きしてご飯を作ってくれている。いっそ放っておいてくれれば好きに寝て過ごすのに。ここに来るまで、朝餉を摂るという習慣がなかったものだからどうにも慣れない。



「すぐ着替えてそっち行くね」

「分かった」



たたた、と小走りで去っていく足音を聞きながら簡単な服に着替える。審神者としての正装など和服類もあるけれど、着方がわからないので実際に使うのはもっぱら洋服ばかり。最初はいいかな、なんて悩んでいたけれど加州や薬研、燭台切さんのような洋服の人もいたからすっかりこっちが定着してしまった。



「おはよー」

「おはよう。今よそうからね」



おはようとまばらに返ってくる中ほかほかと湯気をあげる朝食を目の前に置かれる。



「みんな調子どう?」

「ばっちりだよ! 爪も塗り直したんだよね」

「あ、ほんとだ。相変わらず器用だね」

「まあねー」

「まあ昨日出陣したし、今日はのんびりしよっか。あと鍛刀しようかなーって思ってるんだけど」

「え、もう!?」



加州が箸を止めてばっとこちらを振り返った。半ば助けを求めるようにみんなに視線を向ける。



「ある程度慣れてきたしって思ったんだけど……まだ先のがいいかな」

「別に、したいならいいと思う」

「写しの俺じゃ力不足だからな……」



山姥切の言葉にうっと詰まる。そういうつもりはないんだけれど。困ったな、なんて返そう。誰か何か言わないかな?そう思って他の人の言葉を待つがみんな考え込んだ風にしていて静寂に包まれたままだ。いつもなら何か言ってくれるのに、どうしたのだろう。



「ま、いいんじゃないのか? どうせ増えるなら早いうちから少しずつ増えた方が負担も少ないだろ」

「鶴丸君の言い分にも一理あるね」

「資材も貯まってきてるからな」

「じゃあ俺が手伝うから」

「ありがとう加州、助かるよ」



加州は小夜と鶴丸を呼んでくれたから、今回も目標はちびっ子と太刀辺りを狙っていきたいと思う。鍛刀は時間がかかるので早速二本分、資材をつぎ込んできた。出来上がりまでの時間は差がある。



「ねえ、主は今日なにして過ごすの」

「うーん、提出する書類があるから取り敢えずそれをやるよ。加州は?」

「当番の仕事」

「今日は馬当番だよね」

「そ。俺もう行くから、主も書類頑張ってね」

「うん、加州も頑張って」



今は休息を1日おきに、交代で内番をしてもらっている。が、畑や馬は特にほとんど毎日面倒を見てもらっている状況だ。もう少し人数が増えたらきっともう少し楽になるはずだから、やっぱり人員増やそう、それまで大変だとは思うけれどよろしく頼むよと去っていく背中に向けて思いながら自分も背を向けた。書類が落ち着いたら先に仕上がる子の紹介がてら休憩にしようかな、なんて色々考えながら細かな字で一杯のマニュアルを片手に書類作成を始めた。



「……げ」



マニュアルと交互に見比べる回数も減りスムーズに進み始めたせいか、視線を上げたらもう既に一本は仕上がっているはずの時間だ。特に急ぐ必要はないはずないのだけれど駆け込んでその小さな刀を手にした。



「ぼくは、今剣! よしつねこうのまもりがたななんですよ! どうだ、すごいでしょう!」

「よ、義経? おお……あ、えと、初めまして! よろしくね」

「あたらしいあるじさまですか?」

「うん、そう……です。今剣がよければだけど」

「ぼくつよいですから、たよりにしてくださいね!」

「よかった。今みんなにも紹介するから付いてきて」

「はい! もうちょっとでもうひとりのこもできるけど、さきにあいにいっていいんですか?」

「え? あ」

あと十数分を示す表示に迷って、少しここで待つことに決める。



「こっちはどんな子がくるかな」

「ぼくよりおっきいかたなだとおもいますよー」

「そうだねー」



はて何を話せばいいものか、内心焦りながらちらちら今剣と表示の時間を見比べているとひょい、と見知った顔が覗き込んできた。



「っ!? つ、鶴丸さん!」

「相変わらずいい驚き顔だな。おっ、こっちが新入りかい?」

「はい。今剣っていいます。よろしくおねがいしますね!」

「俺は鶴丸国永だ。新しい奴が来た気配がしたのに中々挨拶にこないからどうしたのかと思えば、二人でこいつを待ってたのか」

「うん、もう少しだからここで待とうかなって。この調子だと他のみんなも」

「主ー、新しい奴来たの?」

「……集まってきたね」



休憩に入るのにも丁度いいタイミングだったのだろう。結局全員がここへ集合して新人を迎えることになった。



「やあやあこれなるは鎌倉時代の打刀、鳴狐と申します。わたくしはお付のキツネでございます!」

「……よろしく」



刀剣たちはある程度、時代を共にしていない仲間の知識もあるらしい。しかし私は意味がわからない。声が二種類、というかキツネが喋った……。衝撃を受け過ぎて逆に普通によろしくなんて握手をしてしまい、中々事の真相を聞くに聞けない流れになってしまった。



「えっと、じゃあ折角だしみんなで本丸の案内とか色々お願いしていいかな」

「君はどうするんだい?」

「ちょっとまだやる事があるから自室に戻るよ」

「りょーかい」



またあとでねーと手を振りながら小夜の手を引く今剣を見て、あの子が来て良かったかなと少し安心した。さて、私はまずあの二人について調べるとしよう。気の利いた話のひとつもしてやれなかったし、少し不勉強過ぎたな、と密かに反省しつつ自室に戻った。

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