冒険の始まり



休み時間になると、オレは真っ先にゲームを始める。赤い髪をピカチュウの髪留めでポニーテールにし、耳にはポケモンボールの形のピアス。そしてポケモンをイメージしたネイルをして、鞄の中には数々のポケモンのゲーム。家にはポケモン関連の漫画もある。

そう、オレはこの学校じゃ、知らない人はいないというくらい名の知れたポケモンバカで通っている。今は最近漸くゲットしたエンティの育成に励んでいた。

今やっている、というより昔から持っているが、これはポケットモンスター金銀というゲームだ。の色々なポケモンのゲームが出ていて、勿論ポケモンと名のつくゲームは一通りやっている。だけど、金銀は特別なのだ。何てったってオレがポケモンに嵌る最大のきっかけとなったゲーム。当然思い入れもある。

ゲームに夢中になっていると、いつの間にか教室が静寂に包まれている事に気付く。


「やっべ! 次移動教室だったか?」


いや、違う。次は確か国語の授業で、移動はない筈だった。おかしい。周りはたしかにいつも通りクラスメイト達が談笑しているのに。何も聞こえないのだ。試しに周囲の人に話し掛けてみても何も反応がない。まるでオレが見えていないかのような。オレだけこの空間から切り取られたかのような。



「ピーカ!」



…ピーカ?どこかで聞いたような声に思わず心の中で繰り返してみる。すると、またピーカーチューウ!と聞こえてきた。恐る恐る声のする方へ振り向く。するとそこには―――――



「うわっ? ピカチュウ…?」



…ピカチュウがいた。ゲーム画面からそっくりそのまま飛び出してきたかのように、ピカチュウそのものがいた。え、なんだこれ。ピカチュウによく似た新種のネズミ?それとも、あまりにポケモンバカ過ぎて幻覚?幻覚症状?



「ピカカ!」



呆然とピカチュウを見て固まっていると、ピカチュウがこっちへ来いとでもいうようにオレを一瞥してそのまま駆け出す。



「ちょっ……待てよ!」



オレはピカチュウを追って走り出した。視界が消える。それでもオレは、真っ白な空間をとにかく走り続けていった。

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